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「生保」というと最近は「生活保護」の略称だったりしますが、こちらは「生命保険」です。保険会社(メーカー)、代理店(販社)だと言いづらいこと、言えないことを、分かりやすく書いていきたいと思います。新規加入や見直しの際にご参考にして頂ければ幸いです。また、取り上げて欲しいテーマがあればリクエストしてみて下さい。可能な限りお答えしていきます。

生命保険「有料相談」を行える資格と品格 その2

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「家計と資産セミナー第7回 保険貧乏にならないための3つの鉄則」
http://www.nikkei.com/money/features/32.aspx?g=DGXNASFK2501W_25032013000000

上記は、生命保険「有料相談」を果敢に推進している後田亨氏による、日本経済新聞社の「ニッポン金融力会議」プロジェクトの一環として、日経マネー誌などの協力を基に行われたセミナーの記事です。

現況、生命保険「有料相談」といえば後田氏が第一人者のようになっておりますが、その第一人者による日経主催のセミナーなのです。

簡潔にまとめると以下の通りです。

・現役時代だけ掛け捨ての保険に入るのが正解
(理由は「保険会社の従業員が入っているのは会社の団体保険」だからだそうです)

・生命保険の手数料は投資信託と同じように開示すべき

・外貨建て終身保険は販売手数料が高いのはあらかじめ確定しているので資産運用に向かない(手数料開示してないのに「高いのはあらかじめ確定している」となんでわかるのか?)

とまぁ、いつものように突っ込み所満載なのであります。

「現役時代だけ掛け捨ての保険に入るのが正解」というのはいいですが、その理由として保険会社の従業員が会社の団体保険に入っているから、というのは本気で言っているのでしょうか?

別に保険会社の従業員でなくても、団体保険がある会社なら加入している人は多いだろうし、そのことが「現役時代だけ掛か捨て」の理由になっていません。

本来ならば、扶養家族がいる現役世代であれば「収入保障タイプ」を選択肢として掲げるのが本当で、後田氏は「収入保障タイプ」の存在は知っていても、その具体的な内容や活用方法をご存知ないようにしか思えません。

現状で扶養家族がいるお父さんやシングルマザーに対して、一番合理的な保険が「収入保障タイプ」であるのは動かし難い事実でありますので、それに触れず「保険会社の従業員が・・」などと寝言を言っているのはかなり残念です。

また、手数料を開示していないという理由だけで、その内容は無視して「これはよくない」という決め付けについては、すでにこのブログで指摘している通りです。

そして今回のハイライトです。

最後に、記者の「保険金として支払いを受けなかった分の保険料が70歳で戻ってくる医療保険も人気だが」という質問に対して・・・

「(中略)人気商品は70歳までに入院給付金などの支払いを受けた場合、それを差し引いた金額が受け取れるもの。逆に言えば70歳までの医療保障は自腹で払うことになる(からお勧めできない)」
※これは東京海上日動あんしん生命の医療保険「メディカル・キットR」という商品のことです。

従来、医療保険の議論では「保険料のもとが取れるかどうか」などと同氏はあちこちで仰っておりましたが、ここに来て「・・・自腹で払うことになる」と言い放ってしまいました。

自分の治療費を自腹で払うのが嫌なのですね。

医療保険に関しては、<支払った保険料は支払った以上の戻りがあり、その上保障が充実しているもの>でないと「不当」と言っているかのようです。

この「メディカル・キットR」という商品は、<70歳時点でそれまで支払った保険料が、給付された金額を差し引いた分の全額が戻ってきて(給付がなければ支払った全額が戻る)、その後の保障は、それまでと同じ保険料で内容が変わらず一生涯続く>という全く新しいタイプで賛否両論ありますが、少なくとも「保険料のもとが取れる」といった要望には応えるものです。
※活用方法としては、70歳時点で保険料のほぼ全額が戻ってきたら解約して、「自家保険」として備える、ということもできます。

これまでの同氏の発言として「もとが取れないから医療保険は無駄で勝てないギャンブル」とか言っていたのを、もとが取れるのが出てくると「自腹で払うことになる」と難癖をつけているわけです。

これは品が無さ過ぎます。
医療費負担の「自腹」が嫌ならば、北欧の福祉先進国にでもどこにでも行って、一部医療費が自己負担である日本にいらっしゃらなくて結構です、ってことになってしまいます。

掛捨ての死亡保障について、会社の団体定期にしろ、大好きなライフネット生命にしろ5年か10年の更新型なので無駄が生じますし、会社の団体定期はそもそもやっていない中小企業が多数あり、あったとしても転職や退職で継続できないことが大いにあり得ますので、「収入保障タイプ」を知らずして、現役時代の掛捨て保険を語る資格なし、と断じます。

そして、医療保険については「もとがとれないだろうが」と難癖とつけてきて、もとが取れるようになると「自腹切るのかよ」というのは、極めて品格に欠ける、というのは言い過ぎでしょうか?

扶養家族がいる現役時代に備える現状の生命保険商品の主力である「収入保障タイプ」をスルーして、とにかく我田引水な難癖をつける品格における生命保険「有料相談」は、無駄なコスト且つミスリードになっていると思います。

 

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