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計測できそうでできない多くのこと。エンピリカル(実証的)アプローチで。

「プロジェクトの置かれた状況とその結果」という観点で開発を振り返る国際的な取組み

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ESEMシンポジウム参加と合わせて、ドイツのフラウンホーファ実験的ソフトウェア工学研究所(IESE)のTesting & Inspection部門の責任者を訪問し、先方のレビューに関する活動と私が担当しているレビューのテーマを紹介し、ディスカッションした。

去年IESEの別の方々に話をしたときにも感じたことだが「うまくいった事例」と「当該プロジェクトの置かれた状況(コンテキスト)」の明言化にこだわっているところが伺えた。エンピリカルソフトウェア工学では、ソフトウェア開発においてある現象が確認されると必ずそのコンテキストを明確にすることが推奨されている。

エンピリカルソフトウェア工学では、どのような局面でも有効な技術、手法、仮説は少ないという前提に立ち、成功事例や失敗事例から、結果に影響を与えた原因を想定する。それらをセットにして共有することにより、技術や手法の進展を目指す。また、リプリケーションと呼ばれる追試行も奨励されている。少数の事例だけでは技術、手法、仮説を判断できないというのが理由だ。

たとえば、バシリ氏はこのプレゼンテーションにおいて以下のようなコンテキストと結果の例を挙げている。

  • 仕様の漏れや欠陥を指摘するには(コンテキスト)、機能テストを実施するよりもピアレビューのほうが効果的(結果)。
  • 近似計算やフロー制御に関する不具合を発見するには(コンテキスト)、レビューよりも機能テストのほうが効果的(結果)。

今回のディスカッションでは、日独で得られた複数のコンテキストを(もちろん公開できる情報のみを)積み上げていくことで合意した。また、レビューの実施に関して実績のあるガイドラインやフォーマットを共有することで合意した。ソフトウェア開発の状況は米国だけでなく欧州から学ぶことも多いように思っている。このブログでもドイツでの事例を紹介できればと思う。

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