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計測できそうでできない多くのこと。エンピリカル(実証的)アプローチで。

25年以上かけてモデルベース開発を浸透 - マツダのSKYACTIV テクノロジーを支える

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マツダは1980年代からモデルベースでの開発に取り組んでいるそうです。モデルベースの開発の対象はソフトウェアだけでなく、エンジンやトランスミッションを含むハードウェアです。様々なパラメータをシミュレーションによって組合せ、最適な設計を机上で得て、机上で検証することができるようになり、試作や調整の時間や手間を減らせます。

マツダでの最初のモデルベース開発は1980年代のRX7の加速時の振動を抑える点火アクティブ制御だったそうです。その後、1991年のル・マン24時間耐久レースに使ったそうです。1991年の同レースでマツダは優勝しています。最近では、エンジンでの燃焼をシミュレーションすることにより、これまでにない高圧縮比のエンジンの実用化を支援しています。

モデルベースの開発を主導する原田氏のインタビュー記事(択一の世界を変えた! 「SKYACTIV TECHNOLOGY」を支えるマツダのモデルベース開発)がマイナビニュースに掲載されています。詳細はこちらをご覧ください。

モデルベースの開発はシミュレーションを用いて全探索的に最適状態を見つけることでハードウェアの試作の数や調整のための時間を短縮することができます。机上で様々な条件を試したり、うまくいなかい理由を検討できたりする場合が多いからです。しかしながら、優れた技術だからといってそれがスムーズに開発に活用できたり、社内に浸透できるとは限りません。熟練者や職人気質のエンジニアから信頼を得ることも必要でしょうし、技術の習得に時間もコストもかかることが予想されるので、すぐに期待される効果が出るとは限りません。

原田氏は25年以上かけてモデルベースの開発を推進され、現在、多くの車種に展開されているそうです。原田氏のご講演をET Westの基調講演で聞いて、非常に興味深いと感じるとともに並大抵ではこの技術を浸透させることはできないだろうと感じました。そして長期間にわたり革新的な(導入に抵抗が大きいと推測される)技術を浸透させた戦略と粘り強さから学ぶべきことがたくさんあると思いました。モデルベースの開発の対象は自動車のパワートレインですが、ソフトウェア開発の技術、技法、マインド、プロセス、プラクティスを推進しようとしている方にとっては共通する部分がたくさん見つかると思います。

2013/9/12, 13で開催されるソフトウェア品質シンポジウムにおいて、原田氏のご講演を9/13(金) 9:15~10:55に聞くことができます。場所は東洋大学(東京)です。詳細はこちらから。当日、会場での参加受付けもあります。私はシンポジウム委員を拝命しています。

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