オルタナティブ・ブログ > バブル世代もクラウドへGO! >

悩める中小企業経営者に向けて、ITと経営をいっしょに食べてやさしく噛みくだく試み

何度行っても被災地は日本の縮図だと思う【ITで日本を元気に 911合宿 in 南三陸】

»

Dsc00108

日曜日と昨日、南三陸へ行ってきました。

仙台のトライポッドワークスの佐々木社長の呼びかけにより、東北や首都圏のIT関係者、マスコミが集まって「ITで日本を元気に」という東日本大震災復興に向けた支援活動を行っておりますが、今回は震災後半年を期に被災地に集まって合宿をしようという話になり、発起人の一人として私も参加してきました。

映像や写真も撮ってきているので、レポートでおいおい紹介しようと思いますが、記憶がフレッシュなうちにもっとも言いたいことを書こうと思います。

震災以来、被災地はこれで5度目くらいです。
何度行っても、あちこちで「情報がない」という話を聞きます。
IT産業に従事する身としては、情報を共有するのに最適なインターネットをもっと普及させたいと思うのですが、高齢者が多い環境ではそれが難しいこともよくわかります。

でも、代わりの手段があるかというと、それもない状況になっています。
そして、それは被災地だけの話ではなく日本全体の状況がそうなっているのではないかと今回の取材を通して感じました。

日本では、明治以降新聞を中心とするマスメディアが生まれましたが、大正時代にラジオ放送が始まってから戦後までは、強い言論統制の元、全てのマスコミが同じ情報を配信するという時代が続きました。戦後に統制が解放された後も「中立性」という謳い文句のもと、大手マスコミでは発信する情報の内容も解釈も大きな差はなく、今に至っています。
全方向から同じ情報が降り注ぐので、聞くほうは疑いようもありません。今生きている日本人のほとんどはそういう環境で育っています。

ところが、戦後日本はどんどん発展し豊かになり、欲しがる情報の質も当然に要求レベルが上がってきました。
しかし、新聞もテレビも「中立性」の元に主要ニュースは同じものを流していますから、マスの流す情報に頼れば当然に個別の情報は足りなくなります。
その上に、その隙間を埋めるはずのローカルな情報を伝達する手段が地域コミュニティの崩壊で次第に無くなってきています。
自治会など、近所のコミュニティが機能していれば、そのコミュニティを通して、ローカルな情報が流れてゆきます。
しかし、ライフスタイルの多様化、核家族化、個人主義などの台頭によって、コミュニティが機能していません。

ローカルで質の高い情報を手に入れる手段を、特に地方の人々はなくしてしまっているのです。
その上で今回の災害です。
そもそも上(行政機関とかマスコミとか)から流れてくる情報のみで暮らすことに慣れている人たちは、これだけの混乱に、流れてくる画一的な情報の量では、全く満足できないようになってしまいました。
さらに行政機関も被災して、整然とした情報発信はできない状態です。
都会ではすでに自治会のなくなった地域も多いですが、東北の仮設住宅でも自治会が組織出来ていない状況が出てきてしまっています。

都会において、マスからこぼれる情報を補っているのはもちろんインターネットです。
インターネットの出現以来、私たちは世の中にいろんな事実や見方があり、それは取捨選択するものだということを学びました。
ソーシャルネットワーキングは、その流れを加速させています。
高いITリテラシーを持つ人は、ネット上に張り巡らせたアンテナで膨大な情報を収集し、必要なものを取捨選択して判断できます。
そして、取捨選択を信じてその意見を参考にするフォロワーがいます。
ネット上では、バーチャルコミュニティーが形成され、その新しいネットワークを通して必要な情報を手に入れることができます。

しかし、東北の仮設住宅にはインターネット環境がほとんどありません。
仮に、あったとしてもリテラシーの問題で、そこから必要な情報を得られる人はごく僅かでしょう。
そもそも発信する人の多くが東京在住ですから、ローカルの情報は上がってさえいません。

情報共有については、本当にいろんな課題が横たわっていますが、元をたどれば原因はここではないかと思います。
生活水準が上がり、要求する情報のレベルが上がり、マスメディアの情報では不足が生じ、地域のコミュニティにおける情報伝達のヒエラルキーが破壊され、そして必要な情報がますます減ってきた。

仮設住宅には、インターネットに接続できる環境がほとんどないそうです。
電柱があっという間に立ち、電線がちゃんと張り巡らされ、電気が通っても、インターネットはやってきません。
ちょっと線を一本増やすだけですが、大人の事情はなんとなく想像がつきます。

それは、変化の少なかった今までの生活には不要だったかもしれないし、使える人も限られるでしょう。
けど、待っていても自分に必要な情報を発信してくれる人も、届けてくれる組織ももうありません。
それは震災のせいではなく、生活様式の変化と要求レベルの向上がもたらした結果で、遅かれ早かれ必要な情報を自分で取得して取捨選択する時代がやってくるのではないかと思うのです。

「ITで日本を元気に」の参加メンバーは、業界を代表するオピニオンリーダーやメディア関係者が勢ぞろいしている情報リテラシーの達人集団です。たぶん何かお役に立てると思います。
しかし、何か役に立とうと思っても、インターネット回線すらない状況ではどうにもなりません。

情報共有を取り巻く環境は変化しており、情報リテラシーを上げなければならないのは、おそらく国家的な課題になるでしょう。
東北を新しい地方再生のモデルケースにしようと行政が本当に思っているのなら、せめてインターネットを使える環境くらい整えて欲しいと切に願います。

Comment(0)