「違いの分かる男」だったソニーよ何処へ行く
ソニーが最終赤字2300億円、初の無配になっているというニュースを昨日見ました。
ソニーの経営状態は前から気になってはいましたが、やはり大変なことだと思います。
2013年9月18日の日本経済新聞には、
・・・・(以下引用)・・・・
17日、コア(中核)事業と位置づけるスマートフォン(スマホ)事業の中期戦略を見直し、減損約1800億円を営業損失として計上すると発表した。平井一夫社長兼最高経営責任者(CEO)は「構造改革をやりきる」と強調したが、具体的な成長シナリオの再提示が急務だ。
同時に発表した事業面での戦略は(1)展開地域を収益を見込める市場に絞り込む(2)高付加価値商品への集中(3)低価格帯モデルの削減――といった方向性だけだ。
平井社長は「今後は販売規模ではなく収益を重視する」と量から質への戦略転換をアピールしたが、台頭する中国勢との正面対決を避けるための消極的な経営判断も透けて見える。スマホ首位の韓国サムスン電子ですら、事業の再構築に苦しんでいる。ソニーの思惑通りに収益性を確保できるかは予断を許さない。
・・・・(以上引用)・・・・
とありました。
私の感じるソニーは、手に取ったとき、お手頃感はあるのですが、特別感がないような気がしています。
「迷ったらソニーであれば安心」という、絶大な信頼感というよりは、「他もあるし、どれにしよう」と、つい思わせてしまうのです。
ソニーは、真空管ラジオしかない時代に、果敢に「トランジスタラジオ」に挑戦し、革命的な製品を作り出しました。その後、ウォークマンなどの製品で大躍進していき、世界のソニーとなったのです。
その技術とともに、グローバル感と、プレミアムなブランド感を押し上げたのが、あの元ソニー社長の大賀典雄さんだったのではないでしょうか。
大賀さんは、芸大の声楽科を卒業後、ドイツのミュンヘン国立高等音楽大学、ベルリン国立芸術大学の音楽学部を卒業しているバリトン歌手です。歌手としても活躍していました。芸大時代に、テープレコーダーの音質にクレームをつけ、それをきっかけに盛田昭夫さん、井深大さんに見込まれソニーに入社します。
その大賀さんは、世界的な指揮者であるヘルベルト・フォン・カラヤンと交友があり、指揮者としてもアドバイスを受けています。カラヤンは、飛行機の操縦が趣味でもあったのですが、大賀さんも猛勉強の末飛行機の免許を取得、海外の出張には自分で操縦して行っていました。カラヤンと趣味の話しでも盛り上がったのだそうです。
カラヤンとの仕事では、特にコンパクトディスクの開発などで公私共に縁が深く、カラヤンの録音は、とにかくあの「ベルリンフィルの音」、鋼のような強靭さ、豪華絢爛な華やかさ、重量戦車級の重みを持った音を生かしきって本当に素晴らしい。「カラヤンの演奏を録音が超えていた」とも思えるほどのこともあります。
大賀さんは「本物」、つまり「違いの分かる男」だったというわけです。
大賀さんが、CDの時間を74分に設定したという有名な話しがあります。
なぜ、74分などという中途半端な時間なのか。
それは「ベートーヴェンの『第九』が全部入るようにしなくてはならない」という理由です
最初は「切りのいい60分で」という強い案もあったようですが、カラヤンからの提言もあり74分にしたのだそうです。
もし他の経営者だったら、74分という時間を確信を持って押し切ることができたでしょうか。
経営者でもあり、一人の芸術家である大賀さんならではの判断だと思います。
アップルのスティーブ・ジョブズも、「作品」を作るときは、芸術的な感性を持つ人たちを使って、アートを深く反映させていたそうです。
これからの仕事は、作り手やトップに、さらにアートの感性が必要になってくると感じています。
世界一の耳と感性を持つ芸術家、巨匠カラヤンのお墨付きをもらったソニー。
その黄金期もすでに終わり、今はカラヤンも大賀さんも天上の人となってしまいました。
昨日、平井さんが発表した事業面での戦略は、(1)展開地域を収益を見込める市場に絞り込む(2)高付加価値商品への集中(3)低価格帯モデルの削減、そして「量から質への戦略転換」。
「なるほど」と思いました。
ぜひ、「ソニーらしさ」とは何か?を見直してほしい。
しかし、前途多難であることは変わりありません。
平井さんの経営手腕とプレゼン力を生かし、素晴らしいブランドの復活を願っています。