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計測できそうでできない多くのこと。エンピリカル(実証的)アプローチで。

レセプタ - ソフトウェア設計書が語りかけてくる -

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receptor。受容体と呼ばれることもあるが、このエントリでは聞く耳を持ったり、積極的に考えることができるという意味で使う。ある話を聞いたときにちゃんと自分のことと理解できる状態を「その話に対してレセプタを持っている」とする(出典はこちら)。

チームでソフトウェア開発をする場合には、作業の多くがコミュニケーションで成り立っている。言い換えると、聞く耳をもっていないと作業の多くがうまくいかない可能性がある。

メンバは注意点に関してレセプタをもって聞いているだろうか。
メンバは納期や締切りに対するレセプタを持っているだろうか。
レビューの打合せにノートPCを持ち込んで自身の仕事を進めていないだろうか。
「テスト環境と稼働環境のバージョンが異なるとテストは全部やり直しになるよ。そろえてね」という話を聞いた後、テスト環境のソフトウェアのバージョンを確かめているだろうか。
メンバはたくさんいるけど、リリース、品質、コストに対して自身のことと考えてプロジェクトに接しているのは限られた人だけということはないだろうか。

該当するのであればメンバのレセプタを引き出さなければならないのかもしれない。

設計書の情報だけで本当に実装できるかどうかということを客観的に考えられるかどうかもレセプタに深く関連している。レビューで指摘をするとき、修正担当者の立場にたった指摘ができているだろうか。開発の効率(ソフトウェア開発に限らないが)はメンバがレセプタをもち、一体感をもってあたっているかどうかにも大きく依存するように思う。人員の頻繁な入れ替えはないことを前提として。

レセプタをもって仕事に取り組むことの重要さは様々なところで異なる表現で強調されているように思う。ベテランから「じっと集中して設計書や構成図をみていると設計書や構成図から語りかけてくる」というような話を聞いたことがないだろうか。これはレセプタをもつことの1つではないかと思う。ユーザビリティテストでペルソナ法が話題になるのは、ペルソナ法がメンバの共通のレセプタを持たせるのに適しているからではないかと思う。

いろいろな事柄にレセプタをもつには訓練や自身の成功体験が一番だと思う。プロジェクトマネージャやリーダがメンバがレセプタを持つような語り口で話をすることも有力な方法の1つだろう。会議や打合せの方法を工夫するのもレセプタをもつためのきっかけになるだろう。たとえばゴールツリー分析を取り入れてみたりするなど、会議のやりかたで、それほど大きなコストを必要とせずレセプタを持ってもらうきっかけは作れるように思う。

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