「新卒採用で受験料を取る」仕組みは定着するのか?ドワンゴの取り組みに波紋
ドワンゴが2015新卒採用において「受験料2525円」を設定するという話が話題になっていました。
賛否両論ありましたが、これまで新卒採用でこのような取り組みを行った企業はなく、新卒採用に携わる方の中ではインパクトのある話題だったのではないでしょうか。
この話題に対してオールアバウトが「ドワンゴを受けた学生がオールアバウトの面接まで来たら2500円キャッシュバック」という取り組みを発表し、その後に取り止めたことなどもあり、ネット上では一連の流れが話題になっていました。
オールアバウト、就活生の奨励金制度を中止 ドワンゴから批判受けて
なお、ドワンゴ社が参考にしたのかどうかは不明ですが、ちょうど一年前、有名ブロガーの「ちきりん」氏のブログでは、「大学受験と同じように、就活にも受験料を導入することで様々な問題が解決する」という趣旨のオピニオン記事が掲載されています。
そして今回のドワンゴの取り組みが発表された後には、下記のような記事を掲載しています。
「受験料徴収」についての法的な解釈については、下記の記事で述べられています。
ドワンゴが入社試験で「受験料」徴収――報酬受領を禁じた「職安法」に違反しないの?
当のドワンゴも受験料から利益を得ようとしているわけではなく、受験料は「寄付」に回すと宣言しています。
しかし裏を返せば「寄付に回さなければ印象が悪い」と感じられている証拠でもあります。適法か違法か以前の問題で、そのような状態ではこの動きを一般化させる事は難しそうです。
▼安易なエントリー者を減らす方法
ドワンゴの動きに対しては賛否両論が集まっております。
入社試験への受験料導入について
「意図は理解できる」:36.7%(男子45.1%、女子32.9%)
「受験料を取るのはおかしい」:43.3%(男子38.3%、女子45.6%)
「どちらともいえない」:20.0%(男子16.6%、女性21.5%)
参考:http://gakusei-susume.com/jukenryou-shukatsu/
男女で傾向の違いが出ているのは興味深いですが、全体としては若干「受験料を取るのはおかしい」という意見の方が優勢なようです。
「受験料を取る」以外に「安易なエントリー者」を減らす方法は無いものでしょうか。
【本気の学生だけを選考するための方法一例】
ここで最近の事例と思い出せるのが、ライフネット生命の事例です。
重い論文を必須としたことで、昨年話題になっていました。
その取組の結果について、ライフネット生命保険の岩瀬氏が下記記事で言及していました。
本当に志望度の高い50名がいれば、その中から数名程度を採用することはそこまで難しくなさそうです。
「今年(15卒採用)はどうなっているのだろうか?」と思ってチェックしてみたところ、
まだ内容こそ公開されていないものの「重い課題」の4文字が書かれていました。
会長の出口氏のメッセージにも下記のような記載があり、今年も継続される予定であることがわかります。
他に例えば、筆者が以前の勤務先で新卒採用担当を務めていた時は、選考を「9段階」用意していました。
通常新卒採用の選考はせいぜい3回程度の面接で決まるので、それと比較すれば3倍くらい候補者との接触回数が多いことになります。
普通の学生や、志望度の低い学生であれば「弊社の選考は9段階です」なんて言えば、その時点で「大変そう」だと感じるでしょう。
(その代わり、それでも参加してくれた学生には「選考を通じて大幅に成長できるように」社員研修レベルのプログラムを組んでいました。)
それに関連して、選考の中にインターンシップを組み込むというのも1つの手段です。
インターンシップ自体に企業側のパワーがかかるというデメリットはあるものの、インターン必須であることがわかっていれば、インターン参加に時間を取られることを嫌がる学生はその時点でエントリーしてこなくなるでしょう。
筆者の現職であるエイリストでも、新卒者は原則3ヶ月以上のインターンを実施した上で入社を決めるという事になっています。
(補足すると、インターン参加者だけで採用枠が埋まってしまうため外部サイトで一般公募することはあまりありません。)
これもある意味で「コミットの低い受験者を選考しない」ための一手法だと思います。
選考の段階で業務を体験でき、会社としての方針や社風も伝えられるため、ミスマッチは少なくなります。
◎エントリーや説明会参加のハードルを上げる
その他にも、「本気の学生だけを選考したい」と考える人事担当者による取り組み、その考えに応える就活支援会社の取り組みがあります。
エンジャパンの運営する[en]学生の就職情報では、通常のエントリーとは別に、ハードルの高い「アピールエントリー」という仕組みを導入しています。
先日、リクナビのOpenESについてご紹介しましたが、同業のエンジャパンが逆の取り組みをしているというのは興味深いかもしれません。
参考:ネット上では賛否両論?リクナビの新機能「OpenES」使用上の注意点
企業側も、採用支援会社も、それぞれの考え方で学生と企業とマッチングしようとしています。現時点でどれが正解かを決めることは難しいでしょう。
しかし1つ言えるとすれば、採用を行う企業によってどういった施策が適切なのかも変わってくるということです。
どのような企業にどのような採用方法がマッチしているのか、ドワンゴを始めとした各社の取り組みは要チェックです。