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何度みても泣けてくる概念が覆された声 正しい発声法ってなんだ?!

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「正しい発声なんてないんだよ」

声楽の先生がそうおっしゃったのがいつまでも心に残っています。

体はひとそれぞれで持って生まれたもの。
背の高さも、声帯も、筋肉も、骨格も、そして、先天的なこと以外に、その人の生きてきた生き様まで含めて、同じものはこの世に二つとない個性なのです。
それは正しい発声方法という一つのメソッドでひとくくりにできない可能性に満ちています。
そう、その人にとって一番正しい発声は「本人しか知らない」というその事実。

今まで私は、正しい発声とは「ボイストレーナーに習って習得しなくてはならない」という常識を疑うこともありませんでした。
しかし、Sung-Bong Choi という韓国の22歳の男性の歌声を聞いて、その概念は覆されました。

Choiは、3歳のときに孤児院に入れられ、仲間の暴力に耐えきれなくなり5歳で孤児院を逃げ出します。それ以後は、路上でガムやドリンクを売り、階段や公衆トイレで寝泊まりしながら一人で生活をしてきました。GEDテストを受験して、小学校と中学校の学位を取得し、高校で人生ではじめての学校に通いました。
ひどい目にあったり、例えば自分の身を売られるなどの苦難の人生。しかし、あるときナイトクラブでガムを売っていたら、そこで歌っていた歌手が大変誠実な歌い方をしていたことに感動し自分も歌ってみたくなった。そして独学で歌を歌い始めたのだと言います。

韓国テレビのオーディション番組にChoi が出演したものをyoutubeで観ることができます。

Korea’s Got Talent Sung-Bong Choi

3人の審査員はChoi の生い立ちを聞いて、「ああ、またド素人が来た」と言う表情だったのが、Choi が一声歌い始めたとたん、あまりに素晴らしい声にあっけにとられ、感動で涙を流し始めます。聞いている聴衆もたくさんの人たちが泣いている。

普通の人なら、何年もかかる共鳴、高音での響きもすでに習得しています。そして凄いのは、何の無理もない自然な発声なのです。
なぜ、この青年は何のトレーニングも受けていないのに、これほどの発声方法を身につけられたのか?
身体的な条件と感性、そして耳の良さが備わっていたのだとしか言いようがありません。

私はそのとき「究極の発声法とは”すでに自分自身が知っているのだ"」、そう思いました。

「君に出来る限りの援助をしたい」という審査員たちに対して、Choi は、「これから出来ればきちんとしたクラシックの発声を勉強したい」と言います。
これだけ歌えていても、謙虚さを失わない。
まだ22歳。
さらに素晴らしい歌手になって世界中の人に感動を与えていただきたいと思います。

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