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「生保」というと最近は「生活保護」の略称だったりしますが、こちらは「生命保険」です。保険会社(メーカー)、代理店(販社)だと言いづらいこと、言えないことを、分かりやすく書いていきたいと思います。新規加入や見直しの際にご参考にして頂ければ幸いです。また、取り上げて欲しいテーマがあればリクエストしてみて下さい。可能な限りお答えしていきます。

乗合保険代理店の舞台ウラ

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前回、保険会社から不特定多数に対して「あなたにピッタリのプラン」と発信するのは
不適切であるとお話しました。
それならば数十社の保険会社を扱う乗合代理店で保険加入の相談をすれば、「あなたにピッタリ」を提案してもらえると考えられるのでは・・・で終わりました。

一社専属よりはかなりマシな提案ができることは間違いありません。
以前このブログの「就職戦線異常あり?」で、ニッセイの担当者が個人保険の商品については損保、外資、カタカナ系に対して負けを認めていることに象徴されるように、多くの方が加入している大手国内生保の商品に競争力はありません。

また、その他損保、外資、カタカナ系の一社専属に関しても、すべての商品が他社に対してすべての面で勝っているわけではないので、単純な比較検討において一社専属より複数選択の方が有利になることがほとんどです。

ここまでは必要条件です。

中生代白亜紀のチラノサウルスの化石のような大手国内生保の既契約に対して、最新鋭のデジタルコンテンツをぶつけるので、余程頓珍漢なことをしなければ勝てます。

ただ、この最新鋭のデジタルコンテンツの中身を提案、販売する側が充分に理解しているかが問題です。
つまり、損保、外資、カタカナ系と文字通りデジタルコンテンツであるネット通販専門の
生保も含めて、どこのどれが誰に対して有効なのかきちんと整理されているかどうかが
問われます。

「生命保険比較ソフト」などと称して、各社の同種類の保険料を年齢、性別などで計算、比較できるソフトを使って「あなたにピッタリ」を簡便に出してしまうことが多々ありま
すが、飽くまで単純な保険料の比較であるだけです。
ここまででチラノサウルスには勝てるので、なかなかそれ以上の進化は難しいのです

これ以上は募集人(保険を販売する人)の個人の資質やスキルに依るところが大きくなり、かなり格差がありますので、数十社扱っているといっても担当者の力量にプランニングは大きく左右されます。

個人の力量に左右されることは、どこの業界でも多少はあることなので、事業体としては研修やOJTなど行い克服しようと努力していますので、取り立てて生保業界だけの問題点ではないでしょう。

それとは別に生命保険の乗合代理店特有の問題点があります。

限りなく「あなたにピッタリ」の根拠となる一社専属では謳えない「客観的に中立的な
立場での提案」が可能であることが、数十社乗合っている代理店の最大の強みでありますが、だからと言って「客観的に中立的な立場での提案」を保証しているわけではありません

上記したように個人の力量不足で「客観的に中立的な立場での提案」がなされないことは許せるわけではありませんが、どこでもあり得ることです。
しかし、恣意的に代理店経営者の強い意志のおいて「客観的に中立的な立場での提案」がなされないことが構造的にあり得るとしたらどうでしょう。

保険代理店も他の業界と同じように商品供給先(メーカー、ここでは保険会社)と代理店委託契約を結びます。
その中に当然数字による縛りがあるわけで、「年間件、○○円の売り上げ」という予算
が課せられます。
達成できなければ手数料の料率が下がるか、最悪代理店委託を切られます。

複数の保険会社と代理店契約を結んでいれば、それぞれの保険会社のノルマをクリアしなければ代理店契約を維持できません。
維持できなければ、その保険会社の商品を販売できなくなるだけでなく、「継続手数料」もなくなってしまいますので、大きな痛手となります。
(ほとんどの生命保険販売の手数料は保険料に対して初年度20~60%、次年度以降5年~契約継続年度の間3~10%となり、生保代理店安定経営の基盤となる)

またおいしい話としては、「年間件、○○円以上の売り上げ」を達成すると海外旅行、
コンベンションへのご招待や獲得した手数料の40%のバックリベートが発生したりします。
年間1千万円の手数料があれば400万円のリベートが発生するので大きな人参です。

事業所を経営する観点を単純に数字だけで見れば、仕入先(保険会社)からの契約条件に則って効率的に販売するのが王道であり、保険については消費者と販売側のリテラシーの格差が大きいので可能になってしまう側面があることは否めません。

年度末に「あと1件売れば400万円」と「あと1件売らなければ継続手数料がパー」というどちらかの状況が、お客様とは関係なく発生することがあるのです。
一社専属であれば必死に自社商品を売る努力をすればいいだけですが、複数扱いであれば「お客様にはA社がベストであるが会社存続のためにはB社がベスト」というジレンマが生じてしまう構造がこの業界には存在します。

これは飽くまで「生保乗合代理店の舞台ウラ」のお話しで表舞台に出ることはありませんが、数十社乗合っているから客観的で中立的な提案ができるとは限らず、その能力が備わっていても恣意的な提案が現実的にあり得ることを知って下さい。

基本的には生保乗合代理店はベストまたはベターな提案をしていると思っています。

しかし、時期やその他の理由により100%ではないのです。

 

 

「だったらどうすればいいんだ?」ですよね。
「生保のトリセツ」としてはそこをお話しなければならないのは重々承知です。
しかしどこにいけば客観的な提案を受けられるか、受けられる可能性があるところは
たくさんありますが、保証できるところはありません。
なぜなら皆保険を販売する立場にあるからです。
消費者として生保リテラシーを高めるしか方法はないのですが、どうしてもという
ことであれば個別にご相談下さい。
また、この問題を克服できるアイディアがあれば協力を惜しみません。
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