その提案の「強み」は?
インテグレーション案件の提案書に書く武器としてどのようなものを使われているだろうか。価格はわかりやすいものの1つだろう。類似案件の実績も有力な候補の1つだろう。SLA(Service Level Agreement)等、契約ベースで品質をコミットできる場合もあるだろう(SLAについてはここやここに書いた)。
「今後の展開」、「御社のビジネスモデルの中核に」、「変化への柔軟な対応」、「~としての強み」などなどアピールできる付加情報をつけるだろう。また、「開発の透明性」「進捗のわかりやすさ」のような開発進行中の安心材料を提供するという手もある。私自身の経験を振り返ると進捗報告が手厚い案件はトラブルが起きにくい感触がある。
受注側、発注側で計画や進捗予定についてあらかじめ同意しておき、予実管理を実施する。予実にズレがみつかれば、なるべく早めにその状況を把握し再計画等の対応をとる。予実の状況は進捗会議で報告したり、予実管理の対象となる成果物や中間成果物(の一部)を納品物に含めることで開発の透明性が高まることが期待される。
いわゆる失敗プロジェクトにはその予兆があるといわれている。予兆をなるべく早く捉え、双方で認識することができれば、被害を小さく抑えることができるだろう。
PMBOKやCMMIでも予実管理が定義されているが、具体的なメトリクスやデータが必ずしも指定されているわけではない。そこで、そのようなデータのリファレンスモデル(一具現例)、データ収集方法、可視化と評価方法、実プロジェクトへの適用、法的問題に関する検討、の5つを検討する研究テーマ「エンピリカルデータに基づくソフトウェアタグ技術の開発と普及(研究代表: 松本 健一)」が開始されている。文部科学省の平成19年度「次世代IT基盤構築のための研究開発」に関する研究開発課題の1つだ。私も活動に参加している。
当該テーマではソフトウェア、システム、機器の購入者、供給者が合意をとるための媒体を「ソフトウェアタグ」と呼んでいる。これが普及すれば、提案資料に「ソフトウェアタグによる透明性の確保」や「ソフトウェアタグの提供範囲」という項目が入ることになるだろう。松竹梅のようなゴージャスさと価格のバリエーションのある提案がなされるのが一般的だが、ソフトウェアタグの収集粒度の細かさや有無もそのバリエーションの1つとなり得るだろう。
詳細はこちらに(StagEプロジェクトと名前がついている)。東京 日本科学未来館で開催される「ソフトウェアプロセスエンジニアリングシンポジウム2008」の1セッションとして、7/17(木)に研究代表の松本教授と松村研究員が講演予定である。