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傍目八目経営の現場メリット

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前々回、ブログにて「傍目八目経営」なるものに触れた。もう少し正確に言うと、「業務プロセスを傍目八目でマネジメントする経営」ということになる。先に経営者目線での説明はしたが、現場目線でのメリットを説明する。

さてその前に、経営者目線のポイントを振り返っておきたい。それは、社長から始まって、組織の上位者が下位の全業務プロセスへ日常的に関与していく。形容としては、ロシアの人形「マトリョーシカ」のように入れ子構造で、社長の全社にわたる業務プロセスの確認というミッションの中に、役員が同じように自分の業務プロセスを確認する、さらにそのミッションの中で部長が責任範囲の業務プロセスをという具合だ。会社の業務プロセスを、全社あげて、つまり社長から担当者まで、寄ってたかって、鵜の目鷹の目で、見守り、見守られるという状態を社内に常態化させる。その過程での問題発見や気づきは、その場ではなく職制を通じてフィードバックされた組織で本質的な問題も含め解決していく。このような、日本人の長所である「気づき」や「工夫・アイデア」を社長以下全員が出し合いフィードバックする、システム的な「傍目八目経営」はいかがだろうか?というものだった。

そこで、現場目線でのメリットを補足しておきたい。現場目線とは、いわずもがな、現場つまり実務社員と中間管理職におけるメリットである。

1. 業務プロセス情報の共有による、風通しの良いコミュニケーション実現。

自分の業務そのものに上司もそのまた上司も、場合によっては役員も関与してくるということとなれば、いつも一貫した説明ができなくてはいけない。実はこれが最も重要なコミュニケーションなのではないだろうか。つじつまの合わないことや、シカトしたりすることは不可能もしくは極めて困難になり、言い訳のできない、自己責任をもった健全な緊張感のある組織風土が作られる。

2.現場の作業・業務が経営課題と繋がっているという、実感による現場のモチベーション向上が期待できる。

自分や自分の所属する組織だけの問題ではないということを、普段の上司からの説明だけでなく、他部門からの期待や指摘を理解することにより、会社の中での位置づけや重要性が理解でき、業務の質的向上が促進される

3. 上位者が自分の業務内容を理解してくれているという安心感からくる、担当者の業務への専念。また、問題解決への集中が図られる。また、統括者のみならず、さらに上の上位者の業務プロセス関与による、業務プロセス全体の改善の高速化が図られる。

末端現場で問題が発生していても、原因と対策は当該の組織ではなく、他部門や上流という課題は案外多い。このような場合、問題発生現場の社員では、実務を止めない限り解決できない。実務を止めると、評価が下がる。したがって、実務を優先することになる。そうやって、対策は後手に回るものだ。組織や担当者の責任範囲を超えた問題は、統括者(上司)や上位組織の統括者が問題発見し、組織や担当者の枠を超えた解決作業をおこなうことにより、担当者任せより格段と高速なマネジメントが可能となる。ここが、傍目八目マネジメントの真髄となる。

4.単なる状況説明などの報告会議と資料作成作業の大幅削減

企業では会議資料の準備や予算計画の策定など様々な報告資料が作成されていて、実に膨大な作業を行っている。オフィスワーカーの仕事内容の大半は資料作成だったりする。この作業の中で、最も困難で時間のかかるものが、実情を理解していない上司やマネジメントを安心もしくは分かった気にさせるデータやプレゼン資料の準備である。それもそのはずである、資料やロジックだけで現場を理解することはもともと不可能だからである。そもそも、一緒に現場を確認していたり、ご自身で提起した問題には、縷々背景説明など要求したりしない。

5. 傍目八目マネジメントの教育的効果

    社長から始まって、組織の上位者が下位の全業務プロセスへ日常的に関与していくことによって、下位者の眼は当然関与してくる上位者の一挙手一投足に注がれる。その結果、「こんなやり方があったのか?」とか、「問題はここで発生していたけれども原因は、他部門だったんだ」とか、さまざまな気づきやヒントが得られる。また、自部門や自分自身で解決しなければならない課題は、なぜ発見できなかったということも含め、自助努力が前提にあるのは言うまでもない。

という現場メリットがあると考えるが、いかがであろうか。

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