「本当のお客様に会えているか?」...ヒントは意外と身近にある
「お客様の課題を理解することが大切」とよく言われます。
それでは「お客様とは誰か?」...答えは、実は簡単ではありません。
それでも消費者ビジネスでは、多くの場合、比較的簡単です。「ユーザー」=「お金を出す人」だからです。例えば、お店に入って香しいコーヒーの香りがして、「どうしても飲みたい」と思い、その場でお金を出してコーヒーを味わうようなケースです。
しかし、消費者ビジネスでも、「ユーザー」と「お金を出す人」が異なる場合もあります。こうなるとちょっと複雑です。
例えば予備校では、「ユーザー」は学生、「お金を出す人」は両親です。予備校の立場で考えると、「使う人」には「学ぶ楽しさ」を、「お金を出す人」には「学力向上」と、訴求する内容が少し変える必要があります。
法人ビジネスの場合はさらに複雑です。企業などの法人では、購買意志決定に色々な人が絡んで来るからです。
購買に関与する人たちのことを、マーケティングの世界では、「DMU (Decision Making Unit)」、日本語では「意志決定単位」と呼びます。DMUの役割については色々な定義の仕方があります。例えばこんな役割に分かれます。
■ゲートキーパー:購買活動の窓口になる人たちです。
■インフルエンサー:いわゆる「ご意見番」。企業が購買の判断をする際に、「この人の意見を聞いた上で考えよう」という形で影響を与える人のことです。
■キーマン:実質的な責任者です。その商品やサービスを購買後、最も便益を得る立場になります。
■ディシジョンメーカー:購買する際の最終意志決定者です。
このように整理して考えると、法人営業でゲートキーパーに一生懸命売り込んでいるケースは、結構多いのではないでしょうか?
ゲートキーパー=購買部門のケースはよくあります。購買部門のミッションは、「全社の購買・調達コストを下げること」。当然、厳しい値引き要請をいただくことになります。購買部門のミッションから考えると、これはとても合理的な行動ですね。
このようにゲートキーパーだけに会っている限り、一生懸命価値訴求しても、「価格勝負」からは抜け出すのは困難です。訴求された価値を判断するのは、ゲートキーパーのミッションではないからです。
「価格勝負」から抜け出し「価値勝負」に持っていくカギは、その先にいるインフルエンサー、キーマン、ディシジョンメーカーにアプローチし、正しく価値を訴求すること。価値を判断するのは彼らの仕事です。
しかし、普段からゲートキーパーにしか会えない状況に陥っていると、なかなかインフルエンサー、キーマン、ディシジョンメーカーには辿り着けません。その結果、価値を訴求しても納得いただけず、厳しい値引き要請を持ち帰り、社内で値引き交渉をすることになるのです。
ここから抜け出すのは難しく思えます。しかし視野を広げてみてはいかがでしょうか?
例えば日々の活動の中心がセールスだ、という人は、セールス後のフォローをしてみる。いつも同じ人にしか会っていない人は、別の人に会ってみる、という具合です。
たとえば、成約後、ユーザーにマメに会っていると、ユーザーの中にインフルエンサーやキーマンが隠れているケースがあります。そういう人がこんなことを言う場合があります。
「XXX社さん、これやってくれないかなぁ。どこも対応してくれないんだよね」
これは千載一遇のチャンスです。もしこれが自社の強みを発揮できる分野であれば、ライバルが誰も手がけていない「ブルーオーシャン」を開拓できる可能性もあるからです。(ただし、「商材を作るのは自分の仕事じゃない」と思わずに、社内のしかるべき人にちゃんと伝えることが大切です)
答えのヒントは、意外と見逃していた自分の身近にあったりするのです。