「2000億円を稼ぐ1事業よりも、500億円稼ぐ10事業」「1事業で1兆円よりも、100事業で100億円」 -- パナソニックとシャープの事業変革より
現代は、これまでのやり方が通用しない、企業にとって厳しい時代になっています。
その大きな要因の一つが、顧客のニーズが洗練され、市場での競争が激しくなっていること。では、どのように取り組めばよいのでしょうか?
本日2014/8/28の日本経済新聞の記事「会社研究 パナソニック(上) 復活へ創業来の事業転換」に、そのヒントがありました。
---(以下、引用)---
「2000億円の営業利益を稼ぐ4番打者は不要。500億円稼ぐ事業を10そろえるのが目標」と、佐藤基嗣取締役は話す。前期は航空機娯楽システムなど20事業部で売上高営業利益率が5%を超えた。一つ一つの利益規模は大きくないが、1980年代のVTRや90年代の大型ブラウン管テレビが営業利益の大半を稼いだのとは収益構造が変わってきた。
---(以上、引用)---
創業以来の大事業変革に取り組むパナソニックはこのように、「長距離砲のパワーヒッターを育てるのではなく、アベレージ・ヒッターを数多く揃えたい」と考えています。
興味深いことに、日経ビジネス 2014/7/28号でシャープの高橋興三社長も、
1事業で1兆円よりも、100事業で100億円ずつ売る。
新陳代謝が続けばシャープは潰れない。
とおっしゃっています。「液晶テレビ」という一大事業で、栄光と苦労を経験されたシャープならではの言葉です。
「なるほど」と思いました。
顧客ニーズが洗練され競争が激化しています。しかし顧客ニーズの洗練に伴い、顧客ニーズは細分化されています。それに伴って市場も小さく細分化されているのです。
こうなると、細分化された小さい市場の顧客ニーズを先取りし、ニーズに最適化した商品をいち早く投入し、市場でダントツのトップシェアを確保することで、競争上、大きく有利に立てます。
小さい市場でダントツトップシェアを確保すれば、他社も容易には参入できなくなるからです。
ここで大切なのが、バリュープロポジション。
ターゲットとなる顧客と、その顧客の課題を見極めて、その課題にいかに自社ならではの価値を提供するのかを考えることです。
しかしそうやって作ったバリュープロポジションは、必ずしも正しいとは限りません。
ではどうするか?
パナソニックの取り組みを紹介している日本経済新聞の同記事に、別のヒントがありました。
---(以下、引用)---
「電気自動車(EV)の予約状況は」「電池開発のロードマップは」――。大阪府守口市と兵庫県洲本市にあるパナソニック電池部門と米シリコンバレーは毎週、テレビ電話で熱心な質疑応答を交わす。相手は米EVメーカー、テスラ・モーターズの技術者だ。
「顧客の顔が見えるのがプラズマテレビと違う」と伊藤好生専務は話す。テスラとは米国にEV向けの大規模電池工場を建設することで合意したが、一気に作らず段階的に投資する。工場も建物と土地をテスラが、電池の製造設備をパナソニックが分担し、投資リスクを軽減する。顧客との連携強化で、数千億円の投資を繰り返したプラズマテレビ事業のようなやり方を改めた。
---(以上、引用)---
つまり「製品を開発してから、販売に注力する」のではなく、「顧客の状況を頻繁に確認し、仮説検証を行いながら、徐々に製品を仕上げていく」というアプローチを行っているのです。
バリュープロポジションも、このように製品を開発していく過程で、頻繁に顧客に対して検証し、修正していく必要があるのです。
売上数兆円の超大企業であるパナソニックやシャープの事業変革は、日経ビジネス・東洋経済・週刊ダイヤモンドなどでも頻繁に特集が組まれています。
超大企業ですが、実際には細分化した市場に取り組んでいます。中小企業にとっても学べるところは大きいと思います。私自身も様々なことを学んでいます。
パナソニックやシャープの皆様のご努力が実ることを祈っております。