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WSJがソニー新CEOを支援?

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 ウォールストリートジャーナル(WSJ)トップ面左端という場所は、ちょっと小粋で、やや内輪な話を盛り込んだ記事が、毎日載っている。社説ではないが、WSJやニューヨーク証券筋の雰囲気をつかむには格好の読み物だ。

 今日の朝、その場所でソニーの新トップ“ハワード・ストリーンガー”氏を取り上げていた。ソニーが迎える初めての外国人CEO。しかも米国のメディア業界から乗り込むトップと言うことで、全体にストリンガー氏を支援する論調だ。

 記事では、ソニーが、クリエーティビティーや競争力を維持するため、部門間の協力関係が損なわれいたことを指摘し、ダウンロード・ミュージック事業を手始めに新CEOが社内改革に取り組むだろうと述べている。

 もし本当なら、ソニーの改革はヒューレッド・パッカードのカーリー・フィオリーナ元CEOの方針に似ている。1990年代末に低迷していたHPは、フィオリーナCEOの元、コンパックを買収して注目を集めたが、社内組織も“トップ直轄”“関連部門の統合”を強力にすすめて行った。

 特にプリンター部門と関連部門を統合して相乗効果を狙ったが、その成果は出ず、プリンター事業の足を引っ張っただけだった。この相乗戦略の失敗が「フィオリーナCEO、突然の更迭劇」となった。

 もちろん、ソニーの新CEOが同じ戦略を取ったとしても、HPとは状況が大きく違う。たとえば、フィオリーナCEOは、社外から招かれたが、ストリンガー氏は、社内昇格と言う点だ。社外からのCEOは、改革を遂行するために既存の幹部と対峙する事が当然となる。逆に社内昇格であれば、はるかに多くの選択肢がある。

 逆に心配なのは、ソニー社内で日米決戦が発生することだ。少なくとも、今日のWSJを読む限り、同紙は、ストリンガー氏に好意的だと感じる。ひょっとすると、ソニーを巡って日米メディアが対峙する事態も起こるかもしれない。

 いずれにせよ、ストリンガー氏が本格的な改革に乗り出すのは、この秋以降だろう。それまでは予断できないが、僕個人としては、同氏によるソニー改革が成功することを期待している。というのも、日米のハイテク企業社会に新しいページを開くことになるからだ。

 トヨタ自動車やパナソニックなど、多くの日本企業が米国で活躍しているが、やはり外様にすぎない。ソニーがストリンガー氏主導で改革に成功すれば、それは身内(←米国エグゼクティブ・コミュニティー)の業績となり、ソニーが米国メディア・コングロマリットとして、米国企業社会から認められるかもしれないからだ。

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