自分に合った方法こそが強みになる
今、日本経済新聞で連載されている「日本指揮者列伝」2014年7月24日掲載の第4回は、ヤマカズさんと呼ばれた山田一雄さんと渡邉暁雄さんについて書かれていました。
渡邉暁雄さんは私がお仕事をご一緒させていただいたY先生のお師匠で、先生はいつも渡邉先生を大変尊敬されていたのが印象に残っています。
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渡邉暁雄はフィンランド人の母と日本人牧師とのあいだに生まれ、東京音楽学校ではヴァイオリンを学んだ。在学中から指揮も行い、終戦直後の46年3月、東京都フィル(東京フィルハーモニー交響楽団の前身)を指揮してデビューののち、常任指揮者となる。長身で眉目秀麗の青年指揮者として注目を集め、50年から2年間、東京フィル在任のまま米ジュリアード音楽院に留学。帰国後はバロックやアメリカ音楽、フランス音楽などを積極的に取り入れた斬新なプログラムで注目を集めた。
・・・・(以上引用)・・・・
Y先生は
「渡邉先生に憧れて、僕も長い指揮棒を使った。しかしなんとなく上手くいかない。よく考えたら、渡邉先生は背が高いから指揮棒が長くても様になる。先生より小さい僕が同じように長い指揮棒を使っても振り遅れてしまう。そこで、指揮棒を短いものに変えてみた。そうしたらしっくりくるようになった、」
とよくおっしゃっていました。
音楽でも憧れて真似をすることはよくあるのですが、体格は人それぞれ。
自分の体格に合った方法を探す必要があったのです。
それと似たような話ですが、私は割と背が高い方なので、オクターブが割と楽に届きます。
しかし、あるとき気がついたのですが、オクターブのトレモロが何となく軽くなってしまい、内容が感じられないのです。
私のピアノの師匠は小柄なので、オクターブのトレモロを弾くとき、指に体重移動をさせながら丁寧に演奏します。手が小さく弾きにくいところを工夫することで、かえって音楽に重みや深みが感じられるのです。
私が、トレモロを弾いているのを見て、「トレモロは、手が大きくても体重移動させながら歌うように弾くことですよ」と教えてくださいました。
先生は「あなたは、手が大きくて簡単に弾けてしまうからずっとこの弾き方でやってこれたのですね。私は、手が小さいもんだからこうしないと弾けないのヨ」とおっしゃっていたのを今でも覚えています。
もし楽に手が届いたとしても、楽することで音楽が浅くなってしまうということがあるのです。
人の個性や体格もぞれぞれ。
その人に合った方法を探求することで、可能性がさらに広がるのです。
これこそ、真理の探究ではないかと思いました。