心が満たされるとき ショパン「別れの曲」
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「一生のうち二度とこんなに美しい旋律を見つけることはできないでしょう」
ショパンにそういわせた作品が、練習曲作品10-3 「別れの曲」です。
ショパンといえば、ピアノという楽器を、まるで歌曲のように叙情的に響かせるという印象があるほど、その作品たちは素晴らしい旋律にあふれています。
その中でも特にショパンイチオシなのがこの「別れの曲」なのです。
この作品は、自分自身演奏会で弾くときは特に緊張します。
というのは、ステージからお客さんの反応がものすごく強く感じられるからです。
お客さんは、だまって座っているはずなのに、客席からの「気」が届く。それを全身に受けながら弾く。
まるでお客さんたちも演奏している、一緒に歌っているような感覚になる、自分にとって特別な作品でもあります。
音がハートから自分の手に伝わり、それが魔法にかかったようにお客さんの耳に届き、ハートに入る。
お客さんと心が通いあったように感じ、心が満たされるときです。
自分の力以上に作品に力がある。作品に助けられていると感じるときでもあります。
本日はこの「別れの曲」をエフゲニー・キーシンさん の演奏で聴いていただくことにしましょうか。
素直で純粋。
スーッと弾いたシンプルな線が見事なのです。
テクニックが必要な激しい中間部も、常に音楽的なバランスを保っています。
来日公演のリストのソナタも素晴らしかった。
これから年齢を重ね、さらに深みを増していかれることと思います。
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