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それは本当に「価値」なのか?あなたが「価値」と思い込んでいるだけではないのか?...そのためのチェックリスト

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最近は講演をワークショップと組み合わせて行っています。

このワークショップでは、数名のチームで「私たちの価値は、何か?」 ということを議論し、発表いただきます。

つまり、「お客様が私たちの商品を買う理由(=バリュープロポジション)を一言で言うと、……」を考えていただくのですね。

ただ、漠然と考えても答えは出ません。そこで次の項目を順番に考えていただきます。

・ターゲットのお客様は、誰か?
・そのお客様のニーズは、何か?
・そのニーズを解決するために争っている競合は、どこか?
・お客様のニーズを解決する上で、競合にない我々の価値は、何か?

これらがお互いに連携し合って、かつ全て含んだものが、「お客様が私たちの商品を買う理由を一言で言うと、……」(=バリュープロポジション)になるわけです。

いわゆる「バリュープロポジション・ワークショップ」ですね。

 

お客様にしっかりした価値を提供するビジネスを行うためには、本来、これが即答できることが必要です。ただ、やってみるとこれがなかなか難しいのですよね。

そこで、陥り勝ちなポイントを書き出してみました。

 

1.その「価値」で、本当に「お客様のニーズ」を解決できるのか?

■「価値」と言っているのが、単なる「能力」になっているケースがあります。

例えば「部品から製品まで一貫製造していること」が価値だ、というケースがよくあります。

しかしあなたは「このPCは、部品から最終製品まで自社で一貫して生産しています」と言われて、買う気になるでしょうか?多分買わないのではないでしょうか?

「部品から製品まで一貫製造している」は「価値」ではなく、「能力」なのです。

本来は「一貫生産する能力がある」→「だから、(信頼性重視のお客様に対して)絶対故障しない価値を提供できる」といった価値まで掘り下げる必要があるのです。

 

■「価値」が、実は価値ではなく、一般的になっているケースがあります。

例えば「業界最高性能」を価値としているケースがよくあります。しかしほとんどの場合、無意味です。公道の制限速度100Km/hなのに、スピードが500Km/hも出る車は不要です。

但し、業界最高性能が意味を持っている場合は別です。例えば制限速度100Km/hなのに世の中の車の最高速度が60Km/hだったら、80Km/h出せる車は意味があります。

しかし現代では、多くの商品が「過剰性能」を提供しているので、そのような状況はかなり少なくなっています。

 

2.その「価値」は、本当にどの「競合」も提供できないものか?

■「競合」も提供できる「価値」を定義しているケースを多く拝見します。しかしそれでは意味はありません。

■「価値」が主観的になっている場合も意味がありません。例えば「最高品質」は誰でも言えますが、この言葉は、お客様にとってはほとんど意味がありません。

 

3.「お客様のニーズ」の解決を競っているのは、本当にその「競合」か?

■他の方法でよりよい解決策を持つ競合(別業界含む)はいないでしょうか?

例えば、企業研修を提供しようとしている研修サービス会社の競合は、他の研修サービス会社だけでなく、ビジネスコンサルテーションを提供している会社も含まれます。

実際に私が人材育成責任者だった時は、研修サービス会社ではなく、ビジネスコンサルの第一人者に講師をお願いしました。

顧客の視点で、他に選択肢がないかを考える必要があるのです。

 

4.「ターゲットのお客様」は、十分に絞り込めているか?

■往々にして、一般的すぎる場合が多いのです。

例えば、「ホームユーザー」「一般消費者」は、一般的過ぎます。

本来、ターゲットとするお客様は、実際にその特定のお客様にコンタクトできることが必要です。

 

5.「ターゲットのお客様」は、本当にその「ニーズ」を持っているか?

■「ニーズ」が思い込みになっているケースが、意外と多いのです。

例えば最近、「エコ」という言葉が流行っています。だから「地球に優しい」ことを売りにしている商品が多いのです。確かに中にはそうやって売れている商品もあります。しかし「地球に優しい」だけでは売れない商品も多いのです。

ニーズをキッチリと検証することが必要です。

 

上記5項目をチェックした上で、「一言で言うと」がこれら全てを包含し、かつ、お客様がすぐ理解できるものになっていることが必要です。

さらに最終チェックとして、その「一言で言うと」を伝えると、「そのお客様は、本当に喜んで買うか?」を考えてみる。

 

実際のワークショップでは、この作業の後に1−2チームに発表していただき、私より価値を的確に定義する上での課題を指摘させていただきます。

その上で、実際にバリュープロポジションを定義して、大きな成果を上げた事例をご紹介します。

 

通常、講演+ワークショップで90分〜120分をいただくこと多いので、その場合は「バリュープロポジション・ワークショップ」は作業15-20分 + 発表1-2チーム(1チーム5分)といった形で進めます。

限られた時間内で、バリュープロポジション設計の疑似体験をしていただく形になります。

 

この「バリュープロポジション・ワークショップ」の部分だけを抽出して、企業単位で半日から1日かけて徹底的に議論することもあります。これはこれで、戦略構築のいい出発点になります。

 

 

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