「社畜」を作っている「年功序列」は日本的経営の本質ではないと思う
橘玲さんのブログ「日本人は世界でいちばん仕事が嫌い」を読んで思ったこと。
「世界価値観調査」によれば、日本人は、「余暇が減るんなら仕事なんかしたくない」と考えているひとの割合がきわめて高く、「仕事は収入を得るための手段であって、それ以外のなにものでもない」という意見に「そう思う」「どちらかといえばそう思う」とこたえたひとの割合も先進国では韓国や台湾に並んで高いそうです。
このブログでは、
「年功序列と終身雇用の日本的雇用制度が日本人を幸福にした」というのは、大いなる虚構だったようだ。(中略)この価値観調査の結果を素直に解釈すれば、ネオリベはひとびとを幸福にし、日本的雇用は労働者を不幸にする。
と結論づけられていますが、正確には「年功序列」の部分だけではないのかなと思います。
調査結果自体は事実ですから異論の挟む余地はなくて、なんとなく「仕事嫌いという人多いかな」とも思います。
そもそも「社畜」なんて言葉は、「世界でいちばん仕事が嫌い」な人が言うのでしょう。
最近、クラウドの利点として「自由なワークスタイルができますよ」とセミナーで話すことが増えてきましたが、その理由としては日本企業の仕事のやり方が、「欧米の優れた製品を真似て、それより安くいいものを作る」ビジネスモデルから脱却できていないから、仕事のやり方を変えましょうよ。という話をしています。
人は一生の間、全力で走り続けることはできないし、古いビジネスモデルが今でも通用しない(おじさんにとっては)残念な時代なので、年功序列を続けていると企業が硬直化するとは思うのですが、終身雇用っていうか、ずっと長く働き続けられる会社がいいと、私は思っています。
問題なのは、使用者と労働者にわかれてピラミッド型で仕事をする労働集約型のやり方で安くていい製品を作るというモデルが円高と人件費の上昇で崩壊しているにもかかわらず、その方法を今も取っている会社が多いということです。
年功序列の場合、使用者は「長く働いた人」であって、「昔の成功体験」をベースに仕事を進め、雇用者はそれに勤続年数が低いという理由で無条件に従うことを求められます。
そういう関係においては、使用者は自分の頭で考えることをしなくなってしまいますから、なおさら企業の改革は進みません。
そういう会社において、経営者が「最近の若いものは自分からアイディアを出してこない」とか言っているのは、ほとんど自己矛盾になってますね。そして使用者はこの路線で走っても儲かりそうにないなあと思っていながら「社畜だししゃあないか」で我慢する。
で、会社が儲かっていないにも関わらず、「業績悪化は私の責任ではないから知ったことか、私の給料増やせよ」と平気で春闘とかやっちゃうのではないでしょうか。
少なくとも、ネクタイをつけて働く今時の日本のビジネスマンが、会社が儲かっていないのにストライキしたらバラ色の未来があるなんて信じるほど思考能力がないわけがありません。
年功序列が機能するのは、「上司が経験したビジネスモデルが通用する」環境で「右肩上がりに企業が成長する」場合だけです。会社が儲かったら自分の給料が上がると信じられるからこそ、アイディアも出すしがむしゃらに働きます。
残念ながら両方の条件共に今の多くの日本企業ではあてはまりません。
日本的な経営の良さは、雇用が保証された安心な職場で、みんなで意見を出し合うボトムアップのカイゼンの仕組みで企業を変えてゆくことにあり、経営者は「日本的経営」を活かしたいのであれば、年功序列を崩して大胆に「右肩下がりでも若い人の給料が上がる余地」を作ってあげればいいんじゃないかと思うんです。
とはいえ、この場合、問題なのは管理者側の意識の改革になります。
「序列」が落ちればモチベーションは下がります。年配者なら序列は人生の積み重ねと思い込んでますから、人生全体を否定された気になることもあるでしょう。
だから、「序列」自体をなくしてしまうような制度や意識改革をしていかないといけないですね。
もちろん、経験を否定して、部下の能力を最大限に引き出すいい管理職になるという道もあると思います。
「日本的チームワーク」が悪いんじゃなくて、経験をベースに経営する「年功序列」が行き詰まっているだけではないでしょうか。