なぜ女性指揮者が少ないか(その2)
指揮者の主な仕事はリハーサルにあるといわれています。
もちろん、本番でオーケストラの力をフルに引き出す能力も必要ですが、どういったリハーサルをするかで、全ての出来が決まるといっても過言ではありません。
100人近い人数の、一人一人がソリストとしての力も持っているプロフェッショナルの前に立ち、自分の思い通りに動いてもらわなくてはなりません。
個性的で一癖も二癖もある職人集団のようなものです。
「よお~し、どれだけデキるか見せてもらおうじゃないの」
と、腕組みして見ている感じです。
一挙手一投足が緊張の連続。
新人の指揮者が、初めてプロのオーケストラに行くと、大抵は怖い思いをするそうです
その武勇伝(?)、失敗談たるや枚挙に暇がありません。
しかも、女性指揮者となると、これがほとんど男性ばかりの中に入っていくわけですからさらに大変です。
以前お世話になった先生は、母校の第一期で、小澤征爾、秋山和慶らと同門の齋藤秀雄門下生。
日本を代表する女性指揮者でもあった人です。
ある時、指揮はお辞めになってしまいました。
その理由として、
「オーケストラはピアノと違って、とにかく自分の思い通りに動かない。
これは大変なストレスです。
それと、演奏会が終わると、偉い方々と次から次へと会わなければならない。
もう誰と会ったのか覚えていられないくらいです。
会社の社長さんのようで、こういうことは向かないと思った。」
とおっしゃっています。
指揮者というのは、たくさんの人をまとめるのが主な仕事。
そして、オーケストラの顔であり代表でもある立場。
経営者とよく似ている面があります。
近頃、女性のベンチャー企業経営者が増えています。
彼女たちも、様々なハードルを乗り越えて経営者として成功しているんでしょうね。
東洋人でも、韓国人指揮者のチョン・ミュンフンなど、困難を乗り越えてヨーロッパ名門オケの音楽監督に就任し、活躍している人もいます。
前途多難ですが、将来続いてくれる指揮者も現れるでしょう。
最近の合唱の指揮者などは、かなり女性が多いような気がします。
他の分野でも、東洋人、日本人の感性で活躍している人が増えてきているのを見ると、時間はかかるかもしれませんが、女性指揮者だからというハンディは、今後打ち崩されていくのではないか、という予感がしています。