ネアンデルタール人の教訓
コミュニケーションのお話とはおよそ場違いの話のように見えるが、ネアンデルタール人がなぜ絶滅し、クロマニオン人(ホモ・サピエンス)が生き残ったのか、参考になると思う。
人類は100万年近い歴史を持つのだが、ネアンデルタール人は約30万年前から約3万年前まで生息しいていたそうである。我々とほとんど変わらない容積の脳を持ち、体型はずんぐりむっくりで身長160センチ程度、体重約90キロだという。寒冷気候に適応し、氷河期の欧州に生活の痕跡を残し、3万年前に絶滅している。それに並行するように、20万年前にホモ・サピエンスが登場している。我々の祖先だ。
さて、ネアンデルタール人が絶滅した理由なのだが、争いや天変地異などの要因ではないそうである。
どうやら、ホモ・サピエンスはコミュニケーション能力が発達することにより、狩猟技術が向上し生産力が高まり人類として繁栄していった。一方、ネアンデルタール人はフランスの7万年前のレグルドュー遺跡には死者に花を手向けて埋葬した跡も見つかっているほど、ホモ・サピエンスに近いにもかかわらず、低生産性から種を維持できなくなっていきやがて絶滅したということである。
命運を分けたのはコミュニケーション能力だという仮説がある。ニューヨークのマンハッタンにあるマウントサイナイ医科大学のジェフリー・レイトマン博士は、ネアンデルタール人とホモ・サピエンスでは発声器官つまり喉の構造が違っており、ネアンデルタール人の喉仏は高い位置にあって猿人と同様であるとしている。これによれば、言語によるコミュニケーションは著しく妨げられてしまうという。
高度な言語コミュニケーションができるホモ・サピエンスは、仲間同士の連絡や、言葉を親子で口承することが可能になり、知識の蓄積により厳しい生存競争に打ち勝ったのだという。
我々人類の祖先は、生存に適した集団を作り、生存目標を確認し、その実現に向けてルールをつくり、成果を分配しながら、結果的には、種の全体最適を追求しながら繁栄してきたといえる。
現代社会においても、まったくと言っていいほど同じ図式が当てはまるのではないだろうか?21世紀のわれわれが生活する、この高度な経済に支えられた社会でもコミュニケーションが企業の存亡を決めてしまうのだから。