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【速報】米国専門家36人によるトレンド予測 ~ 2010年,ソーシャルメディアはどうなるか?

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あけましておめでとうございます。

2010年も 「ソーシャル」「リアルタイム」「モバイル」を3つの軸として,「速い」「役立つ」「興味深い」情報を読者の皆様にお届けすることを心がけてまいりますので,弊社ループスともどもなにとぞよろしくお願いいたします。



2010年第一号のブログ記事として,大変興味深いレポートをご紹介したい。

12月21日にTrandsSpotting社から発表された 「2010 Social Media Influencers - Trend Predictions in 140 Characters」 という調査資料だ。

 
この予測に参加したのは米国ソーシャルメディア界における強力なインフルエンサー36名だ。
有名どころでは,ブログメディア最大手MashableのCEOで180万人超のTwitterフォロワーを持つ Pete Cashmore氏,Wikipedia創業者のJimmy Wales氏,名著「Secrets of Social Media Marketing」著者である Paul Gillin氏なども参加している。

@petecashmore PETE CASHMORE Founder, CEO Mashable
@armano DAVID ARMANO Senior Partner, Dachis Group Author, Logic and Emotion
@chrisbrogan CHRIS BROGAN President, New Marketing Labs
@peterkim PETER KIM Managing Director, N.America Dachis Group
SETH GODIN, Bestselling Author, Entrepreneur & Agent of change
@litmanlive MICHAEL LITMAN Social Media Strategist Consolidated PR
@tamar TAMAR WEINBERG, Community & Marketing Manager, Mashable
@johnbattelle JOHN BATTELLE Founder & Chairman Federated Media
@mariansalzman MARIAN SALZMAN President, N.America Euro PR, Trend Spotter & Author
@mzkagan MARTA KAGAN Managing Director, US Espresso- Brand Infiltration
@danzarrella DAN ZARRELLA Social & Viral Marketing Scientist HubSpot
@emarketer eMARKETER Digital Intelligence
@drewmclellan DREW McLELLAN Founder and Author The Marketing Minute
@idc CAROLINE DANGSON Digital Marketplace Research Analyst IDC
@jasonfalls JASON FALLS Social Media Strategist Social Media Explorer
@charleneli CHARLENE LI Founder Altimeter Group
@gauravonomics GAURAV MISHRA CEO 2020 Social Online
@marc_meyer MARC MEYER Principal Digital Marketing Response Group
@emarketer JEFFREY GARU Senior Analyst eMarketer 2010
@jimmy_wales  JIMMY WALES Founder Wikipedia
@alecjross ALEC ROSS Sr Advisor -Innovation State Department
@CraigNewmark CRAIG NEWMARK Founder of Craiglist
@scobleizer ROBERT SCOBLE Technical Evangelist Rackspace
@dmscott DAVID MEERMAN SCOTT Marketing Strategist & Author World Wide Rave
@roncallari RON CALLARI Social Media
@ravit_ustrategy RAVIT LICHTENBERG Founder & Chief Strategist Ustrategy.com
@equalman ERIK QUALMAN Author Socialnomics
@pgillin PAUL GILLIN Writer, Author & Social Media Consultant Principal
@adambroitman ADAM BROITMAN Partner & Ringleader Circ.us
@cbensen CONNIE BENSEN Director of Social Media & Community Strategy Alterian
@mikearauz MIKE ARAUZ Strategist Undercurrent
@nenshad Nenshad Badoliwalla Co-author Driven to Performance
@adamcohen ADAM COHEN Partner Rosetta
@danielwaisberg DANIEL WAISBERG Head of Web Analytics Easynet
@communitygirl ANGELA CONNOR Journalist & Community Strategist
@trendsspotting TALY WEISS CEO and Head of Research TrendsSpotting.com

調査資料を見ておわかりの通り,彼ら36名が2010年のソーシャルメディア・トレンドを140文字にパッケージして予測しているのがユニークな点だ。個々が非常に思慮深く,私の英語力では読解不十分な部分もあるが,これらのコメントの傾向をまとめるとともに,興味深いコメントをピックアップしてみたい。

 
■ 2010年のソーシャルメディア・トレンドを俯瞰する

まず全体の傾向を捉えるために,彼等のコメントを分類しグラフ化してみた。
(一人あたり複数回答している方が多く,合計は36票を大きく超える)

Graph1_3
 Graph2_3

全体を通じて,「企業がソーシャルメディアを本格的に活用しはじめる」ということ,それにより「マーケティングの考え方が180度かわる」ということ(Conversational Marketing, Content Marketing と明示しているコメントも複数あり),また「旧態然として従来型マーケティングが消費者から見放されること」への厳しい言及が目立った。

またソーシャルメディアをさらに成長させる要因として「位置情報,モバイル,AR」という流れは共通しており,2010年にプレイクするサービスの出現を示唆するものが多かった。具体名としては,FourSquareを挙げたコメントが複数あるほか,それら位置情報系ベンチャーはFacebook/Twitterの位置情報付加サービスとの競争になるとの見方もあった。

位置情報の普及に伴い「プライバシー問題が再浮上する」との見方も多かった。また企業の活用がすすむにつれて,ソーシャルメディア上の個人情報をめぐって,企業と消費者の間で争いが起こるとの示唆もあった。

なお,具体的サービス名では,Twitterに言及しているコメントがトップで9件だった。続いてFacebookは4件,位置情報のFourSquareが2件,Googleはわずか1件だった。Twitterが引き続きマインドシェアでは最も重要なポジションを維持している点,Googleのソーシャルメディアにおける影響力が低下している点などがあらわれた結果と見える。

 
では,個別コメントで目についたものを列挙していきたい。
コメントの分類・順番を考慮することで工夫することで,一連のストーリーになるように組み立ててみた。

 
■ ソーシャルとモバイルの融合,位置情報とARがブレイクする

  • モバイルはソーシャルメディアのライフラインとなるだろう。
  • ソーシャルネットワーキングはモバイル分野で最も成長し,モバイルインターネットを牽引するだろう。
  • ソーシャルゲームと仮想通貨はソーシャルメディアサイトにとって利益をあげる手段となり,主要プレイヤーはモバイルペイメントの好機をつかむだろう。
  • スマートフォンによるGPS普及により位置情報共有サービスがブレークするだろう。TwitterとFacebookの位置対応につぶされなかったらだが。
  • ARはオンラインとオフラインをクールに結びつけるだろう。
  • ARによって消費者はどこにいても自分の興味のあるものを見つけて購入することができるようになるだろう。
  • ARとモバイル・ソーシャルメディアにより,現実の世界が再び重要になるだろう。
  • ネットショッピングの時に安全性に疑問を持ったように,2010年は位置情報の安全性に注意が向くだろう。

 
■ 企業が本格的にソーシャルメディアを活用しはじめる

  • 企業はソーシャルメディアに真剣になるだろう。
  • 企業はついにソーシャルメディアが子供やB級スターによる一時的な流行でないことに気がつくだろう。
  • そして企業はマーケティング,セールス,カスタマーサービス,PRにおける顧客関係性強化のためにソーシャルメディアを活用しようとするだろう。
  • Twitterは誇大宣伝ではなくより着実に,コミュニケーションツールとして活用されていくだろう。
  • マーケティング・プログラムは一般消費者よりプランド支持者活性化によりフォーカスするだろう。
  • 企業独自のブランドコミュニティがFacebookファンページを凌ぎ,増加するだろう。
  • 企業のソーシャル・プラットフォーム投資は2010年後半に急増し,オンラインコミュニティソフトウェア市場は679百万ドル(63%成長)となるだろう。
  • 企業はよりセキュアなソーシャルメディア・アクティビティを探すだろう。そして彼等はクラウドにあるソフトウェアを購入することが安上がりだと悟るだろう。
  • ソーシャルメディアの効果測定がより一般的になるだろう。
  • ソーシャルメディア・モニタリングはより成熟化し,ウェブ分析に近づくだろう。
  • 生活者と企業がコンテンツ所有権を奪い合うだろう。
  • あなたの会社はソーシャルメディア・ポリシーを導入するだろう。   

 
■ 新しいマーケティング・スタイルへの移行と大企業の失敗

  • ソーシャルメディア・マーケティング(会話マーケティング)はブランドにとって成功する戦術として広まるだろう。
  • モバイル・ソーシャルネットワーキングで交わされる顧客の会話の獲得はマーケッターにとってチャレンジングな分野になるだろう。
  • 一方通行なマーケティング・チャネルは衰退し続けるだろう。
  • Fortune500/1000クラスの大企業がソーシャルメディアで数多くのミステイクを犯すだろう。
  • 消費者は付加価値のないすべてのブランドと縁を切るだろう。
  • リアルタイムレビューは多くのブランドを心底恐れさせ,新しい考え方が育つだろう。
  • 我々は透明性の時代に入ろうとしている。今までの10年は「獲得」だった。これからの10年は「保持」が重要だ。
  • 大小の差なく,すべてのブランドが絶対的な透明性を求められるだろう。
  • The Good: 経済は穏やかに回復し,消費者は無条件にコンテンツや専門知識をシェアし続けたブランドマーケッターに報いるだろう。
  • The Bad: ブロードキャストの感覚で古いマーケティングを続けている多くのマーケッターは潜在的な顧客から見放されるだろう。
  • The Ugly: ソーシャルメディア・マーケティング(コンテンツ・マーケティング)には時間がかかるが,多くのCFOはすぐに結果がでないためにそのような手法ををストップするだろう。

 
■ 新しい技術の台頭

  • Tracking & Alerting が新しい検索になるだろう。
  • FacebookとTwitterはオンサイトないしAPI経由で製品サーチ機能を持つだろう。
  • GoogleはソーシャルツールやAppsを提供し,ソーシャルメディア分野でFacebook/Twitterと競うだろう。
  • 2010年末にはマイクロブログのようなものではない新しいStatus UpdatesのUIが出現するなるだろう。

 
■ その他 注目トレンド

  • ここ2年にわたりソーシャルメディアに時間を費やし関係を築いてきた人々は報われ,参加が遅れた人は泣き言をいいだすだろう。
  • ブログはマイクロブログのホームペースとして認知され,さらに盛んになるだろう。
  • 女性がソーシャルメディアを支配し,ソーシャルメディアは新しい領域にうつるだろう。
  • ソーシャルメディアは我々の第3段階(親和の欲求)に達した。次の挑戦は第4段階(自我の欲求)だ。

 
■ ソーシャルメディアのこれから

  • 2009年はソーシャルメディアを学んだ年,2010年はソーシャルメディアをよりうまく活用する年だ。
  • ソーシャルメディアは私たちの生活に組み込まれていく。
  • テクノロジーそれ自体はバックグラウンドになり,人々はテクノロジーによって繋がった関係にフォーカスできるようになるだろう。
  • 5年前の考え方と全く異質な,新しいビジネスのあり方を示すリーダー(Thought Leader)が現れてくるだろう。

 
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最新の筆者著書です。 『Twitterマーケティング 消費者との絆が深まるつぶやきのルール』

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