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Adobeの戦略の鍵はOmnitureかなと思った

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 昨日は、アドビの2011年度の戦略発表会があった。Digital Publishing Suiteも気になるところなので参加してきた。

 昨年はCS5の発売開始などもあり ビジネスはかなり忙しかったと日本法人社長のクレイグ ティーゲル氏。2009年度比で29%増の売上は38億ドルで、2011年度はこれを42億ドルまで伸ばす予定。それなりに強気な感じか。Adobeにおいては、日本は非常に重要なマーケット、全体の売上規模は北米に続く2位、とくにAcrobat、Creative Suiteは世界2位の市場とのこと。特徴的なのが、世界で最大規模のFlexユーザーグループが日本にはあるとのことだ。

 昨年からの注目の話題がAdobe Digital Publishing Suiteを使った電子書籍に関わるビジネスの部分だろう。この製品、まだ日本ではベータステータスだが、続々とこれを利用した電子書籍が生まれつつあるとのこと。この日のデモでも、iPad、Galaxy Tabでビデオ映像なども含む同じ内容の電子書籍が作れることが紹介されていた。残念ながら1ソースで両方の端末に対応しているわけではない。画面サイズが異なるので、iPad用とGalaxy Tab用は別々に作ることになる。ただし、Galaxy TabとSは1つのソースから、両方の端末に対応するものを生成できるとのことだ。

 電子書籍で気になるのは、AppleのAppStore以外での課金にからむレギュレーションの話し。戦略発表会のあとにAdobeで電子書籍関連を担当している岩本氏にこのあたりどうなのか質問してみた。現状では、米国でもAdobeの電子書籍リーダーアプリはrejectされておらずAppStoreに登録されている。いまのところ、特別問題が発生している状況ではないとのことだ。とはいえ、先行きは若干不透明であることは間違いなさそう。このような電子書籍制作側とAppleとの間のことで、電子書籍を利用したいユーザーが不利益を被ることがなければいいのだが、といったことを岩本氏は気にしていた。

 今回の戦略発表で、時間を割いて紹介していたのがOmnitureだ。いまだ自分の中ではOmnitureがAdobeのサービスになったというのがしっくりこない部分もある。とはいえ、昨日の話を聞いているとむしろAdobeの今後の製品優位性は、このOmnitureとの連携あってこそと感じてきた。制作したものや仕組みを分析し、KPIに基づいてより良いものを生み出す。いままでAdobeでは制作部分に強みを持っていたわけだが、より良いものをどう作ればいいかは制作者側の経験とノウハウに依存してきた。そこにOmnitureがはいってきたことで、どうすればいいかを示唆でき、それに基づいてよりよいものやよりよいサービスがAdobeなら提供できるというのだ。この考え方は、電子書籍の制作にも適用される。デザイン的にいかにきれいなものを作るかだけでなく、それを利用するユーザーの状況を分析し、その結果を反映させた電子書籍を作ることがAdobeのソリューションであれば可能になるということだ。

 そのようなOmnitureの技術で象徴的だなと思ったのが、Adobe Recommendations。いわゆるリコメンドエンジンというのはすでにさまざまなものがあるが、それらからのリコメンドがなんだかなぁと思うような場面は多々ある。いま買ったばかりなのに同じようなものを薦められるとか、たまたま誰かが買ったのかもしれないまったく関連性のないものを薦められるとか。

 これに対しオムニチュア事業本部本部長の尾辻氏は「仮に顧客が望むものがなければ、顧客の欲しいものの代替案を示すというリコメンド。それによって、顧客に確実に買ってもらう。買ってもらったら、その商品の関連製品を示す。その際に、一度「買い物かご」に入ったものと同じような製品はリコメンドしない。そうしないと顧客は混乱してしまう」と言う。こういうストーリーでリコメンドできるリコメンドエンジンでなければだめだとのことだ。これ、たしかにその通りだなと。今買ったものと同じようなもの薦められても、なんだよこっちのほうがよかったのかよと迷うことに。それよりも気持ちよく買い物してもらい、もう1つ別なものを買い物かごに入れてもらうほうがいい。

 単純な数学モデルだけで成立するようなリコメンドエンジンでは、こういった最適化されたリコメンドのストーリーに沿ったリコメンドは難しいかもしれない。AdobeではKPIに基づいてマーケッターなりの意図も、もちろんリコメンドに反映できる。「リコメンドエンジンがブラックボックスではダメ」と尾辻氏。たしかにその通り。どんなに素晴らしいリコメンドエンジンでも、ブラックボックスではエンタープライズ向けには使えないなと思った次第だ。

 オペレーション機能がすごいとか、性能がずば抜けているとか、そういうのは確かにアプリケーションなりサービスなりの差別化のポイントでかもしれない。しかし、より優位性につながるのは、Omnitureのような分析してKPIに基づいてよりよい方向性を示すことができる付加価値かなと。そしてこれが、高価なソフトを導入してから初めて使えるようになるのではなく、クラウド型のサービスとして利用できるところもOmnitureの価値は高そう。あとはより一層の、Adobe製品としての地位の確立がOmnitureに出てくれば、かなり評価されるものになるのではと思う。

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