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計測できそうでできない多くのこと。エンピリカル(実証的)アプローチで。

ソフトウェア品質向上を目的としたメトリクス活用事例

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日本IBMの細川氏、渡辺氏、原氏、徳氏のJaSST'08でのご発表(ご登壇は細川氏)。タイトルは「定量メトリクス・データによるDefect Preventionの実践」。前回に続いてJaSST'08東京(1/30, 31)での話。

ご講演ではこのエントリで紹介した点以外の部分も含まれるがここではメトリクスの側面だけに焦点を絞り、メトリクスを利用してインスペクション/レビューの工数配分に使うという部分を取り上げたい。

計測したメトリクスによって特に不具合のありそうな部分を予測し、インスペクション/レビューを重点的に実施する部分を特定されているそうだ。メトリクスの活用事例としてたいへん興味深い。

以下に特に印象に残った点から2つを抜粋した。

  • ソースコードを対象に属人的な部分がメトリクスに現れる例をいくつか挙げ、属人的観点に基づいたソースコードインスペクション/レビューを実施する手法の紹介。分業化がそれほど活発ではないコンパクトな組織では、属人性をメトリクスから取る必要性はそれほど大きくないが、一定以上のサイズを持つ組織、メンバの流動性の大きな組織、コーディングを外部委託する場合には俗人性が現れるメトリクスは有用だろう。
  • 複数のメトリクスを組み合わせて利用する手法の紹介。単一のメトリクスだけでなくメトリクスを複合的に組合せてはじめてわかることもあることを挙げられていた。その可視化の方法として"Quality browser"を実際に動作させてデモされていた。3次元の散布図にプロット点の大きさと色で5次元を作り出し、異常値をみつけやすくする。

メトリクスを使ったエンピリカルアプローチの好例のように思う。メトリクス収集と活用は、導入に際していろいろな側面で困難が伴うが、軌道にのれば非常に有力な方法だ。今回のご発表はメトリクス収集と活用を考えていらっしゃる方に役立つ内容だと思う。

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