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本質的な議論が置き去りにされる・・・「自転車置き場を何色にするか」問題 - Parkinson's law of trivialityから

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Color of the bike shedと呼ばれ、議論できるメンバがたくさんいるという理由で、本質的ではない話題で盛り上がってしまい、本来の議論が十分になされない状況を指します。

元々の定義では、ある委員会での原子力発電所の問題に関する議論と自転車置き場の色を何色にするかという議論があるときの状況を例として出しています。委員会の中で原子力発電所の問題を深く理解できるメンバは少なく、自転車置き場の色をどうするかという問題には多くのメンバが意見を出せるという前提で、より多くの議論が必要な原子力発電所の問題よりも自転車置き場の色のほうが議論が盛り上がるという話だそうです。

オープンソースソフトウェア開発のメーリングリストでは、単に知っているからという理由で些末な問題への意見を出すと、本質的な議論ができなくなってしまうという状況を指すために使われているそうです。wikipediaの項目によるとオープンソースソフトウェアのメーリングリストとしては、FreeBSDコミュニティへのメールが最初と書かれています。FreeBSDのサイトでのbikeshedの説明はここにあります。

この状況、どのような組織に所属していても一度は目にされたことがあると思います。こういう議論を一切なしにすること自体、難しいですし、共通の話題でメンバのいつもと違う側面を見ることにも、それなりに意味がありそうです。つまり、本当に解決しないといけない問題に関する議論の量や時間と自転車置き場(に相当する問題)の議論の量や時間のバランスをとるのが現実解といえそうです。

議論の進行役となる人がいると、バランスがとりやすくなります。ソフトウェアレビューでも同じような問題が起こりやすく、レビューアの心構えや進行役が気をつけるべきこととしてcolor of the bike shedという状況があることを共有しておくと、効率的な議論ができ、無用な摩擦を生まないでしょう。

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このような問題をはじめとしてソフトウェアレビューの基本を半日かけて解説します。詳しくは、ソフトウェア品質シンポジウム併設チュートリアル「おさえておきたい ソフトウェアレビューの原理・原則と欠陥検出の基本」(2011年9月7日)をご覧ください。

また、日経SYSTEMSの連載「間違いだらけのドキュメントレビュー 第4回(2011年7月号、第5回(2011年8月号)」でもレビューの問題として紹介しています(bike shedそのものとしての記述はありません)。

color of the bike shedは、オープンソースコミュニティの研究をしている大平雅雄氏に教えてもらいました。

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