【広報かるた】・【う】受け答え、もうちと練習してからこい。
【う】受け答え、もうちと練習してからこい。
記者会見やインタビューなどで出くわすのが、「言動明瞭、意味不明瞭」なスポークスパーソンの説明。本番中に私たちができることは、「固唾を飲んで、祈る」ことだ---
記者会見や取材の現場でこうした場面に遭遇したことのある広報担当者はきっと大勢いるだろう。なに?ない?それはとても素晴らしい。それはきっと、貴方の仕事ぶりが素晴らしいか、スポークスパーソンが至極優秀か、まだご経験が浅いから(失礼!)だろう。主客は変わるが、あの池上彰氏とて、「言動明瞭、意味不明瞭」なことに陥ることだってある。猿も木から落ちるのだ。(これもまた失礼な喩えだがご容赦を。私は同氏のファンである。念のため。)
「AについてはBという技術が使われているそうですが、これは一体何の役に立つのでしょうか。」などと記者から質問を受けたとしよう。「ドリルの話しではなく、ドリルの穴の話をしてください。」というやつだ。
すると、
「Bというテクノロジーは究極的にグローバル社会にパラダイムシフトを起こすイノベーションそのものです。このテクノロジーのコンセプトはやがてデファクトスタンダードとなって人類のフューチャーをエスタブリッシュする重要なターニングポイントを築くでしょう。」
などと答えるわけだ。
何を言っているのかさっぱり分からない。
迫力がどんなにあっても、意味がよくわからないことが世の中には、ある。
なぜだろう。
ズバリ言おう。
事前の準備が足りていないからだ。
発表する、あるいは、メッセージをする場合は、その内容についてしっかり予習をし、どのようなアウトプットを想定するのかを練りに練っておかなければならない。もちろん、成果としての記事や放送が100%思いの通りにならなかったとしても、だ。
どんなにすぐれたスポークスパーソンであっても、次のようなジレンマに陥る場合があることを知っておこう。
・話題を振られたら何かをしゃべらなければならない。
・その振られた内容について、充分な知識や経験や洞察を持ち合わせていない。
・しかし、何かをしゃべり続けなければならない。
つまり、その事柄に関して、脳内の引き出しが空っぽであるにもかかわらず、その引き出しには「重要なものが入っている」と思わせようとするがあまり、言葉は明瞭だが、意味が不明瞭になるのである。「そのことはわかりません。他の人に聞いてください」とはなかなか言えないからだ。
しかし、本当にやらなければならないことは、開けてみた引き出しが空っぽだった時にあわてず騒がず、「調べます。」「確認します。」「不勉強で今日は回答を持ち合わせていないので追って回答を申し上げます。」など、勇気を振り絞って言うことである。
しかし、こんなことはなるべく言いたくない。
だから、事前の準備を徹底するのである。
記者会見や取材に当たってスポークスパーソンとなる人物は事前にトレーニングを受け、メッセージの構築をし、質疑の準備をきちんとしておくべきである。これは鉄則だ。
想定問答についていえば、余力に応じて、60分の記者会見のために1万通りの質問を考えて答えを作って準備してもいい。記者発表が3年後でも良ければ。
注意しなくてはいけない。「およそ出ようのない質問」はフィルターをかけて排除するべきだ。万が一当日その「およそ出ようのない質問」をされた場合は、素直に丁寧に対応した上で、後々よくその記者と話し合っておくといい。
会見では時間が限られている。記者も、効率よく必要な質問をして記事を書きあげたい。テレビなら、使えるコメントをさっさと撮ってオンエアの準備をしたい。
だとしたら、想定質問はどのくらい準備すべきなのだろうか。
以下のフレームワークを活用すると、5分で基本的な質問項目はリストアップできる。
1)会社、製品のこと
2)顧客及び市場のこと
3)チャネルのこと
4)競合のこと
5)その業界で昨今話題になっているトピックに関連した対応について
もちろん、取材トピックやその目的に沿って応用していく必要はある。欲を言えば、これらの項目が一通り「ストーリー戦略」として矛盾なく描けていると、より受け手が報道をしやすくなるはずだ。
Good Luck!