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Kindleを使ってみて、改めて著者視点で興味を持ち、さらに考えたこと

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昨日のiPadを使ってみた感想の続きです。

といっても、今回はiPadではなくKindleです。

私がはじめてKindleを使ったのは、もう4年前です。まだ日本語版はなく、英語版Kindleを米国Amazonで注文。数日後に届きました。

日本の自宅でスイッチを入れたら、何も設定していないのにそのまま電話回線に繋がり、本のダウンロードを始めた時は、グローバル展開を考慮したそのビジネスモデルの斬新さに驚いた記憶があります。

その後、日本語版が生まれ、PC、iPadなどのタブレット、スマホでも使えるようになったのはご存じの通りです。

 

Kindleでは、気になった部分には簡単に線も引けますしコメントも記入できます。iPad版ではこんな感じ。(表示している本は、古森重隆著「魂の経営」です)

Ipadmini3  

 

上記の本をiPhoneで開くと、こうなっています。

Ipadmini4  

つまり、線やコメントのデータはKindleクラウドに送られており、登録している他のKindleデバイスにも自動的に反映されます。これは読者としては便利ですね。

 

このような読者の関心データをあらゆる本について蓄積しているのは、考えてみると凄いことです。

著者の立場では、常に「読者の反応を知りたい」と思っています。私の場合は、TwitterやFacebook、ネット検索などで、常に本の感想をチェックしています。

しかしどうしても分からないのが、読者の皆様が、自分の本のどこにどんなチェックや注釈をしているのか、ということ。

これはこれまで、マーケティング戦略を立てる人たちが、どんなに欲しくても入手できなかったデータです。

Kindleクラウド上には、このようなデータが集積しているわけです。自分の著書についての読者の反応は、是非知りたいことですね。もちろんプライバシーの問題もあり、個人情報が特定できないようにする必要があります。

また、このようなデータはアマゾンにとっては自分しか持っていない大きな武器でもあります。

 

もしアマゾンが普通の会社であれば、このようなデータを活用してビジネスを始め、収益に繋げるでしょう。

そしてそれは、当たり前の手堅い方法に見えます。

しかしアマゾンの最優先事項は、新市場を開拓し、豊富な資金力により収益度外視で消費者の利便性を徹底的に高めて、圧倒的なシェアを獲得し、市場に浸透すること。

収益向上は経営が存続できる限りできるだけ遅らせる判断です。

日経ビジネスオンラインの記事「タフな交渉で相手をたたきつぶすのがアマゾンの文化」でも、アマゾンCEOであるペゾスの次の言葉が紹介されています。

---(以下、引用)---

通常、価格競争はある分野で優位に立った企業に対して後発企業が仕掛けるのが通例だ。しかしアマゾンは、「先制価格戦争」あるは「予防的価格戦争」を仕掛ける。新事業のスタートの際に意識的に赤字覚悟の料金を設定する(ちなみに、その時点で競争相手は存在しないから被害を受ける相手もいないので反トラスト法が定める不正競争行為に該当しようがない)。

---(以上、引用)---

 

おそらくアマゾンは小規模の収益化は捨ててひたすら規模の拡大に邁進し、将来、圧倒的なシェアを背景に、本よりもはるかに網羅性が高く、質の高い消費者データを把握していることでしょう。

このようなデータをどのように活用し、アマゾンはどのような新しいビジネスを生み出すのか?

注目したいところです。

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