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鳥のように高いところからの俯瞰はできませんが、ITのことをちょっと違った視線から

CIO育成に投資するのか、システム導入に投資するのか

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 先日、某大学病院のIT化を推進している先生にお話をうかがう機会があった。そのとき、大変興味深い話が聞けたのだった。

 2003年ころから、世界的に医療にITを導入するというのが、ある種のブームになったのだという。そのときには、日本でも大規模な病院を中心に電子カルテの導入が相次いだようだ。この背景には、日本では電子カルテの導入に政府が補助金を出したと言う事実があるようだ。

 ところが、多くの病院で電子カルテは導入されたものの、それはいままでの紙のカルテの代替えに過ぎなかったようだ。電子カルテをきっかけに、病院という組織全体をITを活用して効率化するという動きにチャレンジした病院はきわめて少ないというのが現状だとのこと。病院に導入されているシステムは、かなりバラバラらしい。検査機ごとにシステムがあり、それぞれはその中で完結されており、連携するのは得意ではない。病院全体のITを統合するには、莫大な費用が発生するというのが通説となっている。

 これに対して、米国は病院のIT化では違った道を歩んでいるのだと言う。病院のIT化ブームが巻き起こった際に、電子カルテのシステムを導入するのに補助金をだしたのではなく、病院という組織に特化したCIOを育てることに注力したのだとか。そのおかげで、米国の病院のIT化は、日本のそれを一歩も二歩も先んじているとのことだ。お話をうかがった先生は、まさにそのころ米国に留学していたそうで、日本と米国の病院のIT化への姿勢の大きな違いを目の当たりにすることとなったわけだ。

 いま、その先生は、日本のある大学病院で、現役の医師でありながらまさにCIO的な働きをしており、SOAを使って安価に病院全体のITの統合、情報の一元管理を実施しようとしている。その結果、過酷な病院の職場環境をより効率的にする、さらに患者にとってもより安心で信頼できる医療を提供できるようにすると言うのだ。

 この後、日本では景気対策で莫大なお金、税金が投入されることになりそうだ。その多くは、直近の景気対策で助成金なりをばらまくものが多いように思える。もちろん、即効性のある景気対策を迅速に行う必要があることは理解できるが、仕組みそのものを変えて今後の世の中が効率的になったり、次代のリーダー的な存在を育てたりといったことにも、是非とも投資して欲しいものだなぁと思うのだった。

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