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4月の消費税増税でも、価格勝負は避けて、価値勝負を継続するセブン&アイ

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消費税増税が4月に迫ってきました。

2014/2/4の日本経済新聞の記事「消費増税の駆け込み反動、車に懸念、家電は緩やか」によると、新車販売や住宅着工件数を見ると、消費税増税をにらんだ駆け込み需要が発生しています。一方の家電は、家電エコポイントや地デジ移行の買い替え需要が先行した影響で今回は買い換え需要はそれほど発生していないとのこと。

確かに住宅や車のような高額商品では、消費税増税(+3%)による価格差は少なくありません。たとえば100万円の軽自動車なら3万円。住宅など5000万円程度の物件では150万円。けっこうな金額ですよね。

「需要の先取り」は「将来の需要の先食い」でもありますので、悩ましいところですが、消費者が駆け込み購入をするのはやむを得ない面もあります。

一方で、「消費税増税直前駆け込みセール」のようなものを企業側が仕掛けるのはいかがでしょうか?

増税前に駆け込み購入を勧めるのは、消費増税前と後の価格差を訴求するという意味では、実質的に価格勝負です。しかし当ブログや拙著で繰り返し書いているように、安易な価格勝負は筋肉増強剤のようなもの。一時的に体力は上がりますが、企業の体力を蝕んでしまいます。そして「食事を減らす」ダイエットのリバウンドのように、繰り返すことで泥沼にはまっていきます。

 

では、どのように考えるべきなのでしょうか?

 

今年1月7日に日本経済新聞に掲載された「企業トップの年頭発言」でセブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長が語った言葉は、この状況に対して明確な示唆を与えてくれます。

---(以下、記事より引用)---

消費増税というマイナス影響には、新しい商品やサービスをどれだけ投入できるかが重要となる。反動減の一巡後、7~8月ごろにどれほど消費が盛り返すかを見る必要があるだろう。

---(以上、引用)---

確かに消費増税のマイナス影響は避けられませんが、需要は盛り返します。マイナス影響を最小限にし、盛り返した時点で成長できる準備をしておくことが大切です。

 

本日2014/2/8の日本経済新聞の記事「セブン&アイ、高品質PB商品拡大 増税後も路線明確化」では、セブンが着実に施策を展開してることを紹介しています。

---(以下、記事より引用)---

セブン&アイ・ホールディングスは2014年度、質の良さを打ち出した価格が高めのプライベートブランド(PB=自主企画)の商品を増やす。傘下のイトーヨーカ堂は食品の新シリーズを投入。グループで販売する高品質PB「セブンゴールド」では4月の消費増税直後に全体の約3割の商品を刷新する。増税で消費者の節約志向が強まる可能性があるが、品質の高さを訴える路線を明確にし、価格競争とは一線を画す。

....セブン&アイが増税後も質を訴えて価格が高めの商品に力を入れるのに対し、他の大手スーパーは値ごろ感を打ち出す見通し。イオンはPB「トップバリュ」の大半の商品の価格を増税後も据え置く方向で調整している。発注量の拡大や物流の効率化などでコストを下げ、割安感を出す方針。

---(以上、引用)---

もしセブンイレブンに行く機会があれば、10分くらいかけて店頭をじっくり眺めてみることをお勧めします。最近、「セブンゴールド」や「セブンプレミアム」といったPB商品が増えています。実際にそれらの商品を買ってみるとわかりますが、高品質です。

セブン&アイによれば、セブンプレミアムの2013年度売上見込は6500億円で対前年+30%。2015年度には1兆円にする計画です。

セブンが展開しているように、本来は値引きをしなくても売れるように、常に価値を上げ続けていくことが必要です。


確かに消費増税の反動で、マイナスの影響は避けられませんが、この時期こそ「価格勝負ではなく、価値勝負」をいかに継続するかが大切なのではないでしょうか?

反動減が一巡した後、今年後半に入って消費を盛り返す時点で、それは効いてくると思います。
 

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