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スターバックスが、広告にお金をかけない理由

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1998年に出版された「スターバックス成功物語」で、こんな下りがあります。

---(以下、引用)----

(p.335-336より)
1987年から10年間の広告費は1000万ドルにも達していない。広告を信用していなかったからではなく、そちらに回す資金がなかったからだ。

(p.338より)
スターバックスの成功は、全国的なブランドを確立するために広告宣伝費に何百万ドルもかける必要はないことを証明している。大企業のような巨大資金源がなくても一度に一人の顧客、一度に一つの店舗、一度に一つの市場と向き合っていれば必ず成功する。それどころか、これは顧客の信頼を勝ち取る最善の方法かもしれないのだ。

---(以上、引用)----

まさに「スターバックスの店舗は、会社の広告塔」(p.344)なのですね。

Starbucks(この写真は、スターバックス本社サイト上にあるこちらから引用しました)

   

13年後の2011年。「スターバックス再生物語」では、さらに「ソーシャルの時代」にふさわしい取り組みとして、スターバックス史上二回目になるテレビ広告を行う様子が描かれています。(以下、p.267-278から抜粋)

2008年10月、その年の11月4日に行われる米国大統領選挙が迫ってきましたが、54%と低い投票率が予想されていました。

そこで、投票率アップのために、

11月4日に「投票に行ってきた」とスタバで言うと、「お疲れ様」と言ってトールサイズのコーヒーを差し上げます。

という60秒のTV広告を流しました。



このTV広告には背景があります。

同じ年の秋、格安の「マックカフェ」展開中のマクドナルドは、スターバックス本社近くで「4ドルも払うのは馬鹿らしい」という掲示板広告を出していました。

そこでCEOのハワード・シュルツは「喧嘩するのではなく、積極的にみずからを定義し、声をあげ、会社の個性を表現したい」と考えていたのですね。

 

このTV広告は、選挙番組の最中に1回だけ流されました。

しかしそれだけでは効果は限定的です。

そこでTV広告直後から、デジタルやソーシャルメディアで、メッセージを増幅しました。

・ホームページからYouTubeに誘導
・スターバックスカード所有者にメールで告知
・Twitterでも拡散
・作ったばかりのFacebookページで告知
・Facebook広告でも増幅 (オリジナルで7500万回表示、さらに口コミで1400万回増加)

選挙当日、無償提供されたコーヒーは200万杯(通常の平日の2.5倍)、さらにスターバックスの各店は、コミュニティという感覚に包まれました。

YouTubeではCMが419,000回再生。Facebookでは405,000人が「行く」「たぶん行く」と意思表明。Twitterでは、スターバックスのことが8秒に1回つぶやかれました。さらに従来の紙媒体、放送、オンラインニュースで7000万回のインプレッションが得られました。

このキャンペーンは、スターバックスが「莫大な費用をかけることなくブランドに合った方法で来店客を増やし、お客様と積極的に関わる方法を見つけた」(p.278)、大きなきっかけになりました。

スターバックスではこのマーケティング手法を「ブランドスパークス」と名付けました。

この「ブランドスパークス戦略」について、同社でブランド担当バイスプレジデントのChris Abruzzoが2010年6月に語っている13分のビデオがあります。ご興味のある方はご覧ください。→リンク

 

この2008年年末の大統領選から5年が経過した現在、どうなっているのでしょうか? 

2013年3月20日に行われたスターバックスの年次株主会議で、最高デジタル責任者(Chief Digital Officer)のAdam Brotmanはこのような数字を示しています。→資料のリンク

MyStarBucksIdea.com:5年間で10万件のアイデアが寄せられ、275件を実現
  (本日2014/1/3に確認したところ、アイデア件数は12万件を超えています)

・Facebookファン:世界中で5,400万人

・Twitterフォロワー:3,400万人..最もつぶやかれているブランドの1つに

・Web/モバイル:ビジター3,480万人

  

スケールは途方もなく大きくなりました。

さらに仕組みも高度に進化しています。

現在は、スターバックスカードやロイヤルティプログラムで購買状況を分析し、メールやモバイル、デジタル広告やソーシャルメディアと連動させるプロセスが確立しているのです。

Starbucksdigital   

この正月、「スターバックス成功物語」「スターバックス再生物語」を精読し、さらにスターバックス本社のIRライブラリーにある資料も読み込んで、スターバックスから学べることが実に沢山あることを実感しました。


  

 

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