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計測できそうでできない多くのこと。エンピリカル(実証的)アプローチで。

イベントの実質的な価値とエンタメ性

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ソフトウェア開発にかかわる課題や事例を共有するシンポジウム、講演会、勉強会のようなイベントの企画を長くやっています。プロジェクトマネジメント学会の中部支部、情報処理学会の東海支部での企画イベントをはじめ、一番時間をかけてきたソフトウェア品質シンポジウムという技術者向けのイベントをやっています。ソフトウェア品質シンポジウムはとりまとめ(委員長)として引き受けた時点から300人程度の申込み者増になっており、2日で4万円程度のイベントとしてはうまくできているのではないかと思います。もちろん私だけの力ではありませんが、多少はあると思います。本気で取り組んでリーダーシップを優先して犠牲にしたものもあります。

私は大学研究者としてこうしたイベントに取り組んでいるので、イベントの企画は社会的な意義を設定しています。参加者の実務に役立つような内容であり、実質的な価値があるものにするという必要があります。一方で、参加者が少ないイベントだとイベントとして成立しづらいものもあります。そこで、ある程度は集客が見込める内容である必要もあります。

実質的な価値と集客を両立するコンテンツはかなり難しいと感じています。集客にはある意味で魅力的で熱量が持てるような内容にしないといけないのですが、それをそのまま持ち帰って実行するというのは簡単ではありません。集客に効くコンテンツは、どこかキラキラしていたり人目を引くようなものである必要があります。

樫田さんがこのあたりを適切に説明されていると思ったので、引用します。スレッドになっているので、スレッド1~11までご覧になることをお勧めします。イベントに関する話ではないですが、あてはまると思います。私は、上述の集客に効くコンテンツを豪華な料理、持ち帰って実行できるコンテンツを家庭料理とあてはめています。特に8の影響力を持ち、エンタメに逃げないという部分が大事だと思います。イベントも同様で集客の調子がよいとどうしてもカリスマを揃えて、より多くの集客を目指そうとしてしまいます。これが「エンタメ性の誘惑」に負けることだと思っています。

もちろん、これは誰にでもあてはまる話ではなくて、集客できるコンテンツを揃えられることはイベント企画を専業にされている方には、大切なことだと思います。やってみるとわかりますが、多くの人に参加してもらうことは簡単ではないと思います。ただし、冒頭に書いたように社会的意義を考えると、私にとっては足りない部分があります。

これまで、イベントの集客や講演者への依頼状といったロジスティクスに時間をとれる余裕がなかったので、そうした内容をお任せできるところと、エンタメ性に逃げず、実質的な価値を提供できるようなイベントを心がけてきました。

COVID-19でオンライン化が進んだことと「こういうのがあったら」という声をいただいて、エンタメ性はそれほどないけれど「これはすごいなぁ。ここまで考えてやっているのか」と思うような技術者の方々で議論できないかと思い、場を作ることにしました。これからいろいろ決めていこうと思います。

Enablersの会という名前にしました。2020/9/28 (月) 19:00で会の紹介と現時点で決まっている活動をZoomウェビナーで紹介します。無料ですが、以下から事前登録が必要です。

開発知見共有のためのEnablersの会

上のイベントでは、大枠の仕組みや名前の由来の話や実質的な価値の話を紹介しようと思います。プロダクト分析とレビューが私の得意分野の一つなので、実質的な価値に関して判断しやすいと思い、これに関する5名の方とともに進めたいと思っています。また、サイバーフィジカルシステムズでの取組みを技術移転する試みも実施したいと思っています。招待講演はサイバーフィジカルシステムズでの課題をJAXA梅田氏からご講演いただきます。

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