AERA「放射能がくる」特集の意義と価値を考える
朝日新聞社の週刊誌AERAの2011.3.18号、防護マスクのセンセーショナルな写真に「放射能がくる」と
いうキャプションの表紙や「東京に放射能がくる」という見出しへの批判が広がっています。
AERA(アエラ) [ライト版]<デジタル>|雑誌のFujisan.co.jp via kwout
バックナンバーのパーマネントリンク http://www.fujisan.co.jp/magazine/1281691496/b/661008
リンク先で、より紙面に近い目次が見れるので、そちらでご覧いただきたいのですが、「東京に放射能がくる」というのは、記事を読むと「最悪の場合」とか但し書きがあるとかいう情報もありますが、いずれにしろ今時点では煽りとして批判をうけるべきものでしょう。
そして、原子力発電所近くの地域への風評被害、更には日本全体への風評被害を煽る、社会的に
「害悪」であるとも思います。売れりゃいいという姿勢は、災害で便乗値上げと一緒で後々恨まれて経営が傾くと思い知るのではなかろうか、と。そして、風評被害を煽ったことによる損害賠償訴訟も起きると予想しています。マスコミの社会的影響力がどれだけの損害をもたらしえるのか、その大きな記念碑、もしくは墓碑銘となるかもしれません。
ただ、物事すべて多面性があり、このトータルでは害悪な朝日新聞のAERAの号もいい点はそれなりにあると考えます。それは、西日本、60Hz帯への人の移動を促進させ、東日本の電力不足という危機を緩和する働きがあることです。
集団に居ると、人は危険からなかなか逃げない。おそらく、特に日本人は:
人は社会的集団に居ると周りが落ち着いているからと、人が逃げないのに安心して、特に問題ないような錯覚に陥るといいます。以前も以下のことを主張しました。
防災心理学では、「多数派同調バイアス」とと「正常性バイアス」ということが語られます。パニックになりたくないから正常な状態だと思いたくなるし、 多数派の状況に同調しておきたくなるのです。韓国テグの地下鉄火災での悲劇がその典型例と語られますが、その後も高円寺での居酒屋火災など似た要因での悲 劇と考えられる(推定は筆者)悲劇は続いています。
「まだあわてる時間じゃない」
という心理は実は良くあることで、皆がそう思っていると同調しておくと安心という心理に陥ります。まずいとやっと気づくのはもう手遅れになったときということが多いのです。
恐らく、東京の人々がこのAERAを真に受けてパニックになって東京脱出を図るということはないでしょう。少なくともTwitterでの反応を見ると、8割以上が怒りで、残りも案外役立ちそうとかいう意見くらいしとかを散発的に見る程度です。
西日本=60Hz帯へ移動して、危機を緩和しよう:
原発顕在化直後の3/15に、江島氏が「首都圏のみなさんへ:西へ行こう」と主張されたのを読んだ時は、不安心理を煽ることに繋がりかねないと不安を感じました。何より、福島第一原子力発電所近辺の方の疎開より先に東京から人の移動が始まることへの罪悪感もありました。今、東京は受け入れるべき立場じゃないかと。実際首都圏が受け皿の一部になっています。
そんな罪悪感や危惧を超え、国民が放射性物質や放射線への正しい理解を深めつつある今、AERAが逃げろと煽っても東京脱出パニックにはならず適度な「早逃げ」促進になるかもしれません。そして、オフィス機能の西日本移転とかいうニュースに対して、「俺たちを見捨てやがって」とかいう感情的反発をせず、「電力消費を分けてくれてありがとう」という呪文を唱えて心を落ち着けて欲しいと思います。
是非、朝日新聞社は率先して人員や営業活動を西にシフトし、東日本での電力消費を最小限にしていただけるとより、見直されるのではないでしょうか?