「資格取得」は就活に役立つか?
「資格は就活に役立つのか?」と、よく就活生から質問をいただきます。
そこで本日は、『大学生でも受検できそうな資格』について就活に役立つかどうか、考えてみたいと思います。
ただし資格といっても多岐に渡りますので、「大学入学後、学部を変更せずに取得できるチャンスがある資格」に絞って就活に役立つ可能性があるかどうかを解説いたします。
なお、文中の勉強時間はあくまでも目安であり、その人の元々持っている知識や地頭、予備校を利用するかどうかなどによって ある程度変わってきますので、その点だけご承知の上で参考にしてください。
出典:『就活に役立つ資格』はあるのか?簿記・宅建・TOEICから証券・IT関連まで
▼全業界(経理担当)【簿記検定】
資格を持っている人が多く、それだけでは差別化にはならないのですが
「財務・経理担当であれば二級くらい持っておきたい」のが簿記の資格です。
なお簿記といっても「日商簿記検定、全商簿記検定、全経簿記検定」が
あるのですが、世間一般に普及しているのは日商簿記です。
簿記二級合格のための勉強時間は、目安として
商業簿記・工業簿記それぞれ100時間(計200時間程度)と言われています。
簿記一級は大企業の経理業務で求められるような高度な内容も含んだ内容となりますが、公認会計士などには遠く及ばない地位であるため、簿記一級単体ではなかなか評価されにくいポジションにあります。
(簿記一級を持っていると、税理士試験の受験資格となります)
新卒の時点で持っておく意味は、そこまでありません。
転職の際も、資格を持っているだけで評価される事はあまりないでしょう。
資格の有無よりも、実務経験の方が重視される事が多いです。
将来税理士などになりたい方は、第一のステップとして、将来自分で会社を作りたい方は、教養として知っておいても損はありません。
(ただし経営者になる場合は2級~3級程度を知識として持っていれば十分で、資格までは必要ありません。)
▼全業界?【TOEIC】
大学生なら一度はみな受検する(?)TOEIC。
勉強時間は、目指す点数次第。
企業によっては700点以上、など一定の得点を求めるケースもあります。
実際に企業が求める点数については、
財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会の「TOEIC大学就職課調査」「上場企業における英語活用実態調査」という調査結果に詳しくまとまっているので、検索してご覧ください。
「たとえ500点でも書くだけ書いた方が良い…」という意見もありますが、それが是か非かは、その企業のレベルにもよるでしょう。
その企業の受験者の学力水準が高い場合、「TOEIC500点」は逆に自分の評価を下げる原因にもなり得るかもしれませんので前述の調査結果と比較して、企業の求める数値より明らかに自分の点数が低い場合など敢えて書かない方が良いこともあるでしょう。
※ちなみに全大学生のTOEIC平均点は447点だそうです。
(リスニング:250点、リーディング:197点)
またTOEICを重視しているのは
実は、日本(と韓国)の企業だけだという話もあるそうで…
海外留学で必要になるのはTOEFLですし、海外で就職活動をする際、現地企業に応募をする場合には「TOEIC」という言葉が通じない可能性すらあります。
TOEICの点数が評価されるのは、日本にある企業に就職する時や
日本企業に所属しながら海外で働く場合に限られるといっても過言ではないでしょう。
TOEICで900点以上あるのにほとんど話せない人もいらっしゃいますし、
問題なく会話出来ているのに700点程度、という人もいます。
というわけで、TOEICを受ける意味のある方は、下記のような方に限られます。
◎最低でも600点以上を目指せる方
◎日本にある企業の中で、海外赴任や海外勤務の機会がある企業を志望している方
▼金融・保険業界など【ファイナンシャルプランナー】
大学生で受検する方もたまにいらっしゃいますが、「個人向け」の資産運用に関する資格。
FP(エフピー)とも呼ばれており、2級まで合格するには500時間程度の勉強が必要だと言われています。
名前のイメージは良いのですが資格保持者だけの独占業務があるわけではなく、
この資格があるだけで仕事にありつけるわけではありません。
金融機関や保険の営業マンが「箔付け」のために取得したり、行政書士や社労士、税理士の資格を取るついでに取得されるケースが多いようです。
いずれにしても、他に強みがある方がプラスアルファで取得する資格であり、「取得するだけで就活や転職に成功できるタイプの資格ではない」と言っても過言ではないでしょう。
▼コンサルティング業界?【中小企業診断士】
コンサルを目指す学生さんが憧れることもある、中小企業診断士。
今回紹介する資格の中ではもっともボリュームがあり2000時間程度の勉強が必要な資格なのですが
この資格に「憧れる」大学生も多いため参考までに解説いたします。
会社によっては資格手当が出ることもあるのですが、
就活や転職で役立つことは基本的にありません。
転職市場でよくある会話の1つですが、
「業界未経験ですが、中小企業診断士の資格があります。コンサルティングファームに転職したいです。」
…というパターンで採用に至るケースはあまりありません。
理由は色々とあるのですが、まず中小企業向けのコンサル業務というのは
助言だけでなく「営業」ができる人材でなければ仕事にならないのです。
(ただし、商工会議所や中小企業支援機関などにアドバイザーとして所属し、
経営アドバイスをする時に診断士の資格が必要になる事もあるようです)
一方で、大企業向けのコンサルティング業務は、
中小企業診断士の資格ではカバーできません。
また、更新制の資格なので合格後何もせずに放置しておくと
資格の効力が無くなりますので、就活生が取る資格としてはやはり不適当かもしれません。
取得難易度はそれなりに高いのにリターンが無いため、
頑張ってこの資格を習得するくらいなら他のことに時間を使うべきでしょう。
▼不動産業界【宅建】
不動産に関わる資格といえば、宅建(宅地建物取引主任者試験)です。
試験は年一回。合格率は10数%程度。
勉強時間は350時間程度と言われています。
持っていなくても就活で不利というわけではありませんが、
職種によっては、入社してからは必須になる資格です。
(この資格を持っていないと、仲介や販売における『重要事項説明』ができないのです…)
ただ実際のところ「大手」の不動産企業は入社時点での資格有無など気にしないでしょう。
(特に、財閥系の大手デベロッパーではあまり関係ありません)
販売・仲介部門に配属されなければ、宅建資格の有無は業務に影響しません。
しかし「中小の不動産販売・仲介会社」からすると、
宅建資格を持っているかどうかの差は大きいといって良いと思います。
ちなみに、実家が不動産屋だから親に取るように言われる方も多いようです。
独占業務のある資格なので、取っておいて損はない、手堅い資格です。
いずれ自分で不動産会社を作りたい場合にも、自分が宅建資格を持っていなければ
他に宅建資格を持つ社員を採用しなければいけません。
しかし、実は不動産業界において宅建以上に重要視されることのある資格もあるのです…。
何かと言うとそれは「車の免許」。
賃貸・売買ともに、仲介部門に行く場合は必須の資格でしょう。
▼金融業界【証券外務員】
銀行や証券会社に入社した方が取っているのが、この証券外務員の資格。
金融機関などで、金融商品取引業務を行う人が必要な資格であり、
金融、法律、財務などの知識を問う内容になっています。
(1種と2種があるが、両方取ることになるケースが多い)
勉強時間は、100時間程度。
こちらは取っていると就活に有利というよりは、
「内定したら取らされる資格」と言った方が良いかもしれませんね。
会社によっては「資格が取れなければ入社できない…」と言われた方もいるようです。
ただし難易度は低く、不合格になり内定取り消しになった
というような話は聞いたことがありません。
'''内定後に「研修を兼ねて受けさせられる」ような試験ですので
就活前に取っておく必要は特にない'''でしょう。
大体の場合、参考書なども内定先から支給されます。
▼ITエンジニア【ITパスポート、基本情報技術者試験など】
ITエンジニアの世界では
「大事なのはコードを書けるかどうか。資格なんて関係ない」
…という部分もあるのですが、
一方で、体系的に関連知識を習得しているかどうか測る上で
資格が用いられることもあります。
例えば「基本情報技術者試験(旧・第二種試験。以下 基本情報と書きます)」
は情報系の学生さんなら聞いたことあるかもしれません。
IPAが実施している試験として、レベル1~4の4段階が設定されているのですが
そのレベル2に相当するのが基本情報。
勉強時間は約500時間と言われています。
会社にもよるのですが、ITエンジニアなら
入社1~3年以内には取得できるレベルになっていないとマズイでしょう。
(実際に取得するかどうかは別として)
ベンチャーでは、資格の有無でとやかく言われることはありませんが
業務に関連する「事例」を知る目的で勉強しておくのも良いでしょう。
意外にも実務で役立ちそうな問題も出題されています。
ちなみにレベル1に設定されているのが「ITパスポート試験」です。
(昔「シスアド」という試験がありましたが、
これが廃止され代わりに作られたのが、ITパスポートです。)
こちらは、実務で使うにはちょっと心もとないレベルです。
しかし情報系の勉強をしたことが無い方であれば、まずITパスポートを取る
という選択肢もあり、実際に大学生受験者は多いようです。
ただし、基本情報くらいまで取っていないと
実務レベルでは使いものにならないため
ITパスポートはあくまでも最初のステップとして
利用するのが良いかと思われます。
例えば、レベル3の応用情報技術者試験では下記のような出題があります。
応用情報技術者試験(2012年度秋期)「ロードバランサを用いた負荷分散」の解説
http://sourceforge.jp/magazine/12/12/20/1414256
単なる知識問題というわけではなく、実務でも直面しそうな実践的な内容になっています。
なお、レベル2の基本情報技術者試験では
C言語,COBOL,Java,アセンブラ,表計算の5言語の中からどれか1つを選んで回答する問題がありますが
今から就活する方がCOBOLやアセンブラを業務で使うことはまずありません。
表計算はEXCELの使い方がわかっていれば解くことが出来るため
資格取得だけを考えるなら、表計算を選択するのが楽でしょう。
しかし、実際に業務で使うことを考えれば、
C言語やJavaを勉強しておくのも良いと思います。
C言語やJavaが出来るようになっていれば、
他の言語も(勉強すれば)すぐ出来るようになります。
ウェブ開発ではPHPやRuby、Javascriptなどの言語がよく使われるのですが
ソフトウェア開発では、Javaが一番ツブシが利くのではないでしょうか。
(※Javaとjavascriptは全く別の言語です。)
身近なところで言うと、AndroidアプリなどはJavaで書かれて動いています。
iOS(iPhone、iPadなどのOS)アプリは、Objective-Cという言語で書かれていますが、
この言語はiOSアプリを作る以外の場面ではあまり使われません。
ただしプログラミング言語の勉強というものは
独学では挫折する方も多いので、勉強の取っ掛かりをどう作るかが重要です。
「資格の有無は気にしない」というエンジニアも多いので、
資格の勉強に励むというよりは、自分が作りたいと思ったウェブアプリ、スマホアプリを作るなど
興味が持てるサービスの開発に励むほうがいいかもしれません。
▼全業界?【普通自動車免許】
全業界…というのはさすがに嘘ですが、
営業で外回りが必要な業界などでは普通自動車免許が必須となる事も多いです。
(ただし電車網の発達した首都圏であれば、電車移動での営業が基本となる業種も多いです)
また、言うまでもありませんが物流・運輸業でも必須ですね。
大学生の間はペーパードライバーでも構わないので、
取るだけ取っておいた方が良い「資格」でしょう。
▼参考までに…難関資格の勉強時間は?
なお今回列挙した資格はおおよそ500時間以内で合格可能な資格でしたが、
公認会計士や司法書士、弁理士では3000時間、税理士で2500時間、
司法試験の場合、法科大学院合格までに2500時間、その後大学院で1500時間の勉強が必要になります。
それに比べると、4~500時間の勉強くらいなんとかなるかな?という気もしてきますね。
ただし、どんな資格であっても目的が無い中で取得するのは無意味。
資格取得する前に、まず自分が将来どんな仕事をしていきたいのか、
その仕事をする時に、資格はどう有効活用できるのかをよく考えて、
「時間対効果」を考えて動くようにしましょう。