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自分を成長させる運命の人に出会う方法

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運命の人を待つ(小).jpg

ドラマ「グランメゾン東京」は、本格的なフランス料理の世界観を見事に描いていて、毎週夢中になって見ていました。
木村拓也さん演じる天才シェフ尾花夏樹は、日仏首脳会談の昼食会でアレルギー食材混入事件を起こして名声と信用を失っていました。しかし鈴木京香さん演じる早見倫子シェフと出会い、日本で新しいレストランを開店させてミシュラン三つ星を獲得するというストーリーです。とくに、尾花シェフと早見シェフの「師弟関係」には心が熱くなりました。

「スターウォーズ」もそうですが、あるときヨーダのような運命の人が現れて、眠っていた才能を見出し、高い世界に連れて行ってもらえるストーリーに人は惹かれてしまうのです。

人が精神的にも大きく成長するこれらの師弟関係には大事なポイントがあります。

それは、「この人じゃなきゃダメなんです」という関係を築くことです。

これが「我・汝」関係です。

経営学者の野中郁次郎氏は、「『我・汝』関係では相手と全人的に向き合い、互いに個として認め合いながら、個を超えて関係し合う。だから、相手はかけがえのない『汝』となる」と言います

他者と関係を持つとき、人は「我・それ」と「我・汝」という2種類の態度をとります。

「我・それ」の「それ」は、他のものと代替可能です。たとえば、パソコン教室のエクセルの先生が他の先生に変更しても問題ない場合、その関係は「我・それ」となります。「我・それ」関係のままでは、「この人じゃなきゃダメ」にはなりません。

一方で「我・汝」は他と代替不可の関係です。他と入れ替え不可で「この人じゃなきゃダメ」になるには、体験の共有と対話が欠かせません。

でも、「自分は人づきあいが苦手だし...」「どうせ誰も目をかけてくれない」と思う方いらっしゃるかもしれません。じつは人づき合いの良さはかえって邪魔になります。ある一つのポイントさえクリアすれば良いのです。

最初から気が合って仲良くできるのが「我・汝」関係ではありません。別の世界を生きてきて、主観も違う他人同士が「我・汝」関係になるには、体験の共有と対話を通して、ゴツゴツと心がぶつかり合うプロセスが必要なのです。人づきあいが良くて、衝突を器用に回避できる人ほど、「我・汝」関係が築きにくいというパラドックスに陥ってしまうのです。

尾花シェフと早見シェフは、最初のうちは衝突していましたが、料理を通して「我・汝」関係を築きました。
ルーク・スカイウォーカーも、ヨーダに反抗していましたが、途中から心を入れ替え「我・汝」関係となっています

物事は衝突するから接着することができます。ぶつからなければ別々の道を歩んでいるだけで一つになることはできません。衝突が争いにならないのは、相手との体験の共有と対話が継続しているからです。

現代は、衝突を恐れるがゆえに「我・それ」関係が多いように感じます。
一人で学ぶには限界があります。大人が成長するためには、体験の共有と対話を通した「我・汝」関係を育んでいくことが大切なのです。
 
 
【参考文献】
野中郁次郎,大久保幸夫「イノベーションを担う人材をどう育てるか」『Works』100号 リクルートワークス研究所(2010年)

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