オルタナティブ・ブログ > はたらきたい。 >

きっかけはソーシャル、ヒントはダイバーシティ、大切なのは思い。

「思い」をベースにした知の創造と共有

»

先日、一橋大学の一條和生教授の講演を聞きました。一條先生は、知識創造理論の権威で、ネスレを母体とするIMD(スイス経営開発国際研究所)の日本で唯一人の教授。エグゼクティブの為のMBA(EMBA)コースがあり,毎年90ヵ国から8,000人のエグゼクティブが集まってくるそうです。

IMDは、スイスの大自然のもと、1コース90名約40か国の学生が集まります。そのコンセプトも”Real World Real Learning”と、理論よりも実践に重きを置き、学生の平均年齢は30歳前後と通常のMBAよりも実践経験を積み、そのコースも相当スパルタでハード。多様性な人々でチームを組んで最高のパフォーマンスを上げる場を目指しているそうです。

そんな一條先生が話されていたのは、理論よりも「思い」とイノベーションについてです。

「組織の思い」「個人の思い」について話をされていました。


■IBMのValues Jam(バリューズ・ジャム)

講演でも紹介されていましたが、まずはこちらをご覧ください。IBMの100周年記念で作られた映像です。

100年間で100のイノベーション、ストーリーを当時の社員や関係者が登場して紹介されています。IBMによって生まれ普及した数多くの機器、コンピューターはもちろんのこと、ATM、マークシート方式の採点機器など、生活を一変させた技術も凄いですし、社員に対して、国家よりも早く社会的な取り組みをし、さらにそれをビジネス・戦力として活かしています。

1914年 障がい者雇用
1934年 大恐慌の只中に断代生命保険制度を導入
1935年 女性のための職業訓練施設制度
1942年 障がいをもつ社員向けのトレーニング・プログラム導入
1943 初の女性バイス・プレジデント誕生

また、IBMの「THINK(考えよ)」という文化は、会社が社員の可能性を信じていないと打ち出せないはずです。

Think

2003年、IBMは全世界の社員とイントラネットのシステムを使って、

「IBMのバリューは? IBMにバリューはあるのか? 次代のIBMのあるべき姿と必要なバリューは?」

というお題で、ディスカッションを行うValues Jamを実施しました。72時間にわたり、そのネット会議には2万2000名が参加し,108万ページビューが閲覧され,9337件ものコメントが寄せられたそうです。

(参考):経営革新を図るIBMの世界同時ネット会議「イノベーション・ジャム」の挑戦

これまでの成功体験を捨てて、新たなIBMに生まれ変わるために、信じたのが社員で、必要としたのがコアバリューだったのです。そして、活用したのが、イントラネットの社内コミュニティシステム。

IBMのような凄い社内システムを開発しなくとも、今なら、エンタープライズ・ソーシャルネットワークを使えば簡単にできることです。ただ、社員を信じているかどうか、コアバリューを本気で作るつもりがあるのか?どちらかというとそっちの方が重要です。


■Thought leadership

一條先生が紹介されていたIBMの事例と「思い」は別の言葉で表現すると、”Thought leadership”と呼ばれています。外資系ではすでに重要なキーワードになっているようですが、日本では最近注目されている社会起業家(ソーシャルアントレプレナー)がそれに当たると思いますし、大企業の中でもCSRではなく、本業で社会に根付く問題解決型の事業を展開されている企業も含まれます。

外資の大企業としては、P&G、ネスレ、GEなど”Thought leadership”の事例として紹介されています。”Thought leadership”を発揮する企業は、Global Big Issue(世界共通の大きな課題)に取り組んでいると説明されています。詳細は下記ブログで紹介されていたので、興味があればご覧ください。

(参考):Thought Leadership と呼べる企業。P&G [講演会・セミナー]

Appleのスティーブ・ジョブズも”Thought leadership”に入るだろうし、IBMもジョブズもコンセプトリーダーとして、製品・技術の革新ではなくビジネスコンセプトの革新でイノベーションを起こし、その中心に「人」がいたのだと思います。

一條先生は、これからのグローバルカンパニーに求められるのは「Learn Local Act Global-ローカルに学び、グローバルに行動せよ」だと言う。以前は、「Think Global, Act Local」でした。でもそれは個人のことを指し、企業はGlobal Big Issueに取り組むためには、”Learn Local Act Global”が必要とされるのかもしれません。

セミナーでは、もう一つ映像を紹介されていました。スターバックスが今年ロゴを変えた時の映像です。

スターバックスを創業したハワード・シュルツは、子供の頃住んでる地域だけで、差別的な扱いを受けたことがあるという。父親は労働者階級で、一生懸命働いているにも関わらずどこにも落ち着ける自分の場所がなかったそうです。そんな体験から、誰にでもリラックスできるサードプレスが生まれました。彼のその思いは、それだけではなく、そこで働くアルバイトにも、初めて健康保険を加入を導入し、アルバイトにストックオプションまで出しました。それは、経営危機に陥ってもやめなかったそうです。

今、企業に必要とされているのは技術やお金よりも、個人の思いやその集合個体としての組織の思いじゃないでしょうか?その思いを活かす仕組みとして、エンタープライズ・ソーシャルネットワークができることがあると思っています。

下記、一條先生が書かれたお薦め書籍です。ご縁があって来年早々、一條先生にセミナー講師をしてもらう調整中ですので、楽しみにしていて下さい


■最後に少し宣伝させて下さい

今月末にそんな企業のビジョンやブランドを従業員で確認・浸透していくためのセミナーを開催します。ご都合宜しければご参加下さい。

タイトル:ブランディングの視点から社内コミュニケーションを考える

「ブランディング」という視点から社内コミュニケーションを考えます。
社員の創造性と意識の高い企業づくりに関心がある経営者・人事ご担当者様は是非ご参加をご検討ください。

アップルと、はちみつ・自然食品で有名な山田養蜂場に共通することは何でしょうか?
それはビジョンを共有し、浸透させることに注力したことです。
世界の常識を変える製品を世の中に提供し続けるアップルと、ローヤルゼリーの大量生産を可能にし、「かけがえのない、ひとりの人の健康」を守るという思いではちみつ・自然食品を提供する山田養蜂場。
どちらの企業もビジョンを共有・浸透させるために様々な方法で社内のコミュニケーションを活性化し、企業の力を強くしています。
今回のセミナーでは「ブランディング」という視点から社内コミュニケーションを考えます。社内コミュニケーションの果たす役割と、その活性化のためのツールの活用方法やマネジメントについて、ブランド戦略のスペシャリストである澤田氏を講師にお招きし開催いたします。

日時:2011年11月29日(火)
時間:15:00~17:00(開場:14:30)
会場:株式会社ガイアックス セミナールーム
アクセス:JR山手線 五反田駅 徒歩6分
東京都品川区西五反田1-21-8 KSS五反田ビル 6F
地図はこちら
参加費:お一人様 5,000円(当日、領収書の発行を行ないます)

お申込みはこちらから

セッション1 「ブランディング視点から考える社内コミュニケーションのクリティカルポイント」
社員の心を熱くさせている企業のビジョンや社内コミュニケーションについて紹介し、ブランディングの視点から、ビジョンづくりに欠かせな
いエッセンスを解説します。そしてビジョンの共有/浸透をはかる社内コミュニケーションについて代表的な方法をお伝えいただきます。

講師紹介
アイディーテンジャパン株式会社 代表取締役 澤田且成氏 (さわだ・かつなり)
ブランディング・コンサルティング業界世界最大手のインターブランド出身。企業ブランディング・プロジェクトを20社以上担当。戦略立案からクリエイティブ制作までプロジェクト運営ができる希少な専門家として活躍。カナダ・中国での生活後、ブランド戦略をより多くの方に伝えたいとの想いからアイディーテンジャパンを設立。主催するブランディング勉強会は90%以上の満足度、メールマガジン「ブランディングニュース(8,000部)」で解説したブランド戦略事例は180以上。

【著書】
『選ばれ続ける社員の法則』(共著 出版文化社)
『結局、営業に頼ってしまう御社が伸びない本当の理由』(共著 明日香出版社)

会社概要
アイディーテンジャパン株式会社
ブランド戦略で3億円〜500億円企業のビジネスを加速させる仕組みを提案。
ブランディングに必要な、経営戦略・マーケティング戦略策定、ネーミング・デザイン戦略策定、インターネットツール企画、社員教育プログラム企画、セミナー運営を実施。
セッション2「社内ソーシャルネットワークを活用したコミュニケーション成功事例のご紹介」
国内外の企業様のビジョン浸透と社内コミュニケーションへの成功事例を、社内ソーシャルメディアの活用を軸にご紹介いたします。

講師紹介
株式会社ガイアックス コーポレートコミュニケーション推進部 エアリープロダクトマネージャー
山口博道(やまぐち・ひろのり)
2007年4月ガイアックス入社。企業向けSNSエアリーを立ち上げ、4年で国内トップシェアまで導く。
ソーシャルメディアのプロとして、社内SNSの活用コンサルティングに携わるとともに、Facebook関連書籍の執筆に参画。また、400名以上のメンバーを抱え、ロサンゼルスと東京に活動拠点を持つグローバルリーダー養成機関、NPO法人CVS Leadership Instituteの役員理事としても活躍。

【著書】
『facebook 知りたいことがズバッとわかる本』(共著 翔泳社)


 

Share

 

Comment(0)