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Agile Japan 2015のパネルディスカッション「日本企業としてアジャイルに期待すべきこと、やらなければならないことは何か?」で印象に残ったこと

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2015/4/16に開催されたAgile Japan 2015で「日本企業としてアジャイルに期待すべきこと、やらなければならないことは何か?」というパネルディスカッションのモデレータを拝命しました。パネリストは横塚 裕志氏(東京海上日動システムズ)、宮田 一雄氏(富士通システムズ・ウエスト) 、誉田 直美氏(日本電気)です。

横塚氏が東京海上日動システムズ前社長、宮田氏が富士通システムズ・ウエスト社長、誉田氏が日本電気ソフトウェア生産革新本部 主席品質保証主幹という顔ぶれで私でモデレータが務まるのか心配でしたが、内容は非常に興味深く、評判もよかったそうです。参加できなかった方にも共有できるようパネリスト、実行委員のご協力のもと、「日本企業としてアジャイルとどう向き合うか、識者3人の提言」という記事として日経ITproに寄稿しました。私からの質問とパネリストの回答を書きました。浅川氏にも支援いただきました。皆様ありがとうございます。

セッションの様子はAgile Japanの公式レポート「問題はAgileの外に:Agile Japan 2015 レポート (8)」 「アジャイルへの期待とギャップは人にあり?:Agile Japan 2015 レポート (4)」でもレポートいただいています。

ここでは本パネルディスカッションのモデレータを拝命して印象深かったことのうちITproの記事には書かなかったことを紹介したいと思います。

1つめは「現状を変えてアジャイルに取り組もうとすると抵抗がありませんか?」という質問への横塚氏の回答です。

「抵抗は常にあるでしょう。社長がやろうといってもミドルのマネージャが抵抗することもある。スポーツで考えてみると、伝統的な相撲をやっている人にいきなりラグビーをやろうといきなり言っても受入れられないでしょう。相撲をとっている人からは、"なんでラグビーはそんなに大きな場所を使うんだ"とか"なんで服を着ているんだ"といった指摘があるでしょう。しかし、場所の広さやユニフォームについて議論しても仕方がない。やりたい人から順番にやって徐々に増やしていくしかない」

2つめは「挑戦できる場作り」です。横塚氏、宮田氏から「やろうといい出した人はそれなりにリスクを背負ってやってみたいと思ったはず。だからサポートする」「セーフティネットがなければ挑戦できないのは当たり前」等、挑戦できる場作りに努めておられることが発言からも読み取れました。

また、パネリストからより深いご意見をいただけるよう私がしつこく食い下がって質問をしたり失礼な質問もあったりしましたが、それを受入れてくださるパネリストにより私自身挑戦できました。より突っ込んだ質問ができたのは、安心して挑戦できる環境をパネリスト、セッション参加者の皆様、実行委員会からいただいて、勇気をもてたからではないかと思います。セッション自体にアジャイルなマインドをもって臨めたと思います。パネリストの方々が普段から気をつけていらっしゃることが本セッションでも自然に出てきたのではないかと思います。

3つめは、2つめでも述べた挑戦できる場作りを再現性のある手法で実践されている点、議論するための共通言語を持っておられる点です。アジャイルを共通として、横塚氏はデザインシンキング、宮田氏はSECIモデル、CCPM、ホスピタリティ論、誉田氏は品質会計への言及がありました。横塚氏はCeFILの理事長としてデザインシンキングのワークショップを企画されているそうです(詳細)。CCPMは大和ハウスと富士通システムズ・ウエストのシステム開発における事例が公開されています(詳細)。誉田氏は品質会計の書籍を執筆されています(詳細)。

もう1つ印象的だったのは、組織を俯瞰的にみる立場のパネリストからビジネス、マインド、スピード(技術の移り変わりの速さに対応する)といった目的とともにアジャイルが言及されている点でした。これまでアジャイルの話にはプラクティスやツールキットの話が多く、少し物足りないと思うこともあったのですが、こうした話が出てくる点も印象的でした。

ここまでが私にとって印象的だった点です。

私にとって参加人数が100人を超えるような場でのパネルディスカッションのモデレータは今回が3回目でした。経験が浅いのにスムーズに進行できたのは、Publickeyの「パネルディスカッションを成功させるためにモデレータがしなければならないこと(準備編)」パネルディスカッションを成功させるためにモデレータがしなければならないこと(本番編)」を参考にしたことによる効果も大きいと感じています。記事の「事前打合せをしてもその通りになることはありません」という点は今回もそうでした。こちらにもお礼申し上げます。

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