生命保険有料相談の「医療保険は不要」という決めつけは正しいのか?
巷でどれ程認知されているのか定かでありませんが、近頃は生命保険の「有料相談」というものが、一部の保険評論家やらFP(ファインシャル・プランナー)という肩書の方々が行っているようです。
保険ショップなどの乗合代理店による「生命保険無料相談」に対して「ただより高いものはない」「販売手数料優先疑惑」「手数料は開示すべきだ」など販売促進につながる「無料相談」の風当たりは以前より強くなっているようです。
そんな中「生命保険有料相談」は、必要な保障についてなるべくコストをかけない、もしくは通常の生命保険商品はなるべく使わない、将来は保険でない手数料が明確な資産運用で自己責任で備えましょう、てなことを推奨します。
今回は「有料相談」を行っている方々の気になる共通項を検証してみたいと思います。
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当然と言えば当然なのですが、「生命保険有料相談」の方々は生命保険を利用を回避する方向に話しを持っていきます。
「保険商品の販売での手数料をメインの収入にしなくても食っていける」のを理想としているからです。
これまで毎月保険料を3万円支払っていたひとが、「有料相談」を受けたことにより2万円にしたとしたら「一月1万円の節約で年間12万円のコストダウン」と感じれば「有料相談」の数万円の相談料は安いものと感じると思われます。
また、増え続ける保険ショップなどの宣伝文句で「無料相談」の文字が溢れかえっている中で、保険の「有料相談」は新鮮で人目を引き、実際に相談するとほとんどの生命保険商品は否定されて、最後に担当者から「私は医療保険に加入していません」などとトドメを差されます。
それはそれでいいかもしれません。
保険加入ありきでないアドバイスは重要であり、有用であると思います。
しかし、その中身はどうなのか・・・検証してみます。
すべての「有料相談」がこうなっている、というわけではないと思いますが、著名な方を含めて複数の方々が同じ傾向にあったので今回取り上げています。
それは「民間の保険会社の医療保険は不要」という論点です。
国の制度として、「高額医療制度」といものがあり、保険適用範囲ならば、医療費負担は高額になっても、概ね一月8万円程度が上限となるため過剰な医療保険は不要ということことのようです。
そんなことは皆さんご存知で、入院した場合の収入減や治療費以外の費用負担(食事代やら差額ベッド代、ご家族の交通費やその他の負担など)に備えるために加入を検討するものです。
一般的には、入院したら日額(1日入院したら)5千円~1万円程度の給付金されるものが多く、保険料の払込総額は200万円から300万円ほどになります。(単品の終身医療保険の場合)
すると「支払った保険料のもとを取るには、200日入院して10回手術を受ける必要がある」と誰でも計算できる算数を持ち出して、なぜか「100万円あれば入院には備えられます」と断言してしまい、「だから100万円貯金しましょう。そうすれば医療保険は不要です」と堂々と言い切ってしまったりします。
この「支払った保険料のもとを取るには・・・」という思考回路はどうなんでしょうか。
これは、保障とか保険を考える上では不適切だと思います。
もとを取るには・・・60歳までに死んでください
もとを取るには・・・65歳までに要介護2の状態になってください
もとを取るには・・・この車盗んでくれませんか
という具合に、極論ですが、理不尽且つ犯罪の世界に足を突っ込みかねないようなお話しになってしまいます。
居酒屋での反省会の話題として、保険かけ過ぎ不幸自慢として「保険でもとが取れないぜ、その分貯金しとけば300万円貯まった」と一般の方々が溢されるのは何の問題はありませんが、お金をとった保険相談で言い張るのはどうかと思います。
まさか、<保険料のもとをとるのは難しい>→<もとを取るには犯罪に近いことをするかもしれない>→<そんなやばいことはしたくないから不要>というわけではないと思いますが。
そして入院などの対策として「100~200万円貯金しましょう」とアドバイスしています。
そもそも100万円の根拠は何なの、と疑問があるのるですが、よしんば100万円でいいとして、いつまでに貯めればいいのか、貯まるまでに入院や手術があったらどうするのか、使ってしまってなくなったらどうするのか、などなど突っ込み所満載です。
「月5千円の保険料を払うなら、その分貯金して入院、手術に備えましょう」とか仰るので、30歳から簡単に計算してみると、60歳時点で<5000円×12カ月×30年=180万円>になります。
ここまでくれば安心なのですが、ここまでくる30年間のうちに病気やけががあった場合大きく目減りすることもあり得ますし、まだあまり貯まっていないタイミングで何かあれば準備不足になります。(はじめてから2年後に何か有った場合は<5000円×12カ月×2年=12万円>しか貯まっていないですよね)
それと、「医療保険不要論者」のロジックとして「預貯金であれば他の用途にも使えるので流動性の面でもすぐれている」などと威張って言い張ります。
「他の用途にも使える」ということは「他の用途で使ってもいいのね」ということですね。
「"医療保険料支払ったつもり積立"が、目標の100万円になりましたので、せっかくなのでこれを使って温泉旅行に行きましょう」という企画もありなんですよね。
極論ですが「流動性がいい」というのはそういうことです。
企画内容が「おうちのリフォーム」や「お孫さんの進学費用援助」「軽自動車に買い換える」でも同じことです。
人間は弱いです。
「有料保険相談」をされる方は、ストイックで強固な意志を持つ異常に強い人間なのかもしれませんが、普通はいつ使うか分からない入院や手術のためにコツコツと貯蓄することもストイックさや、それが貯まったときに使わない鉄の意思を普通の弱い人間は持ち合せておりません。
そもそも「医療保険」って何のために加入するのでしょうか?
入院や手術に備えるためではないでしょうか。
「もとを取る」だの「流動性が悪い」だのが優先されて、「備え」や実際の人間の弱さを後回しにした乱暴な議論というのは言い過ぎでしょうか。
もちろん医療保険ですべて、あるいは出来る限り備えればいい、ということではないです。
ほぼどの保険会社でも終身医療保険は解約返戻金はない掛け捨てタイプで、解約すると保障がなくなり戻ってくるお金はありません。
つまり、入院や手術などでしかお金が降りてこないので、流動性が預貯金に比べて悪いわけですが、だからこそ備えられるともいえる訳ですね。
もちろん、ガチガチに保険だけで備えてしまったら、それこそ流動性がなくて困ってしまうこともありますが、流動性がいいものだけだとストップが効かない可能性が出てきます。
ですので、すべて預貯金、すべて保険ということではなくバランスを取ることが肝要であります。
最終的な決定としては、以上のようなことを吟味した上で「入院、手術には預貯金だけで備える」というのであればいいのですが、月々数千円で備えられる終身医療保険の保障内容を、すべて預貯金で賄えるとするのは間違いです。
目標金額に貯まるまでどうするのか、有事がありほとんどその蓄えを使ってしまったらどうするのか・・・その部分をカバーするのが医療保険の機能です。
その部分を否定して、目先の保険料負担を軽減して、その分の一部から「生命保険相談料」をいただくのは大いに疑問であります。
あるお客様の事例ですが、終身の医療保険を検討した際に日額は1万円ぐらいは必要という認識でしたが、預貯金でもカバーすることも想定して日額5千円に設定されました。
すべて保険、すべて預貯金でカバーするのではなく、考えられる範囲でリスクを半分ずつにしたわけです。
「これが正解」というのはありませんが、預貯金だけで備えるリスクと保険だけで備えるコストなど鑑みて合理的な判断であると思います。
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「生命保険有料相談」はありだと思います。
ただ、問題は中身です。
無闇に保険料などのコストを削減して、本来カバーできるリスクを相談者におっ被せるのは如何なものかと思います。
WEB上やその他チラシや看板の宣伝文句として「医療保険は不要」と謳えば、それなりにインパクトがあり目を引くかもしれませんが、「宣伝に偽りなし」であれば問題ありではないでしょうか。
実際の相談に際に、きちんと医療保険でしか備えられないこと、預貯金で備えることのデメリットなどお話ししているのであればいいのですが、掲載されているブログや記事など見るとそうではないようです。
お客様のご希望や状況に合わせて、少なくとも数社の保険会社からそれぞれの分野(死亡、医療、積立など)から資料を取り出し、設計書を打ち、新契約取扱規定を読み込み、一枚の表やグラフにまとめてプレゼンすることは、一社専属やネット生保のセールストークにはない価値がありますので、生命保険を活用する選択の可能性がある場合、それに対価を支払うことが認められれば、そこで初めて「生命保険有料相談」が成立するかもしれません。
当然、大前提としては、必ずしも生命保険を活用しない選択をも提示した上のこととした上でですが、簡単なことではありません。
簡単に<リスクを相談者におっ被せて、目先のコストを下げて相談料をせしめる「生命保険有料相談」>であれば「百害あって一利」なしです。