世界経営者会議(9)2日目:サンミゲル ラモン副会長、社長兼COO ASEAN統合は、アジアの新たな発展の契機になる
世界経営者会議レポートの続きです。
サンミゲルはビール会社として有名ですが、多角化を積極的に推進され、今やフィリピンのインフラを担う大企業になっています。
2002年から社長兼COOを務められているラモン副会長が登壇されました。
【講演より】
フィリピンは何十年かぶりに回復しつつある。そこで急成長するアジア市場で成功するための秘訣をお話ししたい。
フィリピンはGDP 7%成長で推移している。ビジネスが堅調なのにはいくつか理由がある。
まず、健全な財政運営がされている点。そして安定した輸出セクター。消費者支出も堅調だ。海外で働きフィリピン人の送金も増額している。この結果、格付会社からフィリピンは「投資適格」のランク付けをもらっている。
平均年齢23才という若い国民が1億人いる。この国へは日本企業も進出している。2012年からメトロ地域にユニクロも12店舗展開している。ラーメンの一風堂も進出している。
フィリピン政府は50以上のプロジェクトを進めており、サンミゲルは様々なプロジェクトに参画している。
サンミゲルは過去6年間、多様性に富んだ企業にすべく多角化を進めてきた。社会的インフラプロジェクトに投資してきている。その結果、サンミゲルの総資産額は270億ドル、売上は170億ドルになっている。
日本が技術や資金を提供してくれることで、フィリピンはより成長できる。ではどうすれば成功できるか?5つのポイントをお話ししたい。
1つ目は、正しい情報を得ることだ。不慣れな地域では様々なリスクが隠れている。信頼できるプロフェッショナルを雇うことだ。
2つ目は、適切なパートナーを選ぶこと。
3つ目は、信頼関係を築くために時間も含めた投資を怠らないこと。
4つ目は、挑戦すること。プレミアムブランド戦略は、このような新興国では機能しない。製品の価値と価格競争力を両立させることが必要になる。
5つ目は、想定されたリスクを取ることだ。
優勢な立場に立つためのチャンスを見極め、常にイノベーティブであることが必要だ。時間が経てば必ずよいものが出てくる。新しいものを作ることを恐れてはいけない。
そしてチームワークと対話が必要だ。効率の良い「対話戦略」と、事前計画を持つことが必要だ。
【質疑応答より】
(「中間所得者層が急拡大したこの10-20年で何が変わったか?」という質問に対して)
海外労働者からの送金は年間250億ドル、アウトソーシングは年間200億ドルの規模だ。これらのお金がフィリピンに入ってきており、国内で再投資され、ビジネスがさらに増えている。フィリピンは若いのでこれからもアジアの他の国よりも高成長が期待できる。政府は緊急なインフラプロジェクトをしてくれないと困る。フィリピンには莫大なチャンスがあるからだ。このチャンスを逃してはならない。
(「チャンスは多いが、課題は何か」という質問に対して)
マルコス時代に戒厳令があったこともあり、1980年代から色々な問題があって、フィリピンは遅れている。たとえばセメント消費量は1人当たり150Kgだ。他国は1000Kgなので少ない。だから不動産はまだまだ成長できる。多くの外国人がフィリピンに来ないのは、拉致や誘拐を恐れているかも知れないが、今はそんなことはない。
(「AEC (ASEAN経済共同体)が2015年末から始まると言われているが、これはうまくいくと思うか?」)
ASEAN統合は間違いなく実現される。フィリピンではリスクはあまりないと思う。消費者にとっては価格がより安くなり、入手しやすくなる。フィリピンにとってよいことであり、フィリピンの強みになる。
(「この5年、10年の中国の役割を聞きたい。特に中国が提唱しているAIIB(アジアインフラ投資銀行)についてどう思うか?」という質問に対して)
→中国は全ての近隣諸国に友好的であるとともに、全ての国と協力して、問題から遠ざかるべきだ。
【所感】
SMインベストメントのテレシタ・シー・コソン副会長もフィリピンの企業でした。今回の世界経営者会議に登壇された19名のうち、フィリピンからは2名の経営者が参加されています。それだけフィリピンの成長が著しいということでしょう。
実は対談は、記者と、ラモン副会長、SMインベストメントのコソン副会長、PTTのパイリンCEOの4名で行われました。
ASEAN統合や、中国の話題、AIIBの話に対する3名の反応を見ていると、アジアではさらに大きな躍動が始まっていることを実感します。
新聞記事でも経営者の講演や対談の様子を読むことができますが、やはりライブで見て得られるものは大きいですね。
2015年の世界経営者会議は、2015/11/10(火)と11/11(水)の予定です。ここでしか学べないことも多いので、また参加したいと思っています。
【世界経営者会議レポート】
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