コーヒーは、世の中を反映している、実に奥深い世界。マーケティング事例の宝庫
ブログにここ何回か続けて書いていますが、年末から年始にかけて色々とコーヒーについて勉強しています。改めて思うのは、コーヒーは実に深い世界だということ。
実際、「商品」という観点で考えてみると、コーヒーというのは不思議な商品です。
まず食べないと生きていけない食品とは異なり、なくても生存はできます。
一方で嗜好品であり、精神的に癒やされたり安らぎが得られます。習慣性がありますが、摂取し過ぎてもアルコールやタバコのような害はない、とされています。
また、コーヒーは、発展途上国で作られ、先進国で消費される南北問題を象徴する商品でもあります。
下記のように、2002年のコーヒー生産国と消費国のトップ10は以下のようになっています。消費国のうち、ブラジル・エチオピア以外は全て自国で生産できない先進工業国です。
消費国上位10カ国(千トン)
米国 1121
ブラジル 765
ドイツ 567
日本 404
フランス 319
イタリア 307
スペイン 188
イギリス 138
エチオピア 98
オランダ 95
生産国上位10カ国(千トン)
ブラジル 1941
ベトナム 676
コロンビア 560
メキシコ 387
インドネシア 361
コートジヴォワール 328
インド 324
グアテマラ 312
エチオピア 210
ウガンダ 186
社会が経済的に豊かになると、一人あたりのコーヒーの消費が増える傾向にあります。最近はアジアなどでの消費が増えており、コーヒー各社は現地に進出しています。
このような商品なので、昔から様々なマーケティングが行われてきました。
この50年間を見ても、
1960年代:インスタントコーヒーのマスマーケティング →参考リンク
1970年代:缶コーヒーのイノベーション →参考リンク
1980年代:ドトールのような格安本格派カフェ登場 →参考リンク
1990年代:スタバのようなスペシャリティコーヒー。「第3の場所」 →参考リンク1 →参考リンク2
さらに、オフィス需要を取り込むため、日本ネスレが始めたネスカフェアンバサダーのような取り組み(→参考リンク)も始まっています。(*1)
そしてここ10年間は業種を超えて、マクドナルドのようなファストフード(→参考リンク)や、セブンカフェのようなコンビニでも本格派コーヒーを出すようになりました。
一方でこの流れの対極として、かつての喫茶店には「サードウェイブ」として自家焙煎でこだわりのコーヒーをフルサービスで提供する動きもあります。
2013/11/16の日本経済新聞の記事「ドトール出店「接客型」に セルフから転換、客単価高く」によると、ドトールも、「今後は約1100店あるドトールコーヒーショップの総店舗数は増やさず、コーヒー店の拡大は『星乃珈琲店』を主体とする」と発表しています。
このように、コーヒー市場は常にホットであり、コーヒーの歴史はイノベーションと競争の歴史でもあります。リアルなマーケティング事例としてもとても面白いですし、特にここ数年は従来の業界を超えたビジネスが展開されてきています。
またコーヒーの利益率はとても高いのです。
週刊東洋経済 2013年9月28日号の特集「激変!コーヒー市場最前線」によると、100円で売っているコンビニコーヒーの原価構造は以下のようになっています。
コーヒー原料代 約10-20円
カップ、フタ、マドラー、氷など 約30-40円
粗利益 約50円
さらに習慣化により、店にとって顧客固定化もしやすいのです。
一方で、この高い利益率が「生活に苦しんでいるコーヒー生産者にもっと利益を分けるべき」というフェアトレードの議論を呼んでいます。
コーヒーは世の中の様々なことを反映している、奥深い世界だと実感します。
(*1) ... 2013/1/10追記