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上手くいく社内SNSのポイントとエンタープライズソーシャルネットワーク

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■盛り上がる社内SNSと盛り上がらない社内SNS

5年ほど前にmixiやGREEが流行し、その仕組みを社内に導入へと多くの企業が社内SNSを導入しました。

 ナレッジマネジメントを実現するために。

 ボトムアップで新規事業を生み出すために。

 部署間の交流や社内コミュニケーションを活性化させるために。

社内SNSを導入した企業は、初めは興味本位で書き込む人も現われ利用されるものの、書き込みは減少していきます。それでも社内を変えたいと熱い想いで社内SNSを支持する事務局や有志が、知恵を絞って様々な企画を実施します。しかしながら結果、効果があまりでず継続できずにほとんどが失敗に終わってきました。

でもそれは、社内SNSだから失敗したわけではありません。私は2000年よりガイアックスというインターネットのコミュニティサイトを企画・構築・運営する会社で働いています。当社が携わったコミュニティサイトを含め、社内向けだけでなく、C向けのコミュニティサイトも数年でサービス終了することが多いです。

もちろん集客や売上に貢献しているコミュニティサイトもあります。ですが、そもそも社内でも、C向けでも、導入して簡単に盛り上がるわけでも、簡単に継続的に盛り上がり続けるものではないのです。

2007年、私たちはクラウド型の法人向けSNSとして、「内定者向けSNSエアリーフレッシャーズ」という新規事業を開始しました。当時の新卒採用は売り手市場ということもあり内定辞退が多発、内定をもらった後に不安になる学生も多く「内定ブルー」という言葉が流行った時期でした。そんな環境も手伝って、事業は順調に伸び現在は400社以上の新卒採用企業が導入するサービスとなっています。


Fresherjp


なぜエアリーフレッシャーズは多くの企業の支持を得られているのか?似たようなSNSや無料のOpenPNEを利用する企業は多く出てきましたが、ほとんどが失敗しています。それは社内SNSと同様、導入するだけではほとんどが上手くいかないのです。

ではどうしたら上手くいくのか?ポイントを簡単に紹介します。


1.ユーザーの使いやすさとつながりやすい仕組み

当たり前ですが、そもそも必要な機能やUI、携帯やスマートフォンへの対応などユーザー(この場合内定者)が、普段利用し慣れているmixiやソーシャルメディアにあるようなサービスとできるだけ近い必要があります。そうしないと、使い方を教えるところから始めないといけないですし、モバイル端末から見れないなど、使い辛ければ面倒になって使いません。そのためシステム的には常にバージョンアップする必要があります。


2.サイト運営者の熱意と運営者が使える機能

コミュニティサイトが失敗する原因の主因が運営にあります。そもそも運営をしなかったり、活用しないと盛り上がりません。例えばエアリーフレッシャーズの場合、内定者への連絡は全てSNS上で一元管理し、課題を与え、アンケートを回収し、eラーニングを実施したりと、人事担当者の業務を効率化するとともに、内定者との必要なコミュニケーションをSNS上で実施します。そうすることで、サイトにアクセスする理由も生まれ、必然的に内定者感の交流も発生します。一方、人事担当者のITスキルは高くない場合が多く、電話やメールでのサポートや、訪問して活用方法のアドバイス、セミナーなどで運営のノウハウを伝えることも大切です。


3.ユーザー自身のつながりたいというモチベーション

そして継続して盛り上がる一番重要な要素が、モチベーションです。ユーザー自身が使いたい、つながりたい、新たな価値や情報を得られるなど、利用するためのモチベーションが重要です。強制利用ばかりだと続かないし、それだけだと情報発信が事務的でソーシャルネットワークの効果が生まれません。内定者の場合、そもそも同じ会社で働く人と知り合いたい、なかなか会えないので、SNSでコミュニケーションを取りたいというモチベーションが高い傾向にあり、盛り上がりやすいのです。


もう一つ補足すると、SNSは人数が多くないと上手くいかないと思われがちですが、1~3のポイントを抑えていれば20名でも成果が出ます。こちらが、エアリーフレッシャーズの導入企業の利用者数分布ですが、平均でも40名ほどで、それだけいれば十分活性化するのです。


Photo


以上のように、環境要因もありますが、エアリーフレッシャーズは多くの企業やパートナーから支持を頂き、その展開を、新人育成やOJTに活かすSNSとしても提供しています。また、「育児休暇・復職者向けSNSエアリーダイバーシティ」や、店舗間向け・営業支援向け・海外展開向け・OBOG向けなど活用用途を特定したSNSとして、エアリーシリーズの展開をしています。


・エアリー

Airynet


■社内SNSからエンタープライズソーシャルネットワークへ

そんな社内SNSですが、ここ最近環境が変わってきました。ソーシャルメディアの普及、つまりツイッターやFacebookの利用者が急増し、仲の良い友達やゲーム友達といった閉じられたコミュニケーションから、オープンで、偶然で、予期せぬつながりや、よりリアルタイムなコミュニケーションが広がってきました。

そしてまた最近、mixiやGREEを社内で導入したいという声から、ツイッターやFacebookを社内で導入したいという声に代わり、改めて社内SNSと言うのか、社内ソーシャルメディアと言うのか、盛り上がりの兆しを感じています。

私たちも古い、失敗イメージのある社内SNSを、この新しい傾向にあわせて「エンタープライズソーシャルネットワーク(Enterprize Social Network)」と呼び始めています。私は、これから生き残るSNSがソーシャルメディア化するように、これからの社内SNSもエンタープライズソーシャルネットワーク化していく必要があると思います。

当社が提供する社内SNSエアリーも、今年より簡易でリアルタイムに共感が広がるように、古いタイプのSNSから、つぶやき・いいね・スマートフォン対応強化しています。

ではエンタープライズソーシャルネットワーク(以下、ESN)とは何か?
私たちも模索中ですが、そのヒントを紹介したいと思います。

・強い絆と弱い絆と一時的なつながり

昨年の情報ですが、GoogleのスタッフがGoogle+をリリースする前に興味深いプレゼンをしています。

"Bridging the gap between our online and offline social network"

(日本語訳はこちらを参照:the Public Returns - 続・広報の視点


ここで注目したいのが、4~6という数字と、150という数字。

この4~6とは、日常的に頻繁に連絡を取り合う親友や家族などの人数を指し、「強い絆」と呼んでいます。
そして150とは、関係を維持できる友達の人数を指し、「弱い絆」と呼んでいます。

ツイッター、Facebook以前のSNSは、この強い絆と弱い絆によって爆発的に普及しました。絆の強い、または関係を維持している友達のつながりを活かし、口コミ(バイラル)で広がっていきました。

そして、それに加えてツイッターやFacebookなどのソーシャルメディアは、これに一時的なつながりが加わりました。海外留学していた時に友達になった人、旅行中に知り合った人、高校や大学時代の友人、交流会で知り合った人など。フォローという薄いつながりや、実名SNSという友達の友達のつながりの見える化。そして強烈なPUSH型のレコメンド。つぶやきやチェックインというシンプルな一方通行の情報発信から始まる偶然のコミュニケーション。

社内SNSにおいても、強い絆と弱い絆に、一時的なつながりが加わることがESNとして化ける要素になるのではないかと思っています。

話は飛びますが、以前の日本型経営やOJTが機能していた日本企業は、社内に親兄弟・家族のような、または親友と呼べる強い絆があったのではないでしょうか?それが日本企業の強さの一つだったとすれば、今の希薄な職場コミュニティには、強い絆と弱い絆作りが求められているとも言えるかと思います。

ただし、今は時代が違います。ソーシャルメディアが普及しつつある今、社内に一時的なつながりも活かせる可能性があるのです。当然、重要機密情報やセキュリティの課題もあるため、ツイッターやFacebookを活かすこと自体は制限したり、ルールを決めておかないとむしろリスクにもなります。そこで活用できるのがESNです。


■人とネットワーク

強い絆と弱い絆、一時的なつながりについて、もう一つネットワークという観点から紹介をしたい思います。

先日友人・知人の集まりで勉強会をしたのですが、そちらで紹介されていたプレゼンです。


ここで紹介されている強い絆はGoogleの方の言う弱い絆、弱い絆は一時的なつながりと置き換えてみます。そして、それぞれのネットワークの特徴を以下のように紹介されています。

弱い絆の特徴には、構成員同士が「相対優位性」を保とうとすることがあります。
つまり、ちょっとした差がつくようなことに敏感になるということです。

例えば、最近会社の同僚がマラソンを始め、ダイエットにも効果が出てきたし、健康にも良いという。自分もやってみようかなと思い、マラソン仲間が会社にできて一緒に大会に出るようになる。当然お互いのタイムが気になり、大会に出るようになると、日々の練習がタイムに出る。今日5キロ走ったとか、朝走ってきたとか、そういうことをNike+やアプリを使って、ツイッターやFacebook連携して同僚にアピールする。それを見た同僚が自分も今日は走るぞと意識をする。そんなことは周りにないでしょうか?

弱い絆においては、「強化」のメカニズムが発生します。一部の人が価値観や行動規範に沿った行動をすると、そのアクションを他の人が意識をして見たり、いいね!する。そうして、自分もやろうとアクションする人が増え、価値観/行動規範がより深く浸透するというメカニズムです。

この流れは、ツイッターやFacebookのタイムラインで影響を受ける人と関係しているように思います。まさに、ソーシャルメディアによって、先ほどのNike+やチェックイン、つぶやきなどで、弱い絆の人たちの行動がこれまで以上に可視化され、影響を受けていることはないでしょうか?

次に、一時的なつながりには、次の3つの特徴があります。


1.一時的なつながり経由で入ってきた情報は、簡単に弱い絆の中で伝播したり、アクションに結びつきはしない

会社と離れたところで入ってくる情報は、あまり社内の人に話しても響かないなんてことがあります。また、セミナーや社外勉強会で共感したことを、チームで実践しようとしてもなかなか上手くいかないことも多いと思います。


2.弱い絆が環境に取り残されないような刺激を供給する。また弱い絆の中で相対優位に立つ手段となる

私の場合、ソーシャルアントレプレナーや社会的事業など、興味ジャンルで社外のつながりから持ち込む情報は、刺激を与えていることもあるだそうし、社内においては最も情報源やつながりを持っている人ということになっていると思います。組織にイノベーションを起こすのは、個人の趣味や興味に基づいていることってないでしょうか?


3.一時的なつながりの人同士をつなげることで、新たな弱い絆が生まれる。そして、その新たな弱い絆の中では、自分は中心的存在になることができる

古い組織や大企業が衰退していくのは、新しい取り組みや刺激を持ち込まず、他部署や社外の連携も弱いことで、新たな弱い絆を作れないからと説明できるかもしれません。


如何でしょうか?エンタープライズソーシャルネットワークについてはまだまだ説明が難しく、試行錯誤の段階です。

ただ最初の説明を言い換えると、強い絆と弱い絆を作れずに失敗する社内SNSと言えるかもしれませんし、社内SNSに一時的なつながりを加えることで、エンタープライズソーシャルネットワークへと移行し、新たな価値や創造が生まれると思っています。


一時的なつながりは、ソーシャルメディアによって、【時間的】・【空間的】・【関係的】に、より広い範囲でつながりを持つことができるようになりました。

現実世界では、時間や場所によって物理的に会えない、交流できない人や、友達の友達は誰なのか?またその先の友達は誰とつながっているのか?ということは、通常わかりません。

ESNを活用することで、一時的なつながりが個人や組織の可能性を広げる非常に大事なトリガーになる時代を迎えています。

そのためにも企業のビジョンの浸透や、お互いを認めるダイバーシティ、共感できる仲間の存在は、ESNの基礎でもあり、そこがしっかりしている会社は、ツイッターやFacebookといった社外のソーシャルメディアの活用も上手くいくと思います。

今後も本ブログでは、ソーシャルメディアが普及することによって、新しい時代の企業のかたちと、働き方についての情報提供をしていきます。

 

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