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ライフワークとしての学びを考えます。

毎年大量の潜在的失業者を生み出している音大 そしてこれからのプロフェッショナルのあるべき姿とは

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先日、音高から音大と師事した教授の門下生の会で、勉強会と先生を囲む会を主催しました。20代から50代まであらゆる年齢層が集い、特に上の方々はすでにこの世界では指導者として活躍している人ばかりです。
 
そのときある一つのことが話題にあがりました。
 
「ここのところ、母校の音大を卒業すると一般就職をし、事務職につく学生が増えている」
 
普通に考えれば「何がいけない」と思われるでしょう。
 
7年間の専門教育を終えていれば、もうすでに腕一本でやっていけるプロフェッショナルとして育っているはずという考えがあり、我々の母校は、就職についての案内や指導はほとんどありません。
以前の卒業生の進路は、約半数が欧米への海外留学、それ以外は地元に帰り、後進の指導を行いながら演奏活動を続けるという道が主でした。企業に就職するケースは学年で一人いるかいないか。本当に稀でした。
 
開業しても、少子化のため生徒が圧倒的に少ないというのが現状。景気も低迷、ピアノの売れ行きも右肩下がり。さらに音楽教室の先生募集もわずかしかありません。運良く大手楽器店音楽教室の先生となった大変優秀だった男性ピアニストが、聞くところ月給11万と言っていました。
ピアニスト、ピアノ教師として生活できないなら、親元にパラサイトするか、それが無理ならば一般企業で事務職に就職する人が増えるのも当然の成り行きと言わねばならないでしょう。
 
この問題についてピアニストの中村紘子さんが著書「チャイコフスキーコンクール」の中でふれています。

      ・・・・・(以下引用)・・・・・
 
音楽学校の増加であるが、これは良い教師の数不足とその一般的水準の低下をもたらした。(中略)年間一万人を超すピアノ科卒業生が、全国のさまざまな音楽大学ないし付属音楽学部から社会に送り出されているが、当然のこととしてそのうちでも「コンサート・ピアニスト」「独奏者」として立っていける者は多くて一人か二人程度であろう。(中略)つまり音楽大学は高額な学費をとっているにもかかわらず、年間におびただしい数の潜在的失業者を作り出しているわけになるのだが、これが社会問題にまで発展しないのは、その大部分が「いざとなればお嫁に行くつもり」の女生徒であるからだという説を耳にしたことがある。
 
     ・・・・・(以上引用)・・・・・

企業への就職を否定するわけではありません。そこで素晴らしい仕事をすることになればそれに越したことはないのです。
何が問題と思うかというと、小さい頃からひたむきに努力してきたプロフェッショナルたち、アマチュアが逆立ちしても太刀打ちできないような技術を身につけているプロフェッショナルたちが、なんらかの形で社会の役に立てる道はないのだろうか、ということなのです。音大を卒業する後輩たちが失望して、音楽を断念してしまうのを見るといたたまれなくなります。
 
わたしは田坂広志さん著書「プロフェッショナル進化論」に一筋の光を見ています。実践するとなると大変厳しいことが書かれています。がしかし、これからは進化したプロフェッショナルが求められる時代。今後どう生きるべきなのか。模索は続きますがブログの中でも書いていきたいと思います。

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