「50代の末路」のウソ
最近「50代の末路」という言葉がよく使われますよね。
そもそも、50代の末路とはどういうことなのでしょうか?
さらに言うと、そもそも50代の末路とは一体どういうことなんでしょうか?
なんで、40代や60代じゃないんでしょうか?
末路とは、人生の終わりのことを言います。
どうも「50代の末路」とは人生が50代で「終わってしまう」ということのようです。
一般的に、50代は定年を少し先に控えた人たちです。その方々が、勤め先の企業に最適化されたまま、新しい可能性のない状態に陥っている危機感を指摘しています。
つまり、「定年まで10数年ある50代だったらまだ間に合うよ。なんとかしないと人生終わるよ」という危機感を煽っているのです。
レポートの提出日が2ヶ月後だとなかなか書く気にならない。でも、残り1週間になるとさすがにお尻に火が付きます。逆に当日の朝に気がついたら諦めの境地ですよね。
危機感を煽るには、すでに定年してしまった60代、または定年を自覚するにはまだ先の40代より、末路への現実味が帯びてきている50代がちょうどよいのです
では、なぜ可能性のない状態になるのでしょうか。
「年をとると頭が固くなって頑固だからだめ」「若い人は頭が柔軟だから可能性がある」とよく言われます。
可能性がないとは、50代の大人が頑固になっていて、新しいことにチャレンジし難いことを言っているのです。
ただ、脳科学の視点で考えると、人の脳は100歳になるまで衰えないことが分かっています。
脳は無限に成長する可能性を持っているのです。
脳は大丈夫なのに、なぜ「頭が固くなる」のでしょうか?
それは、大人は経験があるからです。経験の蓄積から来る前提や持論を持つため、現状の考えを変えることが難しくなるのです。
「今までこのやり方で成功してきた、だからこれでいいんだ」と考えてしまい、コンフォートゾーンに留まってしまいます。
人間の脳の可能性はあるのに、大人自体の可能性がなくなっているのは、この「大人特有の頑固さ」が原因です。
人は、一般的な言説によって年齢を重ねるとチャレンジできないと思い込まされています。それが「50代の末路」という言葉の正体です。
どんな大人も成長の可能性を持っています。「大人特有の頑固さ」を克服することが、大人の成長を促すコツだと考えます。
【参考文献】
茂木健一郎『感動する脳』PHP 研究所(2007年)
池谷裕二『脳はなにげに不公平 パテカトルの万脳薬』朝日新聞出版(2016年)
M.ノールズ『成人教育の現代的実践 ペダゴージからアンドラゴジーへ』堀薫夫,三輪健二訳,鳳書房(2002年)