素直なだけでは必ずしも伸びない。だから必要なのは素直さと頑固さ
「素直になれ」
「素直な人が伸びる」
よくこう言われますよね。
世の中でもシカゴの『素直になれなくて』のように、「素直になれないんだ」とか「素直になりたい」といういう歌がとても多いですよね。
素直になれなくて、多くの大人が困っているようです。
でも「素直」とはそもそも何でしょう。
ちなみに辞書にはこう書いています。
「飾り気がなくありのままである様子」
「従順で、人の言動を逆らわずに受け入れるさま」
よく「非を素直に認める」「忠告を素直に聞く」「行為を素直に受ける」と言いますよね。
素直さとはどうも「受け入れる」という要素があるようです。
でもちょっと考えてみて下さい。
なんでも「受け入れる」人って、どうでしょうか?
「Aしたらいいと思いますよ」
「そうですね。Aします」
「それダメですよ」
「そうですね。やめるようにします」
なんだか物足りないような気がしませんか。
単に素直なだけだと、他人の意見を右から左に受け入れ続ける「自分がない人」になってしまいます。
この状況を、精神科医の土居健郎はこのように表現しています。
「『自分がない』とは、『私は自分というものを持っていない』、『彼は自分というものを持っていない』など、自身の内面を反省的にとらえている自己意識のこと」
よく会議で「あなたは自分の意見がない」「彼は何をやりたいのか分からない」と言われる人も、「自分がない」状態に陥っているのです。
一方で組織の中では、「自分がある」状態にするには少し勇気が必要です。他人と対立したくない場合は尚更です。自分の意見を強く主張すると「KY」とか「頑固者」と言われてしまうことが多いですよね。
大人は様々な体験を通して、経験を蓄積していますから、自分なりの持論や前提を持っています。だから大人は本来、「頑固」なもの。この頑固さが価値観を形作っています。
一方でこの頑固さという価値観は、時には大きく変えて行く必要もあります。その時に必要なのが、素直さです。
このように考えると大人にとっては、素直さを持ちながらも、相反する頑固さも持ち続けることが、必要なのです。
【参考文献】
土居健郎『「甘え」の構造』弘文社(2007年)