共同体集団と機能体集団どちらいいのか?
前回、共同体集団と機能体集団の違いを説明した。また、日本企業は、両方の特徴をもつ中途半端な組織だということも説明した。さて、今回はこの話をもう少し掘り下げてみたい。
共同体集団と機能体集団どちらいいのか?
共同体集団と機能体集団のどちらがビジネスに適しているか?単純にこちらが優れていると言える問題ではなさそうである。社会的、風土的な背景で異なってくるように思う。
どちらだと考える前に、何よりも、自分たち日本企業の組織運営の本当の姿を見つめてみる必要がありそうである。
そこで、今までの日本企業の組織マネジメントの経緯を少しおさらいしてみる。日本の産業界ではここ約十年、古い「なあなあ」の企業風土を生産性の高い成果主義マネジメントに改革してきたとされる。日本の社会慣習や企業風土に根ざした組織が、機能集団への転換を求められてきたわけである。そして、人間関係を基軸としたマネジメントは遅れたものとして排除されてきた。そういえば、どこぞの経営者も「ぬくぬくから、わくわくへ」などとビジネスモデル展開と成果主義をワンセットにして社員を鼓舞していたのを思いだす。2000年頃の話である。
共同体運営から機能集団(組織)運営へこの十年で軸足を移し換えたつもりで、実は両足とも宙に浮いたままなのでは? つまり、軸足を失ってしまっているのではないだろうか。
こんな組織マネジメントの現状を、日本企業の経営者はもちろんのこと、少なくとも管理職はしっかり自覚・覚醒する必要がありそうだ。自分たちの姿を正確に把握し、軸足を認識し、そのうえで組織運営上の欠点、とりもなおさず自分たちの至らない所を自覚する必要があるだろう。
実際問題、一人の人間、一つの組織に共同体集団と機能体集団という二つの価値観が整理されずに持ち込まれれば、頭の中の生産性は下がるのが当然である。
現に、一度やめた社員旅行や組織単位イベントなどの社内行事を復活させる企業が相次いでいる。新入社員の研修でも能力重視は変わらないにしても、入社時研修は自己主張提案スタイルから協調スタイル型へ変わってきていると聞く。
多くの大企業が、これほど急激に組織運営のスタイルを変更しているということは、日本社会が基本的に持っている自分たちの真の姿を把握していないのではないかと思えてくる。このような自分たちの根なし草状態を、無視するわけにはいかない。
あるがままを見るとこういうことであり、これをしかと腹のなかに納めないと、組織マネジメントも組織コミュニケーションも組織の情報共有も上手くいくはずないのは当然だろう。
人間関係を重視してきた共同体運営と合理的に目的志向していく機能体運営、どちらも企業組織運営を効果的に進めていくためには必要なものだというのは、日本のみならず欧米企業でも共通している。日本企業はそこがグラグラしているのである。
今回は、両方式の運営を適切に組織に適応していくことが必要なのだ、ということを今日のまとめとしたい。ではそのバランスはどう考えていったらいいのだろう。次回はひとまず欧米企業の運営の仕方を考えてみたい。次回へ続く。