サリエリはいつの時代でもいるのだ いじめをする側への悪影響
美しい音で奏でられる音楽。
そこからは想像もできないけれども、その裏には陰湿ないじめもある。
合唱団によっては「ピアニストいじめ」というものがあります。
指揮者や指導者が、団員さんたちの前でプロのピアニストにわざと恥をかかせるようなことをしたり、もっとひどいのは、それとは分からない手口で行う巧妙で陰湿ないじめもあります。もちろん、立派な指導者はそういうことをするはずもありませんが、そうではないところも過去何度か見てきました。
今は有り難いことに周囲は素晴らしい方々ばかりですが、最初のうちはこういう世界から足を洗いたいと何度も考えました。
ヴァイオリニストの千住真理子さんは、もともと「天才少女」と呼ばれた人。
友達のお母さんたちが、最初は「頑張って」と褒めていたのが、上達してコンクールに入賞するようになると無視し始めたと言います。さらには、華やかな活動の裏で、大人からのいじめを受けるようになり、傷つき、失望し、追い詰められて、20歳のときに一度ヴァイオリンをやめられています。
今連載されている日本経済新聞の「私の履歴書」は、オリンピック銀メダリストの君原健二さんです。
2012年8月28日は、32歳でマラソンランナー引退を決意し、会社員として勤めはじめたところが書かれていました。
・・・・・(以下引用)・・・・・
講演は年に100件にもなったため、新日鉄からいただく私の給料を、社外の仕事で会社に納める金額が上回った。休日には市民マラソンのゲストランナーに呼ばれた。そうした私の活躍を上司はねたんだのか、私に冷ややかな態度をとるようになった。
私はじわじわとストレスがたまっていたのだろう。長野市での講演終了直後に気分が悪くなり、救急車で運ばれた。診断は過呼吸症候群。その後も緊張すると動悸が起きたりしたため、検査を受けた。医師は「ストレスをなくさないと、50歳までもちませんよ」という。陸上部の恩師である高橋進さんに相談すると「自分の思うように行動しなさい。人生なんとかなるものだ」というアドバイスを受けた。私は思い切って50歳での退職を決断する。職場では退職者への花束贈呈が恒例になっていたのに、私には何も贈られなかった。
・・・・・(以上引用)・・・・・
いじめている人は、心の中で「嫉妬」や「コンプレックス」というエゴが暴れまわっているのを野放しにしている。自分ではどうしようもないのです。映画「アマデウス」で、天才モーツァルトを妬んだサリエリのように・・・。(モーツァルト自身は「ウィーンで高い地位につけないのはサリエリが邪魔をしている」と主張していますが、実際のサリエリがモーツァルトをねたんで殺したかどうかは立証されていません。)
実は、妬みや恨みの感情を抱えるのは辛いことです。一度支配されてしまうと感情にとらわれてしまい、豊かなイマジネーションや無限の成長への可能性を失います。
結局、自分に返って来るのです。
本人は、それがどれくらい自分にとって悪影響があるのか知る由もありません。
「人を呪わば穴二つ」と言われるのは、そういう意味もあるのだと解釈しています。
人間本来もっているエゴを無くすことはできないと思います。抑えよう、思い通りにしよう、とすればするほど大きくなっていく。
自分にもそのエゴはあります。そんなとき「ああ、暴れているな。自分も弱いなあ。」と認めることができれば、それはかなり静まり楽になる。
常にその感情に目を向けることで、最近は、感謝と人のために尽くそうという思いが強くなり、物事に集中できるようになってきました。
しかし、君原さんのような方でもそのようなご経験があるのですね。
これからもお元気でますますご活躍いただきたいと思います。