ブリヂストンで学んだ3つのこと
以前お伝えしたように、2022年末をもってタイヤのブランドで有名なブリヂストンを退職いたしました。せっかくなのでこちらの会社に身を置いていた1年と9か月で何を学んだのかを簡単にお示ししたいと思います。
1)「最高の品質で社会に貢献を」という使命はマジだった
創業者が社是として打ち出したこの言葉の背景にはかつての日本品質が今日のように世界的に高く評価される以前の課題がありました。自動車は命を載せる。タイヤは自動車唯一の接地面、という構造からしてタイヤの品質はすなわち命を守ることでもあります。その社是を大事にし、会社の使命に昇華させ、現在も守り抜いているのがブリヂストンでした。開発製造から販売に至るまで、一貫して高い品質を追い求める姿勢は本当に素晴らしく、日本発グローバル企業のとても大切なバリューであると思います。また、これを維持継続するために成功から学ぶだけではなく、失敗からしっかりルートコーズ分析(本質改善)を行ってPDCA管理をしていくさまも、まさにブリヂストンの文化といってよいのではないでしょうか。
2)本気でサステナビリティに取り組んでいる会社である
資源は有限です。また昨今はSDGsに関連して環境問題やそれを改善するためのリサイクル活動が盛んですね。タイヤは天然ゴム、合成ゴム(石油を原材料)、炭素や硫黄ほか様々な材料を混ぜて、複数のパーツを組み立て結合させて完成させていきます。案外複雑な代物なのです。で、これらの商品が使い終わって役目を終えてからは従来は「廃棄」されていたわけですが、よく燃える素材でもあることから火力発電の補助燃料になったりもしています。これをサーマルリサイクルと呼びます。一方で、燃やさずに分子レベルまで再生して100%元の原材料にすることができたなら、半永久的に新たな石油を採取することなくタイヤを作り続けることができる、なんていう議論も成り立ちそうです。現実の道のりは簡単ではありませんがこの原材料再生(マテリアルリサイクル)をいろんなところと組んで共同研究をしているのがブリヂストンです。未来の子供たちから預かっているこの地球を、この先へしっかりと紡いでいく活動を、私はこれからも応援していきたいと思います。
3)時には石橋をたたいて壊したり、渡らないこともある
大きな組織。高い品質。明確な目的とゴール、そして指示命令系統。
一般論ですが、わかりやすく確立されているガバナンスは太くて長いモノカルチャーを形成しがちです。ダイバーシティの取り組みももちろん盛んですし、自由な議論を奨励している文化は昨今珍しくありません。IBMが実践してきたようにイノベーションには多様性が欠かせないという視点でみると、この強力なイナーシアを背負った企業体は様々なチャレンジに直面しています。それらに一つ一つ向き合って解決をしていこうという姿勢は本当に素晴らしいと思いました。実際に解決、改善をしていることが多々あります。一方で一般論ではありますが、組織が大きくなっていることによって一つのことを決めるのに膨大な時間と手間をかけてしまう癖がついてしまうようです。意思決定者がいくらその決定を早くしたとしても、そこに至るまでの準備が論理、感情、手間、忖度、手戻り、リソースなど様々なことが絡まりあってのことが多いのかもしれません。いったんどの川を渡るかを決め、築いたその橋をたたく回数や加減についてはますますの変化が必要とされているような気もいたします。しかし、そう遠からずこうしたこともどんどん良くなっていくものと思っています。スピード、旋回性は小型ボート並みに、影響力は大型タンカー並みにしていく。この二律背反を凌駕していくことがブリヂストンの大きな経営の強みだと思いますし、なかなかできることではないと首肯するばかりです。
###
今回は大きく3つに絞って学びを共有させていただきました。
このほかにも気づきは多々ありますが、ブランドのこととか働き方とか集合知能の話とかややミクロな話になりそうなので、別の機会に書いてみたいと思います。
今年もよろしくお願いいたします。