オルタナティブ・ブログ > 酒井一樹の【就職サイトに書けない話】 >

就活SWOT/株式会社エイリスト代表の酒井一樹による「ホンネの」就活論。

「新卒採用で受験料を取る」仕組みは定着するのか?ドワンゴの取り組みに波紋

»

ドワンゴが2015新卒採用において「受験料2525円」を設定するという話が話題になっていました。

賛否両論ありましたが、これまで新卒採用でこのような取り組みを行った企業はなく、新卒採用に携わる方の中ではインパクトのある話題だったのではないでしょうか。

この話題に対してオールアバウトが「ドワンゴを受けた学生がオールアバウトの面接まで来たら2500円キャッシュバック」という取り組みを発表し、その後に取り止めたことなどもあり、ネット上では一連の流れが話題になっていました。

オールアバウト、就活生の奨励金制度を中止 ドワンゴから批判受けて

ドワンゴは12月初め、2015年の新卒入社試験で2525円の受験料を取ると発表していた。今の学生はネットで多くの企業に受験エントリーするため、企業にも学生にも負担が大きい現状に一石を投じる狙いがあるという。受験料を取るのは首都圏の学生が対象で、集まった受験料は奨学金などに全額寄付するとしている。  これを受けてオールアバウトは、「株式会社ドワンゴ非公認企画」と題したウェブページを掲載。ドワンゴにエントリーした学生が自社に応募してきた場合、1次面接まで進めば2500円の奨励金を給付する制度を発表。理由として「受験料を払ってドワンゴ社を本気で志望する学生は、おそらく何かに熱中できる学生ではないか」と説明していた。

出典:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131213-00000008-wordleaf-bus_all

なお、ドワンゴ社が参考にしたのかどうかは不明ですが、ちょうど一年前、有名ブロガーの「ちきりん」氏のブログでは、「大学受験と同じように、就活にも受験料を導入することで様々な問題が解決する」という趣旨のオピニオン記事が掲載されています。

就活市場を一発で適正化できるミラクル解決法

そして今回のドワンゴの取り組みが発表された後には、下記のような記事を掲載しています。

入社試験有料化の次に来る危険なワナ

「受験料徴収」についての法的な解釈については、下記の記事で述べられています。

ドワンゴが入社試験で「受験料」徴収――報酬受領を禁じた「職安法」に違反しないの?

『募集とは……被用者となることを勧誘することであり、採用試験は募集に応じた者から雇用することとなる者を選考するために行うものであるため、募集とは別の行為である。このため、採用試験の手数料を徴収することは法第39条の報酬受領の禁止には該当しない』 つまり、職安法39条の規定は、『勧誘に応じた人に採用の見返りを要求してはいけない』ということで、他方で採用試験は勧誘行為ではないから対象外だ。したがって、受験料徴収は職業安定法には違反しない、というのが厚労省の解釈です

出典:http://www.bengo4.com/topics/1062/

当のドワンゴも受験料から利益を得ようとしているわけではなく、受験料は「寄付」に回すと宣言しています。

しかし裏を返せば「寄付に回さなければ印象が悪い」と感じられている証拠でもあります。適法か違法か以前の問題で、そのような状態ではこの動きを一般化させる事は難しそうです。

▼安易なエントリー者を減らす方法

ドワンゴの動きに対しては賛否両論が集まっております。

入社試験への受験料導入について

「意図は理解できる」:36.7%(男子45.1%、女子32.9%)

「受験料を取るのはおかしい」:43.3%(男子38.3%、女子45.6%)

「どちらともいえない」:20.0%(男子16.6%、女性21.5%)

参考:http://gakusei-susume.com/jukenryou-shukatsu/

男女で傾向の違いが出ているのは興味深いですが、全体としては若干「受験料を取るのはおかしい」という意見の方が優勢なようです。

「受験料を取る」以外に「安易なエントリー者」を減らす方法は無いものでしょうか。

【本気の学生だけを選考するための方法一例】

ここで最近の事例と思い出せるのが、ライフネット生命の事例です。

重い論文を必須としたことで、昨年話題になっていました。

参考:ライフネット生命の新卒採用に挑戦してみた。

その取組の結果について、ライフネット生命保険の岩瀬氏が下記記事で言及していました。

昨年はエントリーが1万人近くいたのですが、実際「重い課題」を提出してくれたのは50人くらいでした。かなり応募してくれる人は減ってしまったわけなんですが(笑)、でも提出してくれたということだけでライフネット生命に入りたいという真剣度はわかるし、文章を読めばどう情報を集め頭の整理をする人なのか、仕事に必要なスキルも把握できる。

出典:http://recruit.netseiho.com/talk/index3.html

本当に志望度の高い50名がいれば、その中から数名程度を採用することはそこまで難しくなさそうです。

「今年(15卒採用)はどうなっているのだろうか?」と思ってチェックしてみたところ、

まだ内容こそ公開されていないものの「重い課題」の4文字が書かれていました。

http://recruit.netseiho.com/

会長の出口氏のメッセージにも下記のような記載があり、今年も継続される予定であることがわかります。

当社の採用では「「重い課題」」を出しますので、それに対する皆さんの渾身のレポートを楽しみに待っています。

出典:http://recruit.netseiho.com/2015/founder/index.html

他に例えば、筆者が以前の勤務先で新卒採用担当を務めていた時は、選考を「9段階」用意していました。

通常新卒採用の選考はせいぜい3回程度の面接で決まるので、それと比較すれば3倍くらい候補者との接触回数が多いことになります。

普通の学生や、志望度の低い学生であれば「弊社の選考は9段階です」なんて言えば、その時点で「大変そう」だと感じるでしょう。

(その代わり、それでも参加してくれた学生には「選考を通じて大幅に成長できるように」社員研修レベルのプログラムを組んでいました。)

それに関連して、選考の中にインターンシップを組み込むというのも1つの手段です。

インターンシップ自体に企業側のパワーがかかるというデメリットはあるものの、インターン必須であることがわかっていれば、インターン参加に時間を取られることを嫌がる学生はその時点でエントリーしてこなくなるでしょう。

筆者の現職であるエイリストでも、新卒者は原則3ヶ月以上のインターンを実施した上で入社を決めるという事になっています。

(補足すると、インターン参加者だけで採用枠が埋まってしまうため外部サイトで一般公募することはあまりありません。)

これもある意味で「コミットの低い受験者を選考しない」ための一手法だと思います。

選考の段階で業務を体験でき、会社としての方針や社風も伝えられるため、ミスマッチは少なくなります。

◎エントリーや説明会参加のハードルを上げる

その他にも、「本気の学生だけを選考したい」と考える人事担当者による取り組み、その考えに応える就活支援会社の取り組みがあります。

エンジャパンの運営する[en]学生の就職情報では、通常のエントリーとは別に、ハードルの高い「アピールエントリー」という仕組みを導入しています。

エンジャパンによると、「アピールエントリーは、学生のみなさんの『志望度の高さ』を企業に伝え、 学生・企業のマッチングをサポートするサービスです。」 1人あたり5回までしかアピールエントリーが使えないとのことで、企業側からみても「その5社の中に入る」学生は、自社への志望度が高いと見なされるでしょう。 アピールエントリーを行なうことで、説明会の優先枠に案内してもらうことができたり 通常の説明会とは別のセミナーに案内してもらうことができるなど、活用すれば、通常のエントリーよりも有利に進める場合があるようです。

出典:通常枠より有利?エンジャパンが導入した「アピールエントリー」とはどんな仕組みなのか

先日、リクナビのOpenESについてご紹介しましたが、同業のエンジャパンが逆の取り組みをしているというのは興味深いかもしれません。

参考:ネット上では賛否両論?リクナビの新機能「OpenES」使用上の注意点

企業側も、採用支援会社も、それぞれの考え方で学生と企業とマッチングしようとしています。現時点でどれが正解かを決めることは難しいでしょう。

しかし1つ言えるとすれば、採用を行う企業によってどういった施策が適切なのかも変わってくるということです。

どのような企業にどのような採用方法がマッチしているのか、ドワンゴを始めとした各社の取り組みは要チェックです。

Comment(0)