半沢直樹は新しい日常における時代劇である
日曜日の夜9時からの「半沢直樹」新シリーズ、ご覧になっている方はどのくらいいるのでしょうか。7年前の第1弾の視聴率は平均、最高視聴率共に歴代日曜劇場の上位にランクインするほどの人気を博しましたので、興味津々。一方で制作側のプレッシャーもそれなりにあるのだろうと推察します。
さて早速さすがの話題作。面白いか面白くないか以上に時代考証的な観点で様々な突っ込みを視聴者がSNS上で入れているようです。
その多くは、
- シーン毎に密で、なんとなくITベンチャー企業のシーンでは密回避されていていること(心の声:スパイラルのオフィス広すぎ!電脳雑技、まるで帝国軍(スターウォーズ)!)
- 焼肉屋で顧客のM&A提案資料を基に会話するコンプラ事案(心の声:隣の人、絶対聞いてるから!あとでTwitterに書かれちゃうからー!)
- 行きつけの飲み屋で株主の女将さんに極めてグレーな立ち位置で情報を得ている可能性がある(心の声:インサイダー真っ黒だって!)
- そこかしこにちりばめられるパワーハラスメント的事案(心の声:4月放送予定だったからパワハラ防止法施行前ってことかー)
- 多様性が少ない職場環境(心の声:半々とは言わないが6:4くらいでどうですかね。男女比。外国人が一人もいないし。)
- 夫々の伴侶の有閑&内助の功的な立ち位置(心の声:まだ存在しているといううわさは聞くけど。。。ほうほうこんな感じか)
解釈は人それぞれですけど。私はきっと多くの人がそう感じたようにこのドラマは、そう、「時代劇」としてみることにしました。刀を携帯電話に持ち替え、勧善懲悪、毎回少しずつスカッとすることをやりのけて、そしてまた起こる災難の予感。まさに我々が長年慣れ親しんできた時代劇そのものではありませんか。そうやって視点を変えてみるとなるほどこのドラマはなかなか面白い。新株発行による発行済み株式の増加により比率を変えていくという防衛策の説明などは「ポイズンピル」という専門用語を使わなくても視聴者に伝わっただろうし、難しいことはきちんとテレビらしくデフォルメしてドラマそのものを楽しむことができるようにしたのはさすが、と思いました。
翻って、IT企業に身を置いていたころ、1年半費やす騒動となった1兆円の大型敵対的買収など100件以上のM&Aに関連したコミュニケーションに携わったことをにわかに思い出しました。真夜中に国際電話でたたき起こされたり、会食中に在外の上司から「今から記者会見だ!」と無茶ぶりをされたり、大変なこともたくさんありましたがすべて今の私の血肉となっているわけですから、すごく貴重な経験をさせていただきました。そんなことを反芻しながら「半沢直樹」作品を楽しませていただいています。
それではまた。