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計測できそうでできない多くのこと。エンピリカル(実証的)アプローチで。

ESEMシンポジウムのオープニングにて - 採択率を上げたい?なら、スウェーデンに引っ越しだ -

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ESEM(Empirical Software Engineering and Measurement) 2008という学術系シンポジウムに参加した。投稿した論文の採択率は99論文中28論文(28%)だったそうだ。empiricalの意味についてはこのエントリに書いた。

ソフトウェア開発において、実際の開発にあてはめて効果を評価したり、数値をもとに状況や情報を推察する(モデル化する)という会議ということもあり、オープニングでは採択に影響を与える項目とそれに基づいた採択率をあげるための提案がされていた(ジョークまじりにしゃべられていただけで、会議の中身はこんなふうにふざけているわけではない)。

  • スウェーデンの組織から投稿された論文の採択率が70%
    → (次回投稿する人は)スウェーデンに引っ越ししよう
  • 締切24時間前に出したものは採択率2倍になる
    最終日まで論文を洗練させつづけよう
  • 採択論文の平均ページ数は非採択論文より0.8ページ長い
    → 説明はできるだけ長く
  • 採択率100%になっている著者の姓がある。
    → (次回投稿する人は)自分の名前を変えよう。

分布を見ないで平均だけで考えるとか、ちょっと微妙な部分があるがこの裏には意外にもちゃんとした背景がある。中にはその背景を数値が物語っているものもある。

たとえば、

スウェーデンの組織から投稿された論文の採択率が70%

スウェーデンでは、世界の他国と現状を比較すると、企業がエンピリカルソフトウェア工学を受け入る土壌があり、研究を奨励する協力的な企業が多い。もちろん優秀な研究者がいることも大きなファクタになっているが、それに加えてこのような土壌がスウェーデンの論文の採択率を上げているといえる。今回の会議中にスウェーデンの組織に所属する知人が複数できたので、その理由について食事や休憩のときに聞いてみたら、背景があるようだ。それはまた別途どこかでエントリにしたい。

ここを読まれている方は、ソフトウェア開発に伴って収集されたデータが何かを物語っていることを推察されている方は多いだろうが、まだやったことがない、という方はぜひお勧めしたい。明快なものはなかなか現れないと思うが、数値から推察してはじめて気づくことも多いだろう。

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