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「生保」というと最近は「生活保護」の略称だったりしますが、こちらは「生命保険」です。保険会社(メーカー)、代理店(販社)だと言いづらいこと、言えないことを、分かりやすく書いていきたいと思います。新規加入や見直しの際にご参考にして頂ければ幸いです。また、取り上げて欲しいテーマがあればリクエストしてみて下さい。可能な限りお答えしていきます。

墓穴を掘られているライフネット生命

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久々の更新となります。
更新していなかった約3ヶ月の間に、過去に書いたライフネット生命ネタのアクセスが多かったようです。
そんなこともあり、今回もライフネット生命ネタです。

「生命保険の『罠』」などの著者で、保険の有料相談を行っている「保険相談室」の代表であります後田亨氏が、日経新聞電子版にて「ライフネット生命が風穴 代理店手数料開示の意義」という記事を掲載しております。
http://www.nikkei.com/money/household/hokenhonto.aspx?g=DGXNMSFK15032_15102012000000

有料登録しないと全部読めないようなので簡潔にまとめますと

1.ライフネット生命は業界で初めて代理店手数料を公開した
2.その内容は終身医療保険において保険料の7.5%となっている
3.ちなみに競合となるオリックス生命の終身医療保険の代理店手数料は約63%
4.ほぼ同条件で比べると保障内容についてはオリックス生命の方が上回り、保険           
                        料ついてもオリックス生命の方がやや割安※
5.しかし代理店手数料を公開したネットライフ生命が企業として一番素晴らしい

※4について詳細は本ブログの「ライフネット生命はどっちを向いているのか」をご覧下さい。
http://blogs.bizmakoto.jp/shigotonin/entry/4696.html


後田氏については、ライフネット生命の応援団ではないか、と一部業界で言われている方です。
これまで書かれている記事においてライフネット生命礼賛の記事が多いのは確かですが、今回はどうでしょうか。

結論としてこの記事は「・・・代理店手数料を公開したネットライフ生命が企業として一番素晴らしい」となっていますが、結局お客様に対してサービスが悪く、少々割高な料金(保険料)をとっており、さらに売ってくれた人に対しても、極めて少ない手数料しか出さないメーカーということになってしまいます。

少々検証してみます。

以前にも触れていますが、ライフネット生命において「生命保険の原価」を公表して業界に衝撃を与えたことになっています(実際には素人衆が驚いただけですが)。

この「生命保険の原価」論によると、保障に備える原価はどこの保険会社でも一定であり、お客様からいただく保険料からその原価を引いたものが保険会社の費用や利益になるとのこと。

この「生命保険の原価」論はかなり強引なところがありますが、とりあえずこれに則って考えてみます。

仮に「生命保険の原価」に当たる部分を10%とします。
これは各社共通で、メーカーとして考えれば製造原価に当たるかもしれません。

保険料はライフネット生命が少々割高になりますが、誤差の範囲なので同じ10,000円で考えます。
それでもって各社の取り分を計算してみます。

         (保険料)(原価10%)(手数料)(利益)
ライフネット生命:10,000-1,000-750=8,250
オリックス生命:10,000-1,000-6,300=2,700

こんな計算をするまでもないかもしれませんが、ライフネット生命が手数料分取り分(利益)が多くなっているのが分かります。

そりゃそうですよね、お客様には割高の費用を要求してサービスは劣り、されに販売業者には手終料は渋っているわけですから、取り分が多くなるのは当然です。

ご存知のようにライフネット生命の販売チャンネルはネットがほとんどを占めます。
代理店の扱いなど極一部でありますので、この「7.5%」さえほとんど支出しないのです。

翻ってオリックス生命においては、メインは代理店販売であり、ネットは伸びているとは考えられますがまだまだ過半数は越えていないはずです。

ここまで読んでいただいて、あなたはどちらを選びますか、っていう話です。

オリックス生命は、ライフネット生命より取り分が半分以下なのに保障内容がすぐれています。

そうです、代理店手数料を公開しようがしまいが関係ないのです。

負担が軽くて保障内容がいいものを選べばいいだけですよね。

 

思いっきり皮肉ですが、上記のような利益率が高いライフネット生命のビジネスモデルが回っているのならステークスホルダーとしての株の皆さんは大喜びで投資するのでしょうね。

「ネットだから安いだろう」「TVCMをやっているし、山手線の中に広告があるから大丈夫だろう」と思わせる見事なマーケティングで自社にとっての高付加価値を生んでいるわけですから。

 

後田氏の記事の話に戻ります。

前記したように、同氏は業界ではライフネット生命応援団と一部認知されています。
つまり、今回においてもライフネット生命の提灯記事であったのかもしれません。

しかしながら、今回は墓穴を掘っちゃってます。
後田氏は以前から「生命保険も金融商品であるのだから手数料を公開すべきだ」と言っておれらましたので、今回のライフネット生命のアクションについて賛美したかったのは分かりますが、幸か不幸かライフネット生命の闇の部分を露呈してしまう結果となりました。

今回は「ライフネット生命、墓穴を掘られてしまった」の巻。

 

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