さがすということを改めて考えるきっかけ
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オルタナティブブロガ吉川氏の「サーチアーキテクチャ 「さがす」の情報科学」という書籍を拝読した。普段、規則性、ソースコード片、関連研究など探す機会が多いので、自身の活動の改善や見直しになる点をみつけるというのが目的だ。
認知科学的な面から検索システムの話まで多岐にわたっている上、アンケート等の実勢を表すデータを含む書籍という点で貴重な書籍だ。全体の説明は吉川さんご自身の紹介によるものがベストと考えるが、私がグッときた点は以下のとおり。
- 「さがす」シーンの分類とそれに基づいた解説
2章で「さがす」シーンをトップダウンに4種類(4象限)に分類した後、6章のツール紹介でそれをもとに解説がなされている。各象限に適したツールの紹介、象限の遷移を支援するツールの紹介は全体像の理解を助ける。既存の検索ツールの整理や自身の検索の活動を整理できる点で非常に有用だ。自身の検索活動を明確に意識していないと、今行おうとする検索に適していないツールを使っていることがよくある。これを読むことで、自身の検索や使っているツールを整理したり、目的意識を持った上での新たなツール利用につながるだろう。4象限の分類を1つの観点として、オリジナルな観点(象限)を作ったり、自身の活動に読み替えたり、改変したりして発展させることもできる。検索ツールを使っている全ての方に役立つが、特に、特定のツールに利用が偏っている方に新たな観点を与えてくれるだろう。 - 「ベリー摘みモデル」の解説
検索に限った話ではないが、キーワード検索の与えたキーワードと得られた検索結果から自分が探しているものを的確に表現するキーワードを選んでいく。検索に限らずrepresentational feedbackと呼ばれているものである。誰しも、普段意識せずにやっていることだと思うが、これを知っていると検索中に自身の行為をより整理できるのではないだろうか。普段、情報検索をしている幅広い方に役立つが、特にねばり強く検索をしなければならない方には自身の活動の整理という観点を与えてくれるだろう。 - 「類似文書検索」、「インデックスに注目した新しい動き」
共起するキーワードから類似度を求め、検索に役立てる。検索の幅を広げるという意味で普段の検索方法に満足されていない方が検索の幅を広げようとする方や、既存の社内検索システムの拡張を検討する際にも役立つだろう。
特に目的を持たなくても、検索に関する知識の底上げにつながる網羅的な内容、興味深いコラム等、読み物としても十分楽しめる配慮がなされている。コラムの1つに検索結果とそれを見る閲覧者の視線の履歴があるのも印象的だ。私が所属している奈良先端科学技術大学院大学ソフトウェア工学講座にもこれと同様の視線追跡装置があり、同様の研究実績があるが、「目は口ほどにものをいう」を改めて理解させてくれる。
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