『ブラック企業の公表』が求職者のためにならない理由
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先日、こんな記事を書きました。
自民党が参院選の公約とした「ブラック企業公表」についての話なのですが
上記の記事を書いたところ、同業の方や
ブラック企業に何らかの形で関わっている方など
たくさんの方から反響をいただきました。
上記の記事にも書いているのですが、ブラック企業という言葉は
「バズワード」であり、具体的な定義はハッキリと決まっていません。
ブラック企業という言葉の意味するものは
人によって想像する内容も異なるため、その認識を統一した上で
議論しなければ、スレ違いの議論になりやすいのも事実です。
日経新聞で報道された「公約」の大枠を見る限り
「離職率」などの基準をもとにブラック企業を判断するというのが
1つの考え方になっているようです。
しかし、離職率の高低でブラック企業を決めるという考えは
一見正しいように見えて、全く本質的ではありません。
「採用する力が弱く、長続きする優秀な人材がそもそも採れていない会社はどうなるのか?」
「採用する力は強いが、すぐに起業してしまう人材を採用している会社はどうなるのか?」
「辞めやすい層」を採用していれば当然離職率も高くなるし
「辞めにくい層」を採用していれば当然離職率は低くなります。
「退職する理由」によっても全然話が変わってきますし、
仮にその理由を政府が集計したとしても
それが本音の退職理由であるとは限りません。
統計を勉強した方であれば誰でもわかる話だと思いますが、
相関関係と因果関係というのは全くの別物であり、
これらをごっちゃにしてはいけません。
「離職率の高低と、ブラック企業かどうか」という2要素間には
相関関係はありますが、直接の因果関係があるわけではありません。
また、それこそ「辞めさせてもらえない」タイプのブラック企業も
問題があるはずですが、そういった部分での評価は
離職率とは違う面で考える必要があるでしょう。
◎ブラック企業の公表は求職者のためにならない
ここでようやく本題ですが、ブラック企業の公表をしても
求職者のためにはなりません。
もちろん、地雷を避けやすくなって助かる方はいらっしゃるかもしれませんが
それ以上に就職がしづらくなって困る方の方が多くなると思われます。
こう言うと
「たとえ就職しづらくなったとしても、無理してブラック企業に就職しなくて良いじゃないか」
とおっしゃる方がいらっしゃると思います。
しかし、その考え方は甘い。
ブラック企業を公表するようになると、
もちろんブラック企業は採用活動をしづらくなるでしょう。
しかし、問題はそこではなく、それ以外の企業にも波及します。
「すぐに辞めてしまう人材を雇って、離職率が上がったらブラック企業認定されてしまう…」
そういった「リスク意識」を持つのは、ブラック企業だけではありません。
真っ当に仕事をしている企業であったとしても、
「ブラック企業と混同されないように」と考えれば採用時には慎重にならざるを得ません。
そして企業が採用に対して慎重になれば、割を食うのは求職者です。
それこそ極端な話ですが、
「そんなに面倒くさいなら、日本国外で雇用しよう!」という話にもなりかねません。
そうなってくると外資系企業を日本に呼び込むなんて動きは、夢のまた夢でしょう。
◎求職者1人1人が「見る目を養う」のが一番
「適切な評価基準」が設定できるのであれば、ブラック企業の公表は歓迎です。
問題は
「適切な評価なんてできるの?」
「その評価方法間違っていたとして、
つぶれる会社や採用に慎重になる会社が出てきたとして
それによって困る求職者もいるよね?」
ということです。
『その企業の行為が適法か違法か』…で議論するならまだマシなのですが、
本質的な部分では因果関係の薄い「離職率」などを基準に線を引いて、
主観で後付けの議論をするようなことは避けたいものです。
まとめると
『適切な評価ができるなら、大歓迎!
でも適切な基準を設けて評価をするのは難しそうなので、
やはり求職者1人1人が自分で考えて、判断できるようになるのが一番』
…だと思っていますし、
就活SWOTとしても、そのための手助けをしていきたいな、と思っています。
※就活SWOTとしては、就活生に企業選びのための「目」を養ってもらうことで
政府主導のそんな取り組みがなくとも納得のいく就活ができるように
していきたいと考えています。
…そんな考えをお持ちの就活支援会社の方がいらっしゃいましたら、
是非何かご一緒できれば幸いです!
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